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「風、薫る」第109話・第110話|吾郎の最期と直美が縫い直した第2ボタン

吾郎の遺した軍服へ、直美は第2ボタンを縫い直しました。何度も「また外したの」と叱りながら直してきた、その場所です。

第109話・第110話は、吾郎の最期とともに、直美がもう戻らない日常へ初めて触れた朝でした。明を抱いたまま訃報を受け、すぐには泣けなかった直美が、なぜ針を持ち、なぜ最後に声を上げたのか。

小さなボタン一つに、夫婦が積み重ねた時間が残ることがあります。

第二釦 
 針を通しても
  留守

「また取れてしまったの、もう」と言いたい。
けれど、その声を向ける吾郎は、もういません。

多江が持ち帰った吾郎の言葉、第2ボタン、そして直美の涙。二話続けて描かれた別れをたどります。

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目次

吾郎の最期と第2ボタンについて先に知りたい人へ

Q1. 小川吾郎はどのような最期を迎えた?

「風、薫る」第109話・第110話で小川吾郎は、台湾で岩場から転落して重傷を負い、広島の陸軍予備病院で亡くなりました。直美が明を出産した直後に、待ち続けた夫の訃報が届きます。

Q2. 吾郎の第2ボタンにはどんな意味があった?

吾郎の第2ボタンは、直美に縫い直してもらう時間を好きだった吾郎が、自分で外していたものでした。多江がその理由を直美へ伝え、外れたボタンは夫婦の日常を思い出させる遺品になりました。

Q3. 直美はなぜ軍服の第2ボタンを縫い直して泣いた?

直美は吾郎の軍服へ第2ボタンを縫い直す中で、吾郎がもう帰らない現実に触れ、最後に声を上げて泣きました。生前と同じ手つきでボタンを直しても、夫は戻らないという場面でした。

109話・110話で直美に重なった出産と別れ

直美の腕には、生まれたばかりの明がいました。その直美のもとへ、吾郎が亡くなったという知らせが届きます。喜びと別れが、同じ家の中に置かれた二話でした。

明を抱く直美のもとへ届いた吾郎の訃報

直美は吾郎の帰りを待ちながら、明を出産しました。初めての育児に戸惑いながらも、美津やりんの手を借りて、母としての毎日を始めようとしていたのです。

その矢先、吾郎の訃報が届きました。吾郎は負傷後、広島の陸軍予備病院へ運ばれていました。明を抱く直美の前で、待ち続けた帰還だけが消えていきました。

前話で直美と吾郎は、息子を「明」と名付けました。二人が託したかった未来を知っているからこそ、その知らせはただ悲しいだけでは済みません。

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台湾の岩場から広島の病院へ至った吾郎の最期

吾郎は台湾の戦地で岩場から転落し、重傷を負いました。広島の陸軍予備病院へ運ばれたあと、多江の看護を受けながら最期を迎えます。

戦争の恐ろしさは、銃弾や砲撃だけではありません。足を踏み外した先にも、帰れなくなる人がいる。その事実が、吾郎の最期には残りました。

「風、薫る」は、傷ついた人のそばへ看護婦が向かう物語です。吾郎の死は、直美たちが見てきた戦争の影が、ついに最も近い家の中へ入ってきた場面でした。

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連続放送が途切れさせなかった直美の悲しみ

第109話は大雨報道によって放送予定が変更され、第110話とともに8月28日に続けて放送されました。[web:2]

吾郎の訃報。多江の帰還。第2ボタンの真相。直美の涙。普段なら一晩を挟んだかもしれない出来事が、朝の短い時間に重なりました。

吾郎の戦傷死と第2ボタンの真相が続けて明かされたこの二話には、放送直後から強い反響が集まりました。[web:31][web:49] 直美が泣くまでの時間を、こちらも途中で離れずに見届ける朝になりました。

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第2ボタンが残した吾郎と直美の夫婦の時間

第2ボタンは、吾郎の遺品ではありますが、直美と吾郎がともに過ごした何気ない暮らしを連れ戻す小道具でもありました。

わざと外したボタンにあった吾郎の小さな甘え

多江が直美へ伝えたのは、吾郎が軍服の第2ボタンを自分で外していたという事実でした。

理由は、直美が「また外したの」と少し怒りながらも、親身になって何度も縫い直してくれる姿を見るのが好きだったから。大げさな愛の言葉ではなく、制服のほころびを直してもらうことに、吾郎は夫婦のぬくもりを感じていたのでしょう。

人は案外、立派な言葉よりも、こういう細かな世話に愛情を見つけるものです。外れたボタンは困りごとでありながら、吾郎にとっては直美に甘えるための小さな入口でもあったのかもしれません。

厳しくて優しくて寂しがり屋の直美

多江は、吾郎が直美を「厳しくて、優しくて、寂しがり屋」と語っていたことも届けました。

この言葉には、直美を一面だけで見ていなかった吾郎のまなざしがあります。直美のきつい言い方の奥には、誰かを放っておけない優しさがある。そして、強く振る舞う人ほど、ひとりで寂しさを抱え込みやすいこともある。

なおじには、吾郎は直美の弱さを暴くのではなく、その全部を生活の中で受け止めていたように見えます。だからこそ「第2ボタンを縫って」という小さな頼みごとが、二人の間では立派な会話になっていたのでしょう。

直美がどんな道を通って、看護婦として人の痛みに手を伸ばしてきた人物なのかを振り返ると、この場面の重さはさらに増します。

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多江が持ち帰ったのは訃報ではなく吾郎の最後の時間

多江は、吾郎の最後を見届けた人として直美の前に立ちました。手には第2ボタンがあり、胸には吾郎から聞いた直美の姿が残っていたはずです。

訃報だけなら、一枚の紙でも届く。けれど、多江が帰ってきたからこそ、吾郎が最後まで直美を思っていた時間が、直美のもとへ戻ってきました。

広島の陸軍予備病院で吾郎のそばにいた多江

多江は広島の陸軍予備病院で傷病兵を看護していました。そこで吾郎と会い、最期にそばに付き添います。

直美にとって、吾郎の死は突然届いた現実でした。けれど吾郎は、誰にも看取られず一人で逝ったわけではありません。多江がその時間にいたことが、直美へ届く数少ない慰めになったように見えました。

広島へ向かう前、多江は戦争の影を伝える手紙を書いていました。その手紙を思い出すと、今回の帰還はさらに重くなります。

👉関連記事:風、薫る106話|直美の体調と多江の手紙が示す戦争の影

言葉と第2ボタンを友へ手渡した多江

多江は吾郎が直美を「厳しくて、優しくて、寂しがり屋」と話していたことを伝え、第2ボタンを渡しました。

遺品は、亡くなった人の代わりにはなりません。それでも、最後にどんな声で誰を思っていたのかを知るとき、残された人の胸には、会えなくなった人との時間がもう一度立ち上がります。

多江は直美へ、無理に慰めの言葉を重ねたわけではありません。吾郎が外したボタンと、その理由を手渡した。その静かな伝え方に、多江らしい看護婦の目と、友への誠実さがありました。

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直美が軍服のボタンを縫い直して泣けた理由

直美は、すぐには泣けませんでした。明を抱き、周りの心配を受け止め、これからを考えようとする。その間も、吾郎がいないという事実だけが、静かにそばにありました。

第2ボタンを縫い直す夜、直美の手が止まったとき、悲しみは初めて涙になりました。

泣けなかった直美が手を動かした夜

直美は多江から受け取った第2ボタンを、吾郎の軍服へ縫い直しました。針を持ち、糸を通し、外れた場所を元へ戻そうとする。その手つきは、吾郎が生きていた頃にも何度も繰り返してきたものだったのでしょう。

けれど今回は、縫い終えても吾郎は「ありがとう」と受け取りに来ません。直美が直してきたのはボタンだけではなく、二人の暮らしの小さなほころびだったのかもしれません。

だからこそ、針が布を通るたびに、帰らない吾郎の姿が近くなった。直美は縫い終えた軍服を前に、声を上げて泣きました。

りんと美津が示した異なる支え方

直美が看護の仕事へ戻りたいと口にすると、美津は産後の体を案じました。りんは、直美が自分で選ぼうとする意志を尊重しようとします。

美津は止めたいのではなく、直美を休ませたい。りんは急かしたいのではなく、直美が仕事まで失わないようにしたい。二人の言葉は違っても、直美を一人にしないという思いは同じです。

直美のそばには、同じ答えを言う人ばかりではありません。それぞれが別の場所から、泣いた直美の次の一歩を見ています。

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仕事へ戻ることは悲しみを置き去りにしない

直美にとって看護の仕事は、悲しみを忘れるための逃げ場ではないでしょう。痛みを抱えた人の前に立つ仕事だからこそ、吾郎を失った今も、そこへ戻ろうとする気持ちがある。

美津が案じ、りんが尊重し、多江がそばにいる。直美がすぐ以前と同じように働けるとは限りません。それでも、看護婦としての自分を手放したくないという思いは、明を抱く直美の中で消えてはいませんでした。

直美は縫い終えた軍服を前に、声を上げて泣きました。吾郎がまた「外れた」と差し出すことは、もうありません。それでも第2ボタンは軍服に戻り、直美の手には針と糸の感触だけが残っていました。

よくある質問

小川吾郎はどのような経緯で亡くなった?

吾郎は台湾での戦地で岩場から転落して重傷を負い、広島の陸軍予備病院へ運ばれました。そこで多江の看護を受けましたが、直美と明のもとへ帰ることはできませんでした。

多江は吾郎に何をしてあげられた?

多江は広島の陸軍予備病院で吾郎のそばに付き添い、最期を看取りました。そして、吾郎が直美をどう語っていたのかと、第2ボタンを直美へ届けました。

直美はすぐに看護の仕事へ復帰する?

第110話で直美は復職したい思いを口にします。美津は産後の体を案じ、りんは直美が自分で選ぼうとする気持ちを尊重しました。

第2ボタンの真相は何だった?

吾郎は、直美にボタンを縫い直してもらう時間を好きだったため、自分で第2ボタンを外していたと多江が伝えました。遺品となったボタンは、吾郎が直美の「叱る声」まで愛おしんでいたことを知らせるものでした。

第109話と第110話はなぜ同日に放送された?

第109話と第110話は、大雨報道による放送変更を受けて8月28日に連続放送されました。吾郎の訃報から多江の帰還、直美が泣く場面までが続いたため、視聴者にとっても息をつく間のない朝になりました。

筆者紹介|なおじ

公立小・中学校で約35年教師を務め、校長として11年、指導主事として教育現場を外側から見つめた経験があります。長い学校生活では、言葉にできない悲しみを抱える子どもや保護者、そして寄り添い方に迷う大人たちにも出会ってきました。

「風、薫る」を読むときも、出来事の大きさだけでなく、その人がすぐには泣けなかった理由、そばにいる人がどんな言葉を選んだのかに目を向けています。

現在はドラマ芸能政治歴史スポーツ学び書評の8つのブログを運営し、人の生き方と社会のつながりを軸に執筆しています。

風、薫る109話、110話

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