夕暮れを待つ滋賀の空が、オレンジ色に染まり始めていた。瀬田ゴルフコース北コースの18番グリーン。息をのむような緊張感が漂う中、一人の日本人選手が静かにパターを構えた。竹田麗央。21歳の彼女の目は、これまでの苦難と、今掴んでいる栄光が映っていた。
プレーオフ6ホール目。相手は米国の強豪、マリーナ・アレックス。
竹田のパターが静かに動き、ボールは真っ直ぐにグリーンを転がっていく。観客の息が止まる。
そして—
「入った!」
歓声が沸き起こる。竹田麗央、TOTOジャパンクラシック優勝。そして、待ちに待った米ツアー初制覇。彼女の目に涙が光る。長年の夢が、ここ日本の地で実現した瞬間だった。これは、一人の日本人女子ゴルファーが世界の頂上に立った、感動の記録。
竹田麗央のプロフィール
竹田麗央は、2000年1月15日、ゴルフ一家に生まれた。母や叔母も、プロゴルファー。実家もゴルフショップを経営してるというスポーツ一家。
3歳の時に初めてクラブを握った。幼少期のエピソードとして、5歳の誕生日に両親から贈られたジュニアセットを手に入れ、毎日庭で練習する姿が近所で話題になったという。
「いつでもクラブを振っていました」と竹田自身も当時を振り返る。
竹田麗央選手は、中学生時代の2015年に「熊本県小・中・高校ゴルフ大会」で3位入賞。
高校時代の具体的な成績については詳細は不明だが、ジュニア時代から実力者として有名だった。
18歳でプロテストに合格。
国内ツアーで実力を発揮。 21歳の2024年シーズンは、今回の優勝で、年間8勝を挙げた。
しかも、日本女子プロゴルフ選手権と日本女子オープンの2大メジャータイトルを同じ年に勝ち、2冠を取ったのは史上3人目の快挙。
さらに、米ツアー初制覇!
TOTOジャパンクラシックで劇的逆転優勝をなし遂げたのだ。(令和6年11月3日)
今後、世界を目指して米国ツアーに挑戦の予定。
TOTOジャパンクラシックは、日本と米国の女子ゴルフツアーを兼ねる国際大会。
1973年に始まり、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)と米国女子プロゴルフ協会(LPGA)が共催した。2024年の大会は、10月31日から11月3日まで、滋賀県大津市の瀬田ゴルフコース北コース(6,616ヤード、パー72)で開催。
米ツアー参戦権が懸かる大会として、世界中から注目を集めていた。瀬田ゴルフコースは、琵琶湖を望む丘陵地に位置し、美しい自然と戦略性の高いレイアウトで知られる。 特に最終18番ホールは、池越えの難関パー5で、多くのドラマを生んできた名物ホールだ。
大会3日間の展開
竹田麗央は初日、「69」で回り、3アンダー15位タイとやや出遅れた。
2日目は「65」でラウンドし、通算10アンダーで単独4位につけ、首位の脇元華と3打差の位置についた。
3日目は悪天候のため中止となり、大会は54ホールの短縮競技となった。
最終日、竹田は4位からスタートし、1イーグル、5バーディ、2ボギーの「68」という素晴らしいスコアで回った。
合計15アンダーでマリーナ・アレックスと並んで、プレーオフに突入。
激戦を制し、竹田が優勝を飾った。
終末の劇的な展開
最終日、竹田は4位からのスタート。首位の脇元華に3打差をつけられての挑戦だった。
竹田は1番ホール(パー4)から攻めの姿勢を見せた。ドライバーショットは左サイドのフェアウェイに絶好の位置。セカンドは8番アイアンでピン下1メートルに並んだ。
「今日は攻めるしかない」と決意を固めた竹田は、このバーディパットを見事に沈め、幸先の良いスタートを切った。
2番、3番で連続バーディーを奪う。
8番からの連続ボギーで後退。
後半に入り、竹田の追い上げは本格化する。
10番でバーディー。
13番では、セカンドショットを1.5メートルに並べ、難しい右へのスライスを読み切りバーディをもぎ取る。
16番パー5は、圧巻だった。
2打目のショットをグリーンに乗せ、1パットでイーグル。
観客からどよめきが沸き起こった。
この時点で、15アンダーで首位のマリーナ・アレックスとの差は、1打。
そして、運命の18番ホール(パー5、540ヤード)。
竹田は豪快なショットで2オンに成功。グリーン上では惜しくも、1パットを外し、2パットのバーディー。
通算15アンダーとなり、18番をパートした首位のマリーナ・アレックスに並んだ。
最終ラウンドのスコアは「68」。
1イーグル、5バーディー、2ボギーの素晴らしいスコアだった。
プレーオフの熱戦
18番パー5、プレーオフ1ホール目。どちらともバーディーで、決着がつかず2ホール目へ。
2~5ホール目は両者パーが続き、一歩も譲らない展開。
日が傾き、照明が点き始めた6ホール目。
竹田はグリーン手前からの絶妙なアプローチで約2メートルにボールを寄せた。先に打ったアレックスのパットは惜しくもカップを外れた。
竹田に勝機が訪れる。
竹田は慎重にラインを読み、静かにパターを構える。
そして、運命の一打。
ボールは真っ直ぐカップに吸い込まれ、見事に沈んだ。
竹田麗央、約2時間に渡るプレーオフを制し、劇的な逆転優勝を果たした瞬間だった。
この優勝により、竹田は米ツアー初制覇とともに、2026年シーズン終了までの米ツアー出場権(2年シード)を獲得した。
優勝が決まった瞬間、竹田は両手を挙げて喜びを爆発させていた。 キャディとハグを交えて、涙を流す姿にギャラリーは惜しみない歓声を贈った。
家族や仲間たちが駆け寄り、竹田を祝福する。感動的なシーンが広がる中、竹田は優勝インタビューに応じた。
「本当に信じられない気持ちです。最後まで諦めずに自分のゴルフができて本当に嬉しいです。」
と涙ながらに語った。
「この優勝を糧に、さらに上を目指して頑張ります」
さらに、
「日本で優勝できたことが本当に嬉しいです。応援してくださったファンの皆さんの声が力になりました」
と、日本開催で優勝できたことへの喜びを語った。
他の日本人選手の成績と反応
12アンダー6位タイの脇元華は、「最後まで攻めのゴルフができず悔しいです。でも、竹田選手の優勝は本当に嬉しいです。日本女子ゴルフの未来が明るくなりました」とコメント。
同じく6位タイの河本結は「竹田選手のプレーオフでの強さに感動しました。私も負けずに頑張ります」と語った。
10位タイの古江彩佳は「竹田選手とは学生時代からのライバル。彼女の活躍は私の励みになります」と喜びを分かちあった。
47位に終わった渋野日向子は「悔しい結果ですが、竹田選手の優勝で日本中が盛り上がると思います。私も次は良い結果を残せるように頑張ります」とコメント。
大会後、日本人選手たちが竹田を囲んで記念撮影する和やかなシーンも見られ、チームジャパンとしての絆の強さを感じさせられた。
ツアー初優勝の意義
竹田麗央の米ツアー初優勝は、日本女子ゴルフ界にとって大きな意味を持つ。
1992年の岡本綾子以来、日本人選手の米ツアーでの挑戦の歴史は長い。樋口久子、岡本綾子、福嶋晃子、宮里藍と、多くの選手が挑戦を続けてきた。
その中で、竹田の優勝は新たな時代の幕開けを告げるものだ。
叔母からの辛口コメント
米ツアー出場権を獲得した竹田麗央選手に対し、叔母に当たる平瀬真由美氏は辛口のコメントを贈っている。
「向こうは層が厚い。簡単には通用しないと思う。日本が恋しいとかで行ったり来たりせず、武者修行のようにトライしてもらいたい。」
「向こう」(米国ツアー)は選手層が厚いく、レベルの高い選手が多い。
簡単には通用しない。」
米国ツアーで簡単に成功することは難しいと、厳しいコメント。
身内ならではの愛の鞭のようだ。
まとめ
竹田麗央選手の米ツアー初制覇は、日本女子ゴルフ界に新たな希望をもたらした歴史的な瞬間となった。
- 21歳という若さで、TOTOジャパンクラシックで劇的な逆転優勝を果たし、米ツアー初制覇を達成。
- 2024年シーズン、国内ツアーで8勝目を挙げ、日本女子プロゴルフ選手権と日本女子オープンの2大メジャータイトルも獲得。
- 約2時間かけて6ホールのプレーオフを制し、精神力の強さを証明。
- この優勝により、2026年シーズン終了までの米ツアー出場権(2年シード)を獲得。
- ゴルフ一家に生まれ、3歳でクラブを握り始めた竹田選手の努力が実を結んだ形。
- 他の日本人選手たちからも祝福の声が上がり、日本女子ゴルフ界全体の士気を高めた。
- 1989年の岡本綾子以来、35年ぶりの快挙となり、日本女子ゴルフの新時代の幕開けを告げる勝利。
- 叔母の平瀬真由美氏からは、米ツアーでの厳しい戦いを予想する辛口コメント。
竹田選手の今後の米ツアーでの活躍が期待される一方、その続きは一時平坦ではないことも予想される。
しかし、この歴史的勝利は、竹田選手個人の成長だけでなく、日本女子ゴルフ界全体に大きな影響を与えることは間違いない。 今後の竹田選手の挑戦と、今後続く若手選手たちの活躍に、日本中が注目しているだろう。