こんにちは、なおじです。
NHK朝ドラ「ばけばけ」で岡部たかしさん演じる司之介。
97話では荒金九州男の小豆相場話に、またしても大金を預けちゃいました。
視聴者からは「また!?」の大合唱。
ウサギバブルに懲りてない父親ぶりに、「司之介を暇にしてはいけない」なんて声まで上がってます。
👉関連記事:ばけばけ荒金九州男は実在?97話史実検証と小豆相場詐欺
ところで、モデルの稲垣金十郎って、本当にダメ男だったんでしょうか?
今回は元社会科教師35年のなおじが、史実の金十郎の真の姿を掘り下げます。

【この記事でわかること】
- 稲垣金十郎が「善良すぎる侍」と呼ばれた理由
- 一度の詐欺で全財産を失った真相と無実の罪
- ドラマの司之介との共通点と脚色の違い
- 武士道の誠実さが仇になった明治維新の皮肉
- セツを養女に迎えた理由と生涯続いた深い愛情
- 晩年の小泉八雲一家との同居生活と最期
稲垣金十郎とは?「善良すぎる侍」の人物像

稲垣金十郎(生年不詳〜1900年)は、松江藩で百石取りの「並士」という上級武士の家に生まれました。
小泉八雲の妻・小泉セツの養父として知られる人物です。
「やや覇気に乏しい善良な人」
孫の小泉一雄が著書『父小泉八雲』で、こう書き残してます。
「母の養父、雲峰院殿は稍覇気に乏しい善良な人であった」
覇気に乏しい、って表現がなんとも切ないんですよね。
大の甘党で、誠実で真面目。
京都警備の任に就いていた頃、好物の菓子を買わせたなんてエピソードも残ってます。
幕末の松江藩で武士としての責任感と清廉さを身につけながら育った人です。
当時の武士に求められたのは忠義と勤勉さ。
金十郎の生来の気質は、この環境でさらに磨かれていったんでしょうね。
稲垣家の家格と小泉家との違い
稲垣家は元祖の稲垣藤助が、延宝元年(1673年)に二代目松江藩主・松平綱隆に仕えてから続く武家。
六代目にあたる万右衛門(セツの養祖父)まで、番頭の指揮下にある組士を務めてきたそうです。
百石取りの「並士」という家格は、三百石取りの上士より一段下がる位置。
実は、セツの実家・小泉家は三百石取りの「上士」でした。
家格に3倍の差があったんです。
でも、縁戚関係だったため、養子縁組が実現しました。
この家格の違いが、後のドラマでの「雨清水家」との対比構造にもつながってるように感じるんです。
👉関連記事:えっ?小泉セツ、養祖父まで連れて熊本移住してた!
詐欺被害の真相|無実の罪まで着せられた

金十郎の人生を大きく変えたのが、明治8年(1875年)4月の詐欺被害。
史実では「一度の詐欺事件」で全財産を失い、無実の罪まで着せられました。
でも、ドラマではこれを「二度の事件」に分けて描くるように見えるんです。
ドラマの二つの事件
①ウサギバブル(4話・9話)
- 司之介が大量のウサギを買い込んで失敗
- 借金を抱える
- でも、家屋敷を失ったり、無実の罪を着せられたりはしていない
👉関連記事:司之介落ち武者と家族愛ばけばけ第9話感想
②小豆相場詐欺(97話〜)
- 荒金九州男に大金を預ける
- これからどうなるのか…
史実の金十郎は「士族の家禄奉還で6年分の家禄を一括受け取りし、実業を開始」したと記録されてます。
ただし、どんな事業を始めたのか、までは書かれていませんでした。
でもこれ、ドラマのウサギバブルとそっくりですよね。
家禄を一括で受け取って、一攫千金を夢見て事業に手を出す。
しかし、ウサギバブルの時は借金だけで済んでいます。
家屋敷を失ったり、無実の罪を着せられたりする展開はなかったように思います。
なおじが心配していること
そうなるとここで、なおじがすごく心配してるのが、97話以降の展開なんです。
史実の金十郎は、詐欺に遭った上に「無実の罪を着せられた」よう。
小泉一雄の著書『父小泉八雲』には、こうあります。
「詐欺にかゝった上に相手が悪辣極る奴で逆に無実の罪を着せられ、数年後には晴天白日の身とはなったものゝ、裁判費用で財産を悉く無くし、日常の生活費にも事欠くの有様となった」
事業資金を騙し取られ、屋敷を明け渡しただけじゃない。
なんと、無実の罪まで着せられて、裁判で全財産を失ったんです。
ドラマでは、ウサギバブルの時にこの「無実の罪」は描かれまなかった‥。
ということは…。
97話以降の小豆相場詐欺で、司之介が「無実の罪を着せられる」展開が来るんじゃないでしょうか。
荒金九州男が詐欺を働いて逃げて、その罪を司之介になすりつける。
司之介、警察に追われちゃうんじゃないかって、なおじは心配してます。
👉関連記事:ばけばけ荒金九州男は実在?97話史実検証と小豆相場詐欺
史実は「一度の詐欺」、ドラマは「二度に分割」

整理するとこうなります。
| 項目 | 史実(稲垣金十郎) | ドラマ(司之介) |
|---|---|---|
| 詐欺事件の回数 | 一度の詐欺で全てを失う | 二度に分けて描く? |
| 第一の事件 | 家禄で「実業開始」→詐欺被害 | ウサギバブル(4話・9話)→借金 |
| 第二の事件 | (同じ事件の続き) | 小豆相場詐欺(97話〜)→無実の罪? |
| 最終的な被害 | 全財産喪失+無実の罪 | これから描かれる? |
史実の金十郎は「一度の詐欺」で全財産と信用を失いました。
ドラマはそれを「二度の詐欺」に分けて描くことで、段階的に没落していく士族の姿を丁寧に表現してるのかもしれません。
第一段階(ウサギバブル):経済的な打撃
第二段階(小豆相場詐欺):社会的信用の喪失+全財産喪失
こうやって段階を踏むことで、視聴者により深く司之介の苦しみ・ひいてはトキの苦しみが伝わる。
批判もあるようですが、なおじはここに脚本の工夫を感じるんです。
善良ゆえに詐欺に遭う
善良ゆえに詐欺被害に遭い、善良ゆえに反論できず、全財産を失う。
これ、読んでて本当に悔しくなりますよね。
「人を疑うな」と教えられて育った武士が、「人を疑わなければ生き残れない」経済社会に放り込まれる。
そりゃあ、やられちゃいますよ。
元教師のなおじとしては、この時代の矛盾が本当に切ないんです。
35年間、社会科で明治維新を教えてきましたが、教科書には載らない庶民の苦しみがここにある気がするんですよね。
誠実さが仇になる社会って、皮肉すぎる。
司之介がこれからどうなるのか…。
97話以降の展開から目が離せません。
👉関連記事:司之介失踪ばけばけ4話ネタバレトキが父捜し必死の涙の理由
ドラマの司之介との共通点と脚色の違い

さて、ドラマ「ばけばけ」の司之介と、史実の稲垣金十郎。
並べてみると、面白いことが見えてきます。
共通点:善良ゆえの詐欺被害
| 項目 | ドラマ(司之介) | 史実(稲垣金十郎) |
|---|---|---|
| 詐欺被害 | ウサギバブル失敗、小豆相場詐欺(予定) | 明治8年の事業詐欺で全財産喪失 |
| 性格 | 善良で不器用、懲りない | 善良で誠実、覇気に乏しい |
| 家族への影響 | トキや家族を経済的に苦しめる | セツや家族を経済的に苦しめる |
| 時代背景 | 明治時代の士族没落 | 明治維新後の士族没落 |
| 詐欺の手口 | 投機話(ウサギ、小豆相場) | 事業資金の詐取 |
どちらも善良な性格ゆえに詐欺に遭う、という点は共通してるんですよね。
脚色の意図:「懲りない父親」の強調
ドラマの司之介は、何度も失敗を繰り返す描写が強調されてます。
ウサギバブル、牛乳屋辞職、そして97話の小豆相場詐欺の予感。
視聴者からは「司之介を暇にしてはいけない」なんて声が上がるほど。
一方、史実の金十郎は、一度の大きな詐欺被害で全財産を失ったんです。
何度も失敗を繰り返したわけじゃない。
ドラマは「懲りない父親」という側面を強調することで、視聴者に分かりやすく伝えてるんでしょうね。
繰り返すことで、明治時代の士族没落の構造的な問題を浮き彫りにしてるように感じるんです。
👉関連記事:司之介落ち武者と家族愛ばけばけ第9話感想
小泉セツを養女に迎えた理由と深い愛情

金十郎は、子に恵まれなかったため、幼いセツを養女として迎えました。
これには複数の理由があったとされてます。
①武家の家を存続させるため
武家社会では、家を存続させることが最優先。
子どもがいない場合、養子や養女を迎えることは一般的でした。
稲垣家の跡と暮らしを守る道を選んだんです。
稲垣家は延宝元年(1673年)から続く家系。
金十郎の代で途絶えさせるわけにはいかなかったんでしょうね。
②縁戚関係による結びつき
小泉家と稲垣家は遠い親戚関係。
小泉家は三百石取りの「上士」、稲垣家は百石取りの「並士」。
家格に差はあったものの、養子縁組を通じて家同士の結びつきを強める意味合いがあったんです。
セツの実父・小泉湊は家老で、松江藩では名門中の名門。
一方、稲垣家は百石取りで、家格は下。
でも、縁戚だからこそ実現した養子縁組だったんでしょうね。
③実の娘以上の愛情
金十郎は、養女セツを実の娘以上に可愛がりました。
小泉一雄の記録には、こうあります。
「稲垣家の親たちの愛情、可愛がりようは、また格別であって、彼女も心から愛し慕い、その親子の情もまた、生涯にわたって翳ることがなかった」
武家の作法や節度を重んじる家風のもと、金十郎は厳しさよりも誠実さと情をもって接したんです。
セツも、生涯にわたって養父母を慕い続けました。
これ、元教師のなおじとしても感動しちゃいます。
35年間教師やってきて、こういう親子関係も見てきました。確かに血縁より深い絆ってあるんですよね‥。
特に養子縁組の場合、意識して愛情を注がないと関係が築けない。
金十郎の人柄が、この親子の絆を生んだんだと思うんです。
晩年の生活と家族との関係

数々の困難を経て、稲垣家はかつての武士の面影を失っていきます。
でも金十郎は、善良な人柄ゆえに家族や周囲から慕われ続けました。
小泉八雲一家との同居
晩年、養女セツの再婚先である小泉八雲のもとに身を寄せ、共に暮らすことになります。
熊本移住の際も、金十郎と妻・トミ、そして父・万右衛門(おじじ様)も一緒に移住したんです。
財産を失った金十郎でしたが、善良さと誠実さは最後まで変わらなかった。
貧しくても、家族の絆は失わなかったんですね。
八雲は、金十郎たちの生活費も負担していました。
さらにセツの実家・小泉家への仕送りもあり、高給取りでも経済的には厳しかったはず。
でも、金十郎を見捨てることはなかった。
この家族の絆が、なおじには眩しく見えるんです。
「覇気には乏しいが、気のいい善人」
孫の小泉一雄の証言のとおり、金十郎の人間性は「覇気には乏しいが、気のいい善人」という評価に集約されます。
没落士族の現実を象徴する一方で、家族から深く慕われた存在。
それが稲垣金十郎の晩年の姿でした。
「覇気には乏しい」って、現代風に言えば「バイタリティがない」「積極性に欠ける」ってことですよね。
でも、「気のいい善人」って評価が、金十郎の人柄を物語ってます。
1900年、胃潰瘍で東京で最期
金十郎は、明治33年(1900年)11月19日、東京で胃潰瘍のため亡くなります。
享年59歳(小泉セツ『思ひ出の記』巻末年譜による)。
当時の医療水準では、胃潰瘍を治すことは困難だったんですね。
たとえ患者が華族・政府高官・実業家など社会の特権階級に属する人たちであっても、です。
金十郎の生涯は、名声を残したものではありませんでした。
しかし、その善良さゆえに苦境に陥り、時代に翻弄された姿は、明治維新を生きた士族の等身大の姿を示してるように思うんです。
元教師が見る稲垣金十郎|ダメ男ではなく「善良すぎた侍」

司之介のモデル・稲垣金十郎は、本当にダメ男だったんでしょうか?
なおじの答えは「ノー」です。
教師として35年間見てきた「誠実さの価値」
金十郎は、決してダメ男じゃない。
むしろ、武士道の誠実さを最後まで貫いた人物だと思うんです。
詐欺に遭ったのは、人を疑わない善良な性格ゆえ。
無実の罪を着せられたのは、理不尽な時代の犠牲者だったから。
元教師のなおじとしては、こういう人物は、その人物なりに、よさを評価したいんです。
35年間教師やってきましたが、誠実さって本当に大事。
子どもたちには、いつも「人を裏切らない人間になれ」って教えてきました。
でも、社会では不利に働くこともあるんですよね。
それは、分かっています。
分かっていて、最終的には「「人を裏切らない人間」が、幸せを掴む気がするんです。
金十郎の生涯を見ると、明治維新の光と影が見えてきます。
ドラマが描く「時代の犠牲者」
ドラマの司之介は、何度も失敗を繰り返す「懲りない父親」として描かれてます。
でも史実の金十郎は、一度の大きな詐欺被害で人生が変わってしまいました。
別の言い方をすれば、何度も失敗を繰り返したわけじゃない。
ドラマは視聴者に分かりやすくするため、脚色してるんでしょうね。
繰り返すことで、明治時代の士族没落の構造的な問題を浮き彫りにしてるように感じるんです。
個人の資質の問題じゃなく、時代の問題だったんだと。
善良さが 仇となりたる 武士の末
武士道の誠実さが、明治の経済社会では仇になった。
なおじも教師時代、「誠実な生徒ほど、社会で苦労するんじゃないかっ」て、心配したことが確かにあります。
でも、結局は誠実さが信頼を生むんですよね。
金十郎も、家族から深く慕われた。
それが何よりの証拠だと思うんです。
よくある質問(Q&A)
Q1. 稲垣金十郎はどんな詐欺に遭ったのですか?
A. 明治8年(1875年)4月、士族の家禄奉還で得た6年分の家禄を一括受け取りし、事業を始めようとしました。
しかし事業資金を騙し取られ、さらに詐欺の相手から無実の罪まで着せられたんです。
数年後に無罪は証明されましたが、裁判費用で全財産を失い、日々の生活費にも事欠く状態になりました。
ただし、「事業」が具体的にどんな事業だったのかは、書かれていませんでした。
善良な性格ゆえに、詐欺師に狙われやすかったんでしょうね。
孫の小泉一雄は「相手が悪辣極る奴」と記してます。
Q2. 稲垣金十郎はなぜ「善良すぎる侍」と呼ばれたのですか?
A. 金十郎は、誠実で真面目な性格でした。
人を疑わない善良さを持ち、武士道の精神を最後まで貫いた人物です。
孫の小泉一雄は「やや覇気に乏しい善良な人」と評してます。
商売では人の良さがかえって仇となり、詐欺被害に遭ってしまいました。
でも家族からは深く慕われ、養女セツとの親子の情は生涯続きました。
晩年の評価は「覇気には乏しいが、気のいい善人」というものでした。
Q3. ドラマの司之介と史実の金十郎の違いは何ですか?
A. ドラマの司之介は、何度も失敗を繰り返す「懲りない父親」として描かれてます。
ウサギバブル、牛乳屋辞職、97話の小豆相場詐欺と、次々に問題を起こしてます。
一方、史実の金十郎は、一度の大きな詐欺被害で全財産を失いました。
ただし、詐欺事件で何度も失敗を繰り返したわけではありません。
ドラマは視聴者に分かりやすくするため、「懲りない父親」という側面を強調してるんでしょうね。
繰り返すことで、明治時代の士族没落の構造的な問題を描いてるように感じます。
Q4. 稲垣金十郎の晩年はどうだったのですか?
A. 晩年は、養女セツの再婚先である小泉八雲一家と同居しました。
熊本移住の際も、金十郎と妻・トミ、父・万右衛門とその妻も一緒に移住したんです。
財産は失いましたが、善良さと誠実さは最後まで変わりませんでした。
家族から深く慕われ、「覇気には乏しいが、気のいい善人」と評価されてます。
明治33年(1900年)11月19日、東京で胃潰瘍のため亡くなりました。
享年59歳(小泉セツ『思ひ出の記』巻末年譜による)。
【筆者プロフィール】|なおじ
公立小中学校で35年間社会科教師として勤務(茨城県)。
校長11年。退職後は8つのブログを運営し、朝ドラ「ばけばけ」では史実検証記事を毎話執筆中。
教え子からは「歴史が面白くなる先生」と呼ばれていました。
特にNHK朝ドラの時代背景や登場人物のモデル研究、明治時代の士族没落史が専門分野です。