河内春人著『倭の五王 王位継承と五世紀の東アジア』は、古代日本史を再構築する画期的な一冊です。
本書では、5世紀に中国南朝へ使節を派遣し、国際社会で活躍した「倭の五王」（讃・珍・済・興・武）の実像を、中国や朝鮮半島との外交関係を通じて解明しています。
筆者は、『日本書紀』や『古事記』といった国内史料に依存せず、中国の史書や考古学的発見を駆使し、記紀中心史観を超えた新たな歴史像を提示しています。
本書の主なテーマは、倭の五王がどのように東アジア国際社会で地位を築き、国内統治基盤を強化したかにあります。
讃による宋への使節派遣から始まり、高句麗や百済との競争意識が外交戦略にどう影響したかが詳述されています。
また、武（ワカタケル）の時代には、高句麗との対立や朝鮮半島南部への影響力拡大が描かれています。
さらに、「倭の五王」を日本書紀や古事記に登場する天皇と比定する試みについても議論され、その限界と課題が指摘されています。
筆者は比定論から解放され、中国史書や考古学資料を基にした新しい視点で歴史を再構築する必要性を強調しています。
この本は、日本古代史だけでなく、東アジア全体の国際関係理解にも寄与する内容であり、歴史ファンや学術的関心のある読者にとって必読の一冊です。
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