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「風、薫る」第8週「夕映え」全5話│千佳子の涙と手術拒否の真相を元教師が読む

和泉侯爵夫人・千佳子は「武家の女として潔く死ぬ」と言い張り、乳がんの手術を拒み続けた。
りんが5日間をかけて掘り当てた本音は、誰も予想しなかった理由だった。
第8週「夕映え」(36〜40話)全5話のあらすじと見どころを、元社会科教師のなおじが読み解いていきます。

和泉侯爵と千佳子

こんにちは、なおじです。
35年間、学校現場にいましたが、千佳子のセリフ「気持ちがわかるなんて、たやすく言わないで」というひと言は、教師をやっていた自分にも刺さりました。

子どもたちに「わかるよ」と言いながら、どれだけ本当にわかっていたのか──千佳子に問われているような気がして、少し立ち止まりました。

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この記事でわかること

  • 第8週「夕映え」全5話(36〜40話)のあらすじ
  • 千佳子が手術を拒んだ本当の理由
  • りんが千佳子の心を開いた方法と「武家の誇り」という共通点
  • 直美と寛太の思わぬ再会の意味
  • シマケンと安の縁談のゆくえ
  • 千佳子のモデル・三宮八重野とは何者か
目次

第8週のタイトル「夕映え」が意味するもの

夕映え

「夕映え」は千佳子と元彦の原点

第8週のタイトルは「夕映え」。
これは千佳子が、夫・元彦への思いを語る場面で出てくる言葉です。

まだご一新前の祝言の日、夕映えの空を見て元彦が言った「空が綺麗ですね」というひと言。
千佳子は「こんな年になっても」その瞬間を覚えていると言います。

タイトルは最初から、この夫婦の物語を暗示していた。
そう気づくと、第36話からの5日間がまったく違って見えてくるんですよね。

「庭の千草」が語る孤独

第38話では、りんと千佳子が**「庭の千草」**を一緒に歌う場面があります。
原曲はアイルランド民謡「夏の名残のバラ」。
明治17年(1884年)に日本語訳詞がつき、唱歌として広まりました。

「庭の草花が枯れ果て、虫の音も消えた庭でひとり遅れて咲く白菊」──愛する人たちに先立たれ、ひとり取り残された孤独を詠んだ歌です。

家族にも理解されず、病室でひとり孤独だった千佳子の心情そのままです。

第36〜37話│「無礼だ」の壁とりんの試行錯誤

りんが担当についた経緯

医師たちが「実習生に責任を押し付けるやり方だ」と反発するバーンズを説得したのは、直美でした。
「りんなら心に触れる看護ができる」という直美の後押しで、りんが千佳子の担当に。
ただし直美がサポートするという形での、いわばダブル担当です。

りんが脈を測ろうとするたびに「無礼者!恥を知りなさい!」と追い出される。
この5日間は、看護の「壁」と正面からぶつかる週でした。

👉関連記事:風薫る36話・千佳子「無礼だ」りんの看護は最初から壁

直美も丸山に「痛いひと言」を言われた

りんが壁にぶつかっているのと同じ頃、直美もこんな言葉を患者の丸山から浴びせられていました。

「わからないですよね、俺のどこがどれぐらいかゆいかなんて。看護婦さんは、俺が早く治るよう薬塗ったり、働いてよ」

それに対して直美が返した言葉が、この週の核心のひとつです。

「そうですよね、私に丸山さんの気持ちがわかるわけないし、丸山さんに私の気持ちだってわかるわけないですよね」

なおじが注目したのは、直美がここで開き直っていたようで、実は開き直っていなかったこと。
「わかろうとし続けること」を諦めていない。
そこが直美という人物のすごさなんですよね。

第37〜38話│「友人でも家族でもない」直美の洞察

看護婦として寄り添うとはどういうことか

りんと直美、二人で「わかる」ということの意味を話し合うシーンがあります。

直美はこう言います。

「友人でも家族でもない。看護婦として患者の気持ちがわかる。わかるように努める。どうやったって患者と同じ気持ちにはなれないもの」

これ、すごくプロフェッショナルな言葉だと思いました。
「同じ気持ちになれないからこそ、看護婦として関われる」という逆説。

教師も似たようなことがあって。
生徒と「同じ目線になれ」と言われるけれど、同じ目線になった先生より、「先生として」接してくれた先生を生徒は信頼するんですよね。

距離が遠すぎてもダメだし、近すぎてもダメ。
専門職としての立ち位置って、言葉でいうほど簡単じゃない。

千佳子が家族にも理解されない孤独

第38話では、千佳子の夫・元彦と息子から手術を強く説得される場面があります。
しかし息子から「わがまま」「駄々をこねている」と責められた千佳子の表情のこわばりを、りんは見逃しませんでした。

りんはわざと物を落として医師の説明を中断させる。
その「気を利かせる」という小さな行動が、千佳子の信頼を少しだけ動かします。

📖 「武家の誇り 医師の前でも 崩さない」

👉関連記事:風、薫る37話・患者2人に突きつけられた1つの真実

第38〜39話│「胸がなくなるのが悲しい」千佳子の本音

風、薫る38話

武家の誇りという共通点がカギだった

千佳子の心を開くヒントを得たのは、りんの母・美津でした。
「武家の誇り」を重んじる美津の姿を見て、りんは気づきます。

千佳子が夫や息子に診察の様子を見られたくないのではないか──。

そこでりんは、家族を遠ざけた診察室での受診を提案します。
それまで頑なだった千佳子が、自ら診察に応じました。

武家の女として、家族の前で体を見られることへの羞恥心と誇り。
それを理解したりんだけが、千佳子の扉をこじ開けることができたんですよね。

りん自身も「元は武家の娘」だと打ち明けたことも大きかった。
他人だからこそ話せる。家族じゃないからこそ聞ける。
そういう「看護婦ならではの距離感」が活きた場面です。

双六でほぐれた心

双六をともに楽しんでいる間に、千佳子はゆっくりと語り始めます。

「空が綺麗だという人が夫でよかった。こんな年になっても、私、悲しいの。胸がなくなるのが。胸のない私で夫の隣にいるのが悲しくて、恥ずかしくて──そんなことを思っていると、口にするのも恥ずかしくて。だったらいっそ、今のままの私で」

この告白に対してりんは言います。

「死にたくない、生きたいと思うことは恥ずかしいことではありません」

なおじは、この一行が第8週のクライマックスだと思っています。
千佳子は「手術が怖い」んじゃなかった。「手術後の自分を夫に見せたくなかった」んです。
手術を拒む理由が「武士の覚悟」ではなく、「妻としての羞恥心と愛情」だった。
これは誰も予想しなかったのではないでしょうか。

👉関連記事:風、薫る39話感想・夕映えは夫への恋心だった

第40話│元彦の懇願と千佳子の決意

風、薫る40話

りんが動かした夫婦の絆

千佳子の本音を知ったりんは、バーンズの許可を得て、千佳子の夫・元彦を呼び出すという行動に出ます。
かなり大胆な判断です。でもそこにりんらしさがあります。

「私の力不足を詫びたうえで、千佳子には家族の力が必要だ」と、元彦に深く頭を下げる。

そして元彦が病室で千佳子に語りかけます。

「千佳子はよくとも、私はよくない。まったくよくない。私のために手術を受けてくれないか。共に見たいのだ、毎日、毎月、毎年、美しい夕映えの空を」

「仕方ありませんね」

──と千佳子が答えた瞬間の「仕方ありませんね」は、笑いながら降参した妻の愛情表現ですよね。
えっ、照れ隠しにも聞こえるし、長年連れ添った夫婦にしか出ないセリフだと思いました(笑)。

なおじ流にいうと──「仕方ありませんね、って最高の愛の言葉じゃないですか。嫌々でもなく、素直でもなく、ちょうど真ん中のそこにしか出ない言葉です」

手術に立ち会うりん

千佳子は手術を決意するだけでなく、りんを手術に立ち会わせてほしいと取り計らいます。
バーンズが実習生たちに言います。

「患者は人です。人は強くて弱くて、それゆえ嘘をつくこともあります。しかし体は嘘をつきません。人を知ってください。体温のある肉体を知ってください」

第8週の最後は、この言葉がずっしりと残る終わり方でした。

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シマケンと安・直美と寛太│サブストーリーの行方

シマケンが縁談の仲介役に

シマケンが一ノ瀬家を訪ね、安と槇村宗一の縁談を取り持ちました。
安からは「シマケンさんはご自分に嘘つきですね」とにっこり言われる。
これは「本当はりんのことが好きなのに」という意味合い、ですよね(笑)。

欲を言えば次男がよかったが、と安が言う場面も面白い。
「姉はきっと、男の人がどんなお仕事でも長男でも末っ子でも気にしない」という言い方で、りんの人柄をさりげなく表現しているのがうまいなと思いました。

直美と寛太の予期せぬ再会

直美がりんに頼まれた買い物帰りに、「夕凪」という女郎に似た女性について話す男性を追いかけた先で、寛太と再会します。

「捨てた親でも、生きていると知るだけで支えになるかもしれない」という寛太の言葉。
これは寛太自身の複雑な家族事情を反映しているのか、それとも直美の出生の秘密への伏線なのか。

次週以降のキーになってくるのかもしれません。

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千佳子のモデル・三宮八重野とは何者か

風、薫る第7週まとめ

イギリス人女性が明治日本に嫁いだ

第8週を深く楽しむためには、千佳子のモデルについて知っておくといいかもしれません。

千佳子のモデルとされているのは三宮八重野(みやさんやえの)
本名アレシーア・レイノア(Alethea Raynor)、1846年イギリス生まれの女性です。

1874年、ロンドンで外交官の三宮義胤と結婚し、1880年に来日。
日本では皇族の妃や華族の女性たちに、西洋の服装・社交の慣習を伝える役割を果たしました。

大関和が泊まり込みで看護した

りんのモデルである大関和は、実習中に三宮八重野が乳がんで入院した際、泊まり込みで献身的な看護を行ったとされています。

病室には銀食器が持ち込まれ、皇后の名代がお見舞いに訪れるほどの人物だったそうです。

そして入院中、心中未遂の花魁が運び込まれると、八重野が果物籠と聖書を大関和に託し、花魁のもとへ届けさせたというエピソードも残っています。

この花魁は、ドラマの中では‥、もしかすると直美の母‥?!

ドラマと史実が重なる部分を見つけると、見方がぐっと深くなりますよね。

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よくある質問(Q&A)

千佳子と夫・元彦が、祝言の日に二人で見た夕映えの空から来ています。

元彦が「空が綺麗ですね」と言ったそのひと言を、千佳子は「こんな年になっても」覚えていると語ります。

夕映えは二人の愛の原点であり、第40話で元彦が「共に毎年美しい夕映えの空を見たい」と言う場面で美しく回収されます。

最終的にはりんが「双六を囲む」という方法で千佳子自身に語らせました。

ただし武家の誇りというキーワードを提供したのは、りんの母・美津の姿から得た気づきです。

「家族の前で体を見せることへの羞恥心」を理解できたのは、りん自身も武家出身だったから。

一見、開き直りに聞こえますが、実はその逆です。

「わからないからこそ、わかろうとし続ける」という看護婦としての覚悟を示した言葉です。

この直美の言葉は、後で丸山が自ら直美への感謝を藤田医師に伝える行動につながりました。

りんに気持ちがあるのに、それを表に出さずに縁談の仲介役に徹しているシマケンへの、安の「的確なツッコミ」です(笑)。

シマケンがどう動くか、今後の展開への伏線になっています。

元彦が「私のために手術を受けてくれないか」と懇願したことへの返事です。

強がりや武家の誇りを脱いで、夫の愛情に素直になった千佳子の「降参」の言葉です。

「嫌々でも、あっさりでもない」絶妙な照れ隠しで、長年連れ添った夫婦にしか出ない表現だと感じました。

夕映え

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