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風、薫る37話感想・患者2人に突きつけられた看護の真実を元教師が考察

「患者の気持ちが分かる看護」を目指していたりんと直美が、患者自身から「分からなくていい」と突き放された。

2026年5月19日(火)放送の第37話は、その一言がりんにとって何を意味したか──「間違えた」という気づきの深さを丁寧に追う話でした。

こんにちは、なおじです。

35年間、教育現場にいた元教師として、この回の「分かろうとすること」と「思い上がり」の関係が、教室の話とも重なって、ちょっと胸に刺さりました。

この記事でわかること

  • 第37話で千佳子がりんに言った「思い上がらないで」の真意
  • 丸山が直美に突きつけた「痛いひと言」の内容
  • りんと直美が夜に語り合って気づいた「看護の核心」
  • 7人の仲間たちの関係が急速に近づいた場面の意味
  • なおじ(元教師)から見た「分かろうとする」ことへの考察
目次

「思い上がらないで」が意味すること

りんへの拒絶は36話からの続き

前回(36話)で、りんは千佳子(仲間由紀恵)に「無礼者!恥を知りなさい!」と追い出されました。

関連記事:風薫る36話・千佳子「無礼だ」りんの看護は最初から壁

37話でも、りんは改めて千佳子に向き合おうとします。

ところが千佳子の言葉はさらに鋭かった。

「私は病人で、あなたは私を看護する看護婦とやらなんでしょう。思い上がらないで。

取り付く島もない、とはまさにこのこと。

「思い上がり」の正体はどこにあったか

りんは一生懸命、患者の気持ちを分かろうとしていました。

でも千佳子に言わせれば、それ自体が傲慢だったのです。

乳がんを患い、侯爵夫人というプライドを保ちながら、孤独の中で向き合っている病──その重さを、なおじのような素人でも少しは想像できます。

そこへ若い見習い看護婦が「あなたのことを分かりたいんです」と近づいてきたとしたら?

そりゃ怒るのも無理はありません。

「分かろうとする気持ち」は、相手にとって「あなたの痛みを私が理解できる」という押しつけになりうる。

教師をやっていて同じことを感じたことがあります。生徒に「先生は分かってるよ」と言った途端、「分かるわけないでしょ」と突き放される。「分かる」という言葉は、思った以上に危ない言葉です。

丸山が直美に突きつけた一言

「俺のどこがどれだけかゆいか分からないでしょ」

直美(上坂樹里)の担当患者は丸山忠蔵(若林時英)です。

丸山はずけずけと直美に言います。「俺のどこがどれだけかゆいかわかんないでしょ」と。

そして続ける。「かんじゃの気持ちなんて分からなくて当然なんだから、大家さんは俺が早く治るよう、薬塗ったりさ、働いてよ」。

これは、なかなか深い言葉です。

直美の「ずるさ」が光った場面

ここで直美がとった行動が面白い。

すねてみせたのです。「丸山さんにだって私の気持ち、分かるわけないですよね」と。

これはずるい。でも、天才的にずるい(笑)。

自分が可愛いということを武器にしているのが直美という人物の本質で、フユに「あんた、ずいぶんずるい女ね」と言われても、直美は「ずる賢い女と言ってくれ」と涼しい顔です。

丸山はころっと直美の手のひらにのっかり、回診に来た藤田医師にべんちゃらを並べて懐柔するのも直美の指示。藤田もころっとやられる。

「看護」って、技術だけじゃない。人を動かす力も含まれているのかもしれない。

関連記事:風薫る34話感想・直美のしたたかさに全員が動いた

【元社会科教師なおじの史実メモ】直美のセリフのリアリティ

実は、上坂樹里さん演じる大家直美のモチーフ(モデル)となった実在の看護師・鈴木雅(すずき まさ)さんは、当時日本初の看護学校(桜井女学校附属看護婦養成所)で「最も英語ができた優秀な女性」だったという記録が残っています。

原案本の田中ひかる著『明治のナイチンゲール 大関和物語』によると、彼女は西洋の最先端の看護学をいち早く吸収し、のちに日本初の派出看護婦会を設立するほどの行動派でした。

ドラマでの直美は「ずる賢いキャラクター」として描かれていますが、「ナイチンゲールの本を読み解き、その本質を突く」という知性やプロ意識の高さは、史実の鈴木雅さんの優秀さがベースにあるからこそ。脚本の吉澤智子さんの見事なキャラクター落とし込みに、社会科教師としても思わずニヤリとしてしまいました。

夜の語らいで気づいた核心

「間違えた」というりんの口癖が、また出た

1日が終わり、直美とりんは夜に2人で語り合います。

りんが「思い上がってた」と言います。

直美も丸山に言われたことを話します。「患者さんのことを分かれって言うけど、ナイチンゲール先生、方法は書いてないよね」と直美。

するとりんが、シマケンに以前励まされた話をします。「どんな人?」と直美に聞かれ、りんは「友人」と答えました。

そこで直美がひとこと。「友人でも家族でもない。仕事だったら、同じ気持ちじゃだめなんじゃない?」

「分かれ」ではなく「分からないことを知れ」

看護婦として患者の気持ちをわかるように努める──どうやったって患者と同じ気持ちにはなれないのだから、だからこそプロとして患者の傍にいる意味がある。

直美のこの言葉、すごくないですか。

「分かろうとする」ことを諦めたのではありません。「分かったふり」をしないことが看護の出発点だ、という気づきです。

35年間教師をやってきて、これは本当にそうだと思います。「先生は分かってる」という教師より、「先生には分からないけど、一緒に考えよう」という教師のほうが、子どもには届く。直美はそれを20代前半で自力でたどり着いたのか、と。

分からないと 言える勇気が 看護かな

関連記事:風、薫る25話感想|りんと直美の心が溶け合った

7人の仲間、急速に縮まる距離

呼び捨ての仲になっていた

37話でもう一つ、心あたたかくなる場面がありました。

7人の中が急速に近づいている描写です。

「りん見なかった」と呼び捨てで話す仲になっていた。「あの二人、お互いのことを分かろうとしている」と多江が言います。

喜代さんが多江のことを「多江」と呼び捨て、多江がしのぶを「しのぶ」と呼び捨て。トメとゆきも互いを下の名前で呼んでいます。

1話からの距離感を思うと、それだけで少し泣ける(笑)。

夕飯の場面が今話のいちばんのご馳走

遅くまで語り合っていた直美とりんのところへ、しのぶたちがやってきます。

「なかなか帰ってこないから、お夕飯をみんなでここでいただきましょうって」と。

2人がいないと寂しいものと、仲間が言う。

勝手に押しかけてきて、勝手に一緒にいてくれる仲間。

りんが「心強い」と言う表情が目に浮かびます。

ここに来てりんは「奥様は今一人よね、淋しくないのかしら」と千佳子のことをふと思います。孤独な千佳子と、温かく囲まれた自分との対比──りんの中で何かが動いた瞬間だったかもしれません。

一方で、松井エイ先生が一人で夕飯を食べています。

誰か誘ってやれよ、と画面に向かって思ったのはなおじだけじゃないはずです(笑)。

なおじの考察:「分からない」と認めるのが出発点

35年教師をやって分かったこと

「分からない」と言える大人は、案外少ないです。

特に医療・看護・教育という「人を助けるプロ」は、「分かってあげないといけない」というプレッシャーを自分にかけすぎてしまう。

でも千佳子が怒ったのは、りんの「誠意」ではなく、りんの「過信」に対してだったのではないかと思います。

分かろうとする姿勢は尊い。でも「私はあなたのことを分かれる」という前提を相手に見透かされると、それは傲慢になる。

直美が言った「どうやったって患者と同じ気持ちにはなれない」という言葉は、看護師に限らず、教師にも、親にも、友人にも通じる普遍の真実だと思います。

りんの「間違えた」は成長の証

りんはことあるごとに「間違えた」と言います。

関連記事:風、薫る第3話|りんが「また間違えた」と泣いた理由

でも、その「間違えた」の質が、回を追うごとに深くなっています。

1話の頃の「間違えた」は、行動の失敗でした。37話の「思い上がってた」は、認識の失敗です。

認識の誤りに自分で気づける人間は強い。りんは確実に成長しています。

よくある疑問にお答えします(Q&A)

Q1:千佳子(仲間由紀恵)は今後りんに心を開くのでしょうか?

A:37話の時点では完全な拒絶が続いています。ただ、直美との夜の語らいでりんが「分からないことを知れ」という気づきを得た以上、次回以降の千佳子との関係に変化が生まれる予感があります。仲間由紀恵さんが演じる千佳子が、どんな形でりんに向き合うのか──8週目以降の最大の見どころのひとつです。

関連記事:仲間由紀恵の朝ドラ歴代出演4作品一覧|役柄と28年の変化

Q2:直美が丸山に「すねてみせた」のは演技だったのでしょうか?

A:なおじの見立てでは、半分本音・半分計算だと思います。直美というキャラクターの強さは、自分の感情と戦略を分離できるところにあります。フユに「ずるい女」と言われて「ずる賢いと言ってくれ」と返した場面に、直美の自己認識の鋭さが出ていました。史実モデルの鈴木雅さんが「最も英語ができた優秀な女性」だったという記録と重ね合わせると、この知性的なしたたかさは偶然ではないと感じます。

Q3:シマケンについてりんが「友人」と言ったのはなぜですか?

A:りんとシマケン(島崎謙一郎)の関係は、この段階では複雑です。りんにとってシマケンは「友人以上の存在」になりかけている可能性もありますが、直美に「友人」と説明したのは、その感情を言語化できていないからではないかと思います。今後の関係発展が気になる部分ですね。

関連記事:風、薫る29話・シマケンの夢とりんの覚悟

Q4:松井エイ先生が一人で夕飯を食べているのは伏線でしょうか?

A:37話では「7人が仲良く夕飯を食べる場面」と「松井エイ先生が一人で食べる場面」が対比的に描かれていました。松井エイ先生のキャラクターが今後どう動くか、気になる演出でした。孤独な先生という立ち位置が、何らかの形でストーリーに絡んでくる可能性があります。

Q5:第8週「夕映え」というタイトルはどんな意味でしょうか?

A:「夕映え」は夕暮れ時の情景を指します。今回の「夜、仲間が集まって夕飯を食べる」場面、千佳子の孤独な姿、りんが「奥様は今一人よね」と思う場面──日暮れ時のせつなさと温かさが交差するイメージが「夕映え」という言葉にぴったり重なります。脚本のタイトルセンスが光る1週でした。

筆者紹介|なおじ

なおじは元社会科教師として教育現場に35年間携わり、指導主事を5年、校長を11年務めました。退職後もボランティアで子どもたちに学習を教えています。

社会科・歴史を長年教えてきたので、時代背景や史実との比較が得意分野です。「患者の気持ちを分かれ」というナイチンゲールの問いを授業でどう教えるか、もし教えるとしたら──と考えながら第37話を見ていました。

現在は8つのブログでドラマ芸能政治歴史スポーツ学び書評を書いています。

風、薫る37話

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