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「基礎・基本」の定着を目指した学習の支援はどのようにあるべきか

yuuta
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○学校からの質問『「基礎・基本とは何か」』について

 基礎・基本とは,「読み・書き・算」といった単なる知識だけではない

 テレビなどで「学力の低下」が大きな声で叫ばれています。
 ところでテレビの解説者たちが言う「学力」とは、何を指しているでしょうか。
 彼らの言う「学力」とは、単なる「読み・書き・算」に代表される知識のみを指しています。
 しかし、私たち教育のプロである教師は「学力」を「読み・書き・算」の知識のみで捉えていません。ここに前提としての「学力」の捉えに大きな差があります。この差をまず一人一人の教師が理解しておく必要があります。
 では、我々教育のプロとしての教師が捉えるべき「学力」とは何でしょうか。

教育のプロである教師が捉えるべき「学力」とは

 「学力」とは、単なる「読み・書き・算」に代表される知識だけではありません。では、教師が捉えるべき「学力」を一言で言うと、

学力とは

学習指導要領、およびその解説に示される、目標および内容

 この点を教師はしっかり抑えておく必要があります。
 つまり、「学力」とは、「知識」のみならず「意欲・態度」の観点,「思考・判断」の観点,「技能」の観点,「知識・理解」の、それぞれの観点に「基礎・基本」があると捉えなければなりません。(平成14年度当時の4観点で述べています)
 私は昭和30年代の生まれです。私たちが高校受験や大学受験をするころは「重箱の隅をつつくような些末な知識を問う問題」が、入試問題として出されていました。
 「そんなこと覚える必要が本当にあるのか」というような知識を問う問題です。
 それに対して、「知識を生かし、考える力」「知識を生かして判断する力」とか、「知識を他の場面に生かす技能」などは世界的なレベルで見た場合、必ずしも高くはないという状況にありました。
 この反省から、「生きる力」としての学力観が生まれました。つまり「知識」だけではなく、「4観点すべてに渡って基礎・基本があるんだよ」、という「学力観」です。

学力は「知識」だけではない。思考・判断、技能など当時の4観点、現在の3観点それぞれに「基礎・基本」としての学力がある。それを無視すると、真の学力低下を招く。

だからといって、「知識」を軽視して良いということではない

 だからといって、「知識」を軽視しろ、などということは無いのです。
 この点について、テレビを見ていると、「円周率を3.14ではなく3と教えることになった」とか、「台形の面積を求める公式を教えないことになった」など、私から言わせていただけば「何を言っているんだ」レベルの話を堂々としているコメンテーターがたくさん見られます。
 残念ながらこのテレビの影響が、世間の誤解を生む大きな要因になっているようです。
 先生方もご存じのように、「円周率を3と教えろ」などと言うことは学習指導要領およびその解説のどこにも書いてありません。書いてあるのは、概算で計算するときに「3.14」ではなく「3」として計算すると、おおよその解を知ることが出来ますよということです。
 直径5センチの円の周りの長さを計算するとき、「5×3.14」と当然計算します。しかし、おおよその解を知るときは、「5×3」でおおよそ、15センチになると考えることも必要ですよ、ということです。
 また「台形の面積を求める公式を教えなくてもよくなった」といいますが、「台形の面積は、平行四辺形の面積を2等分すれば求められますよ」と教えることで、公式を知らなくても求められます。つまり、平行四辺形の面積を求める公式を生かす「生きる力としての技能」があれば、「台形の面積を求める公式」という知識を知っていなくても大丈夫です、ということです。

 教えるべき「知識」を絞ることで何を目指すのか

 北敏夫先生は、「魚を与えるより、魚をとる技能を教えよ」とおっしゃっています。魚とは「知識」です。些末な知識まで与えるのでは無く、「必要な知識のみに絞り」その「知識を生かして考える」とか「知識を生かして表現する」など、いわゆる「生きる力としての学力」を身に付けさせることが大切ですよ、ということです。
 我々プロ教師が育てるべき「学力」とは
「知識」という狭い概念ではなく「知恵」という広い概念、今風に言えば「生きる力としての学力」(学習指導要領および解説に示される、目標と4観点の内容のすべて)を育てることを目指します。(平成14年5月30日・計画訪問にて)

○「基礎・基本の定着を目指した学習の支援はどのようにあるべきか」について

 本校の質問事項の中に、『「基礎・基本の定着を目指した学習支援はどのようにあるべきか」』とあります。
 まず大前提として、『本校の捉える「基礎・基本とは何か」』という点ですが、おそらく、「基礎・基本とは、知識のことだ」という捉えだと思います。
 しかし、「基礎・基本」とは、「知識」のみを指すのでは無いということを前段でお話しさせていただきました。
 その上で、ご質問を「「知識」の観点に絞った「基礎・基本の定着を図るためのポイント」として話させていただきます。

学習の中に「変化のある繰り返し」をいかに仕組むか 

 学習の中に(単元の中にも含め)「変化のある繰り返し」をいかに仕組むか,「知識」の定着のためのポイントを上げるとすればこの点につきます。
 人の脳は、忘れるように出来ています。
 では、いかに繰り返すかです。脳科学的には、「変化のある繰り返し」が大切だそうです。
 こんな実践があります。国語の時間でした。その教師は、黒板いっぱいにある詩を板書しました。そして全員を起立させ、その詩を全員で朗読させます。
 朗読が終わると、教師は板書されている詩の最初の一行を消してしまいました。そして、教師が消した部分も含めて朗読するよう、子どもたちに指示しました。
 それを繰り返し、最後には黒板に何も書かれていない状態になりました。
 何も書かれていない板書を前に、子どもたちは元気な声で、全員で詩を朗読します。そして朗読が終わると、「やった」「おー」などの歓声があがりました。
 変化のある繰り返しです。


 さらに今注目されている、百マス計算なども変化のある繰り返しです。
 「知識」は、一回では身に付きません。いかに変化のある繰り返しを仕組むかがポイントとなるでしょう。

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