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『風、薫る』第117話感想|通路に現れた亀吉と環の沈黙

佳枝の家から帰る途中、直美が環に「どうだった?」と尋ねます。環は答えない。すると直美は、急かす代わりに「ちゃんと見てきたんだね」と言いました。

あの沈黙は、環がりんの看護を見ていなかった、ということではない。
佳枝の小さな異変を察し、本人のやる気まで守ろうとするりんの看護のすごさを、環は目の前で見てしまったのです。

母の仕事が、あまりに大きく見えた朝。

『風、薫る』第117話は、亀吉の再登場でりんの過去が動き出す一方、環が母の現在の仕事を見て、自分の将来を簡単には口にできなくなった回でした。

通路には
 環の行く手の
   父ひとり

環の視界に亀吉が遂に現れました。
「父ひとり」に、環にとっての近さと、りんにとっての重い過去‥が、静かににじむさまを詠んでみました。

『風、薫る』第117話感想|通路に現れた亀吉と環の沈黙
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目次

この記事のポイント

Q1. 亀吉は何のために恵風看護婦会へ来た?

亀吉が恵風看護婦会を訪れた目的は、第117話ではまだ明かされていません。しのぶにりんとの関係を尋ねられても亀吉は言葉を濁し、裕福そうな身なりからも金の無心とは見えないため、来訪の理由は分からないままです。

Q2. 環はなぜ母・りんの看護に言葉を失った?

環は、りんが佳枝の小さな異変を察しながら、佳枝自身がやろうとする気持ちを奪わずに支える姿を見ました。環の前には、りんが長い年月をかけて身につけた看護の仕事があり、すぐには言葉にできなかったと考えられます。

Q3. 直美の「ちゃんと見てきたんだね」は何を受け止めた?

直美は、環が何も答えられないのではなく、りんの仕事を深く見たからこそ言葉を失っていると受け取った可能性があります。環を急かさず、沈黙にも居場所をつくる直美らしい一言でした。

りん、直美、亀吉、環の関係を一度に見直すと、第117話で交差した過去と現在が見えやすくなります。

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りんの実家・東京・病院をめぐる人物の位置関係を整理できます。

亀吉の再登場は、りんの過去を現在へ連れてきた

亀吉の再登場は、りんの過去を現在へ連れてきた

恵風看護婦会に亀吉が現れ、事情を知らないしのぶが遠慮なく質問を重ねました。しのぶに悪気はないのでしょう。でも、りんにとって亀吉は、ただの昔の知り合いではない。

会の仲間たちが知らない時間が、ふいに戸口から入ってきたのです。

しのぶの質問があぶり出した「知らない過去」

「りんさんに用って、どういうお関係?」と問われ、亀吉は言葉を濁します。しのぶは、その歯切れの悪さを不思議に思ったのでしょう。

けれど、りんの過去を知らないからこそ、しのぶの問いはまっすぐでした。隠してきたことを暴くための質問ではない。だからこそ、亀吉にとっては逃げ場のない質問にもなりました。

亀吉の登場でざわついたのは、彼が何者かというより、りんの人生に「まだ語られていない場所」があると皆が感じたからでは‥。

服装だけで亀吉の目的は決められない

亀吉の姿に、なおじも一瞬身構えました。
過去の亀吉を知る視聴者なら、「まさか、またりんを困らせに来たのか」と思ってしまったのも、無理はありませんよね。

ただ117話では、亀吉は恵風看護婦会に姿を現し、環とも顔を合わせたまでです。何のために上京したのかは、まだ亀吉自身の口から明かされていない。だからこそ、しのぶの質問に対する亀吉の受け答えと、環が父を見た瞬間の表情が妙に気になりました。

確かに、裕福そうな服装でした。
服装から見ると、金の無心ではないようです。
でも、それだけで来訪の理由まで決めてしまうことはできません。

明日、亀吉が何を言うのか。環が、そしてりんがどんな顔でそれを聞くのか。答えは、総て明日以降に持ち越されました。

環にとって亀吉は、母の過去でもある

亀吉と環が向き合った時、環の前にいたのは「怪しい来訪者」ではなく、りんが長く口にせずにきた過去そのものになるでしょう。母の看護を見た同じ日に、その母の昔を知る男が現れる。こんな偶然、朝ドラはさらりと置きますが、なおじには妙に重く残ります。

環はこれまで、りんを「働く母」として見てきたのでしょう。けれどこの日、亀吉の姿によって、母にも自分の知らない痛みや迷いがあったことが、急に現実味を帯びたはずです。

環が進路を考え始めたきっかけは、第117話だけで突然生まれたものではありません。シマケンとの再会、絵への迷い、そして亀吉の気配は、前話から静かに積み重なっていました。

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第116話で環の胸に生まれた迷いと、亀吉が姿を見せた瞬間までを振り返れます。

りんの人生をもう少したどると、亀吉の来訪が「昔の男の登場」だけで終わらない理由が見えてきます。

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りんが看護婦として立つまでに抱えてきた背景を、人物像から読めます。

佳枝宅で環が見たのは、七年分の看護だった。佳枝の家で、りんはほんのわずかな気配から異変を察しました。それでいて、佳枝が自分でやろうとする気持ちは邪魔しない。

環は、母が働く姿を初めて「近く」で見たのでしょう。そこにあったのは、てきぱきした看護婦の姿だけではありませんでした。

小さな気配をつかむ、りんの創意工夫

佳枝が動こうとする気持ちを、りんは止めません。
それでいて、ほんのわずかな気配から佳枝の異変を察する。
手を出しすぎれば相手の力を奪うし、待ちすぎれば苦しさを見逃す。その間を、りんは迷いなく歩いていたんです。

長く学校にいたなおじには、この場面がよく分かります。子どもが困っている時、すぐ答えを渡せば一時は楽になります。でも、その子が自分で立とうとしている瞬間まで奪ってしまうことがある。

「教えることに懐疑的でありなさい」
「一匹の魚より、魚の釣り方を教える」
現役時代の格言が、頭をよぎりました。

りんは佳枝の「できる」を見ています。ただ病を見ているのではない。その人の暮らしと意地まで見ている。ここに、りんの看護婦としての年月を感じます。

佳枝のやる気を奪わない看護という難しさ

佳枝が自分でやろうとする。その気持ちを残したまま、必要な時だけ支える。言葉にすれば簡単ですが、実際には相手をよく知らなければできません。

環は、りんと佳枝が七年かけて関係を築いてきたことを知ります。七年。看護の技術を覚える時間でもありますが、相手の顔色、声の調子、いつもの沈黙まで知っていく時間だったのでしょう。

だから、りんは気づけたのだと思います。佳枝が言わない不調にも、佳枝が譲りたくない気持ちにも。

手を添えて
 環の言葉が
  あとになる

りんが佳枝へ手を添え、環がすぐには言葉にできない場面を読みました。
この句を書きながら、なおじは環の横顔を思いました。あれだけの仕事を見せられたら、母を誇らしく思うだけでは済みません。

偉大な母を前に、環が抱えたかもしれない戸惑い

環は佳枝に「私の自慢のお母さんたちです」と言いました。まっすぐで、胸に残る言葉です。

けれど、りんと直美を「自慢のお母さんたち」と呼んだ環の胸には、誇らしさだけではないものもあったように見えました。佳枝の小さな変化を見抜く力。患者のやる気を守る手つき。母の仕事が圧倒的に見えた時、「自分にできるだろうか」と足がすくむこともあります。

親の偉大さを感じたとき、子の苦しみはスタートする。

環が看護婦になるかどうかを、まだ急いで決める場面ではない‥。
チュウの引き札づくりを断りながらも、一人で絵を描いていた環。その手は、まだ自分の好きなことを離していないようです‥。

直美は環の沈黙を「見てきた証」に変えた

直美は環の沈黙を「見てきた証」に変えた

佳枝の家を出た後、直美は環に「どうだった?」と尋ねました。
環は答えません。
その無言へ直美は、「ちゃんと見てきたんだね」と返します。

そのひと言が、深い。
なおじは少し唸りました。

無言の環に、答えを急がせなかった直美

環は、何も見てこなかったから黙ったのではない。佳枝の暮らしの中で働くりんを見て、母のすごさを一度に受け取ってしまったから、言葉が追いつかなかったのではないでしょうか。

直美はそこを見逃しませんでした。「どうだった?」と聞いておきながら、答えが返らない環を追い詰めない。「ちゃんと見てきたんだね」と言って、環の沈黙に居場所をつくった。

看護の現場で人の表情や声色を読んできた直美らしい言葉です。環の中でまだ形になっていないものを、直美は先に受け止めたのでしょう。

直美がこれまで、孤独や迷いを抱えた人へどのように向き合ってきたのかを知ると、この一言のやわらかさがいっそう伝わります。

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直美が看護婦として、人の孤独やためらいへどう向き合ってきたかを読めます。

絵を描く手は、環だけの進路を探している

チュウから引き札づくりを頼まれた環は、その場では断りました。それでも一人になると、手は紙の上を動いている。頼まれたから描くのではない。描かずにはいられないものが、環の中に残っている。

母の仕事を見て、看護に心が動く。けれど、絵を描く時にも環の目は生きている。この二つが今、環の中でぶつかっているのか、それともいつか一つにつながるのか。答えはまだ出ていません。

ただ、第116話でシマケンと話した環が、絵と将来の間で迷っていたことを思い出すと、第117話の無言は急に深くなります。

👉関連記事:風、薫る116話感想|環の進路と亀吉再登場、シマケンの言葉

環が絵を描くことと将来の間で揺れ始めた場面を、前話の流れから振り返れます。

りんと直美を「自慢のお母さんたち」と言った環。あの言葉の後、環はすぐに結論を出しませんでした。紙に向かう手と、佳枝宅で黙った時間。その両方が、環の中に残っています。

よくある質問(Q&A)

亀吉は環の父親ですか?

第117話では亀吉と環が顔を合わせ、環は母・りんの過去とつながる人物を初めて強く意識することになります。亀吉と環の関係がこの先どのように語られるのか‥、重い場面になりそうです。

亀吉は何の目的で来たのでしょうか?

亀吉は恵風看護婦会に現れましたが、来訪の理由はこの回ではまだ語られません。しのぶの質問に言葉を濁す亀吉と、彼を見つめる直美の間に、重い沈黙が横たわっていました。

環は看護婦を目指すのでしょうか?

環は母・りんの派出看護を見て、看護の仕事を強く意識し始めたようです。一方で、引き札づくりを断った後も一人で絵を描き続けており、環自身の「好き」も消えていません。

佳枝とりんはどのような関係ですか?

佳枝とりんは、七年にわたり関係を重ねてきています。りんは佳枝の小さな変化を察し、できることを奪わない形で支えています。

しのぶはなぜ亀吉に質問したのですか?

しのぶは亀吉がりんの元夫だと知らず、突然現れた男性に自然な疑問を投げかけました。その遠慮のない問いが、りんの周囲では共有されてこなかった過去を表へ引き出す形になりそうです。

筆者紹介|なおじ

なおじ

なおじ。公立小・中学校で約35年、社会科教師として子どもたちの学びと進路に向き合い、校長・指導主事としても教育現場に関わってきました。親や身近な大人の働く姿を見て、子どもが誇らしさと戸惑いの間で自分の道を探す場面を、学校でも数多く見てきました。

第117話では、りんの看護を目にした環の沈黙と、そこへ言葉を急がせなかった直美の一言に、進路を考える子どもの時間を重ねています。

現在はドラマ芸能政治歴史スポーツ学び書評など8つのブログで、人の生き方と社会とのつながりを発信しています。

風、薫る117話

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