
こんにちは、なおじです。
2026年3月30日、NHKの朝ドラ「風、薫る」がスタートしました。
明治15年(1882年)の那須と東京を舞台に、2人のヒロインが動き出した第1週。
タイトルは「翼と刀」。
このタイトルの意味が、第2話の父・信右衛門のセリフと見事につながっていて、なおじはその瞬間、思わず手を止めました。
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🖊️ この記事でわかること
- 第1週「翼と刀」全5話のあらすじ
- りんと直美、2人のスタートラインの違い
- タイトル「翼と刀」が指すもの
- コレラ(コロリ)という歴史的背景
- 第1週を貫く「あがり」という言葉のどんでん返し
第1週「翼と刀」全5話あらすじ
1話:那須のりんと東京の直美

1882年(明治15年)。
那須の農村に、元家老の父・信右衛門(北村一輝)、母の美津(水野美紀)、妹の安(早坂美海)と暮らす17歳の一ノ瀬りん(見上愛)。
りんと安は「江戸娘一代双六」に興じていました。
双六のゴール、「あがり」は「奥様」。
女の幸せは嫁ぐことだとされていた時代。
一方、東京では継ぎはぎの着物に十字架のエンブレム姿の17歳・大家直美(上坂樹里)が、日当わずか3銭のマッチ工場で働いていました。
身寄りのないみなし子で、キリスト教会に育てられた娘。
「いかにも私がみなし子で耶蘇の貧乏女、大家直美ですが、女学生の皆々様、何か?」
第1話は、この2人のスタートラインが鮮やかに対比されて提示される幕開けでした。
2話・3話:コレラ禍の那須と父の言葉

隣村で「致死率7割」と恐れられるコロリ(コレラ)が発生。
父・信右衛門は祭りの夜、書写をさぼろうとするりんにこう語りかけます。
「学ぶことは時に世を渡る翼となり、時に身を守る刀になる。己を助けるのは、己の頭と心、そして体だけだ。」
これが第1週タイトル「翼と刀」の由来です。
35年間、教壇に立ってきたなおじとしては、この一言、刺さります。
ものすごく刺さります(笑)。
なおじも何百回と授業でこういう話をしてきた気がするんですが、信右衛門みたいにあんなにかっこよく言えていたかどうか……。
「先生、社会科は将来何の役に立つんですか?」
「……翼と刀だ。」
なんて言えたら最高でしたねえ(笑)。
さて、3話では幼なじみの虎太郎(小林虎之介)の母がコレラで「避病院」に搬送されます。
避病院から戻った虎太郎は村で疎外されてしまいました。
感染を恐れ、震える虎太郎の手をりんは思わず握ろうとして、寸前で止めた。
そのことを「また間違えた」と悔やむりん。
父・信右衛門に論語の一節を教わります。
「子のたまわく過ちて改めざる。これこそ過ち。」
間違いに気づきながら改めないことが真の過ちである、という言葉。
中学校の授業でもつかっていたこの一文が、りんの胸に深く刻まれていく様子が丁寧に描かれていました。
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4話:信右衛門の死と「生きろ、りん」

第4話で、信右衛門がコレラに感染しました。
納屋に立てこもり、刀をかんぬきにして「入れば斬る」と、りんが近づくことを固く禁じる父。
りんは格子の隙間から折り鶴を投げ入れたり、歌を口ずさんだりして父を勇気づけますが、やがて物音がしなくなります。
「生きろ、りん…。お前はきっと優しい風を起こせる…。」
それが父の最後の言葉でした。
戸をこじ開けて中に入ったりんは、すでに息を引き取った父の手を取ります。
「温かい。もっと早く…早く…手を…間違えた。また間違えた…」
第3話の虎太郎の手を握れなかった後悔と重なる「また間違えた」という言葉。
この構造の精巧さに、なおじは静かにうなってしまいました。
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5話:大山捨松との出会いとりんの決心

1883年(明治16年)。
コレラが収束し、時代は動きます。
東京では直美が、大山捨松・大山巌夫妻の結婚記事を英字新聞で読んでいました。
「日本で女が成り上がるには玉の輿しかない。アメリカへ行くしかない」と考える直美。
那須では、りんに18歳年上の運送業者の後妻話が舞い込みます。
そんな折、道を歩いていたりんが馬車と鉢合わせして転んでしまいます。
馬車から降りてきたのが、「鹿鳴館の華」と謳われた大山捨松(多部未華子)でした。
「Are you alright?(大丈夫?)清潔、大事。破傷風、気をつけなければならない。」
純白のレースのハンカチで手際よくりんの傷を手当てする捨松の姿に、りんは何かを感じ取ります。

一方、虎太郎とふたりで釣りに出かけたりん。
虎太郎が手を握ってきますが、りんはそっと手を解いて家路を急ぎます。
そして母・美津の前に立つと、りんは迷いのない目で言うのでした。
「私、結婚する。奥様になる。」
第2週へのホップです。
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タイトル「翼と刀」が意味すること

「学ぶ」は武器であるという宣言
「翼と刀」というタイトルは、第2話の信右衛門のセリフから取られています。
「学ぶことは時に世を渡る翼となり、時に身を守る刀になる」
明治という時代を生きるうえで、学問は単なる教養ではなく、生存のための道具だったわけです。
社会科教師として35年教えてきて、なおじが思うのは、この言葉は明治の話でも何でもないということ。
「社会科って何の役に立つの?」と聞いてきた生徒たちに、もっと早くこの言葉を教えたかったなあと、しみじみ感じます。
「あがり」という言葉のどんでん返し
第1週を貫くもう一つのキーワードが「あがり」です。
第1話でりんと安が遊んでいた双六の「あがり」は「奥様」。
女性のゴール=結婚、という受動的な時代の価値観を表していました。
ところが第5話ラスト、りんが「私、結婚する。奥様になる。」と言うシーン。
同じ「あがり(奥様)」を目指す言葉ですが、今度はりん自身の意志で選んだ悲しく思い決断になっている。
同じ言葉なのに、第1話と第5話では全然違う重さに聞こえる。
この脚本の構造の巧みさに、なおじは素直に感心しました。
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りんと直美、2人の「自立」の形

那須のりん:戦略的に動く女
りんはおっとりしているように見えて、実は相当に頭が回ります。
父の死を経て、「奥様になる」という決断をするわけですが、それは単なる受動的な服従ではない。
「なぜ今、縁談に乗るのか」——その答えは第2週以降に少しずつ明かされていくはずです。
東京の直美:生き延びるために走る女
一方の直美は、不満と反発のエネルギーで生きている人物として描かれています。
「正しい」で生きられる幸せな人が嫌い。
生まれつき家柄のいい人も嫌い。
いい人も嫌い。
誰より自分が嫌い。
この言葉の密度がすごい。
「自分が嫌い」と言い切れる17歳が、どんな女性に成長していくのか。
上坂樹里さんの直美、第1週から目が離せませんでした。
元教師なおじが見る「コロリ」という恐怖

明治のコレラは本当に怖かった
第1週のキーになるのがコレラ(コロリ)。
「致死率7割」という描写は、誇張ではありません。
明治12年(1879年)には日本全国でコレラが大流行し、死者10万人超という記録があります。
栃木でも患者が784人出たというデータが残っていました。
「避病院に入ったら生き胆を取られる」という噂が広まるほど、人々はパニックに陥っていた。
これは歴史の教科書には出てこない話ですが、当時の一次資料にしっかり記録されています。
「看護する人が侮蔑される」社会
コレラ患者を看病した虎太郎が村で疎外される場面。
りんの耳に「看病人」を侮蔑する村人の声が聞こえてきます。
「看護する人が差別される」という描写が第1週から丁寧に仕込まれているのは、このドラマの核心テーマへの伏線ですね。
りんと直美がなぜ「看護婦」になっていくのかという動機が、第1週でしっかり埋め込まれているわけです。
うまい。
脚本の吉澤智子さん、うまい。
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Q&A|第1週「翼と刀」よくある疑問

Q1. タイトル「翼と刀」はどういう意味ですか?
A. 第2話で父・信右衛門がりんに語りかける台詞「学ぶことは時に世を渡る翼となり、時に身を守る刀になる」から来ています。
学問が生きるための武器になるという信右衛門の信念であり、りんと直美の物語全体の指針となる言葉です。
Q2. 信右衛門はなぜ家老から農民になったのですか?
A. 明治維新によって藩という制度が消滅したためです。
信右衛門は那須の小藩の筆頭家老でしたが、廃藩置県(1871年)により「家老」という役職自体がなくなりました。
役所勤めを勧められても断り、農民として生きることを選んだ背景については、第1話でりんが「父は元家老でなぜ農民なのか」と感じる描写から第2週以降でさらに深掘りされていくのかも‥。
👉関連記事:「風、薫る」第1話|家老が農民になった謎
Q3. 大山捨松は実在の人物ですか?
A. はい、実在の人物です。
大山捨松(1860〜1919年)は、岩倉使節団に同行した女子留学生5人のうちの1人で、アメリカに約11年間留学した才女です。
陸軍卿・大山巌と結婚後は「鹿鳴館の華」と呼ばれました。
英語・フランス語に堪能で、りんの看護への道に深く関わる人物として描かれていくそうです。
Q4. コレラ(コロリ)は第1週だけの話ですか?
A. 第1週の中心的な出来事ですが、その影響はりんの物語の根底に流れ続けます。
父を失った悲しみ、「手を握れなかった」後悔、そして「看護する人が差別される社会」——これらすべてが、りんが看護婦を目指す動機の原点となっていくでしょう。
Q5. 第1週の最後「私、結婚する」は、なぜ虎太郎ではないのですか?
A. 詳細は第2週で明かされますが、第5話ラストの描写から読み取ると、りんは虎太郎への気持ちを断ち切ったように見えます。
「18歳年上の運送業者の後妻」という縁談を戦略的に選ぶ背景には、父の死後の一ノ瀬家の経済状況と、りん自身の「自立」への強い意志があると読めます。
第1週の「あがり(奥様)」が第1話と第5話でまったく違う意味を持っている——この構造がドラマの見事なところですよね。
①(なおじ的第1週)
翼刀(つるぎ) 学びに宿る 父の声
②(コロリ禍のりん)
また間違え 手を握れずに 春風よ
【筆者紹介|なおじ】
なおじは元社会科教師として教育現場に35年間携わり、指導主事を5年、校長を11年務めました。
退職後もボランティアで子どもたちに学習を教えています。
社会科・歴史を長年教えてきたので、コレラの社会的影響や廃藩置県後の武士の生き方など、時代背景を読む記事は得意分野です。
信右衛門が語る「学ぶことは翼と刀になる」という台詞、35年間教壇で伝えたかったことそのものでした。