こんにちは、なおじです。
落語には「枕」というものがあります。本題に入る前の雑談ですね。客の心をほぐして、これから始まる話に引き込むための工夫。
『豊臣兄弟』第3話を見ていて、信長の行動がまさにこれ。家臣団が今川の脅威に怯える中、「疲れたから休む」と言って宴を開く。周りは「何やってんだ」とあきれ顔。でもこれ、落語の枕と同じ構造なんです。
本当に言いたいこと、やりたいことは別にある。その前に、周りの反応を見て、空気を読んで、タイミングを計る。信長という男の「たわけ」ぶりが、実は深い戦略だったと分かる回でしたね。

この記事でわかること
- 藤吉郎が小一郎を連れてきた本当の理由と、父の敵・城戸との因縁
- 直の覚悟が小一郎を変えた決定的な一言と、史実との関連性
- 信長が「たわけ」と叱責した真意と、草履の逸話に隠された教育的意図
- 桶狭間前夜の緊張感と、松平元康(後の徳川家康)の初登場シーン
- 第3話で描かれた人間ドラマを元教師の視点で読み解く考察
藤吉郎の嘘と真実|父の敵討ちへの道
清州到着と直の同行
清州に拠点を移した信長のもとへ、小一郎と藤吉郎が到着しました。
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直もついてきたのは意外な展開。
藤吉郎は浅野家に直を預け、寧々との恋を成就させるために小一郎を連れてきたと説明。聞いていて「ほんとかよ」と思った視聴者も多かったのでは。
案の定、もう一つの目的(本命)は別にありました。
城戸という男との出会い
城戸という乱暴者が登場します。
この男、なんと藤吉郎たちの父が作ったお守りを持っていたんです。父の形見を奪った張本人。雑兵からの「もらいもんだ」と言ってのける城戸の傲慢さ。
藤吉郎は戦の混乱に乗じて城戸を討つ計画を小一郎に明かします。
ところが、二人は城戸にコテンパンにやられてしまう。力の差は歴然でした。
教師時代、「敵を知り己を知れば百戦殆うからず」と生徒に教えていましたが、藤吉郎と小一郎はまだ「己」を知らなかったんですね。
若かったんですねぇ。
直の覚悟が光る|小一郎を変えた一言
「今戦わなくて、いつ戦うんじゃ」
今川や城戸という強敵を前に、中村に逃げ帰ろうとする小一郎。その小一郎に、直は言い放ちます。
「あんたは、利口だから、勝てない相手には最初から負けを認めるようになった。そっちの方が傷つかないからね」
これが痛烈。
小一郎が侍になったのは、下剋上に魅せられたからでしょう。それなら今戦わなくて、いつ戦うんじゃ。あんたがお侍になったのは、あんた自身のためでしょう。
直の言葉は、小一郎の本質を見抜いていた。
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直、かっこよすぎます。
小一郎さん、直をこのまま正妻にしてもいいんじゃないですか。
史実の側室との関連性(推測)
さて、気になるのは直が史実のどの側室に対応するのか、という点。
秀吉には正室の寧々のほか、淀殿をはじめ複数の側室がいました。史実の秀長にも側室がいた記録があります。
ドラマでは直が小一郎に深い想いを抱いているように描かれていますね。
今後、直が秀長の側室として描かれる可能性があると、なおじは見ています。史実では秀長の側室について名前が残っていないんです。だから、ドラマならではの創作の余地がある。
ちなみに、教師時代に戦国時代を教えるとき、生徒たちは「側室って何人もいていいの?」とよく驚いていました。当時は家を存続させるための仕組みだったと説明すると、なるほど、という顔になるんですよね。
信長の器量|「たわけ」の真意
草履の逸話と雨の予言
清州に到着した小一郎と藤吉郎。
ここで、おもいがけなく草履の逸話が登場。
藤吉郎が城戸の草履と勘違いして、信長の草履を盗もうとしたんです。
ですが、信長に見つかり、「温めておきました」と言い訳。
ところが信長は、すぐに嘘を見抜いてしまうんです。
「この陽気に温めてなんとする。もしや、盗もうとしたか」
小一郎が「まもなく雨が降ります。濡れてはいけないと思いまして」とフォロー。
それに対して信長は「もし降らなかったらどうする」と問い詰めます。
小一郎は「その時は手前の読みが甘かった(だけ)」と応じます。
このあたりのやり取りで、信長は小一郎の才能を見抜いてますよね。
「和睦」を進言した小一郎
「ご出陣はなされませんので」と藤吉郎。
「殿様なら、きっと勝てまする」とも言います。
信長は「どう勝つのじゃ」とそう言った藤吉郎に問います。
「それは…。」と、言葉に詰まる藤吉郎。
藤吉郎は小一郎に「申し上げよ」と突然、促すんです。このあたりが藤吉郎。
それでも、小一郎は答えました。
「勝つ術などない。だが負けぬことならできる。和睦なされませ」
要は、「降参してしまえばいい」と言うわけです。
さて、信長はどう答えたか。
信長は笑い出し、「たわけが」と怒鳴りました。
信長が小一郎を殴った理由
「和睦をしたら、受け入れられない条件を出してくる。それは敗北だ」
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そりゃ、そうですよね。
生かさず殺さず、どちらかというと死の方に近いところで妥協させられる。
信長は小一郎を殴り、こう言い放ちます。
「そちの言葉は軽すぎる。たとえ負けるとわかっていても、命をかけて戦わなければならないことがある。それが侍だ」
でも、この**「たわけ」という叱責には、信長なりの教育的意図**があったのでしょう。
元教師としては、この場面に共感するものがあります(あ、教師は殴りませんよ)。
生徒が安易な答えを出したとき、あえて厳しく接することで本質に気づかせる。信長のやり方は荒っぽいですが、その根底には相手を成長させたいという思いがあったはず…。
でも、小一郎は「ああそうかい、侍なんぞこっちから願い下げだ」と言って去ってしまいます。
中村に帰ろうとする小一郎…。
桶狭間前夜|動き出す群像劇
藤吉郎のサル芝居
小一郎が去った後、信長は藤吉郎を連れて鉄砲の試射に向かいます。
藤吉郎は信長に鉄砲で自分を狙えと言うんですよ。正気かーい!
発砲と同時に倒れてしまう藤吉郎。信長が駆け寄ると「これぞ、サル芝居でございます」。
その瞬間、雨が降り出す。
小一郎の予言が当たったのです。
信長は「見事に当ておった」とボソッとつぶやきました。
松平元康の活躍
そのころ、今川義元は桶狭間へ向けて軍を進めていました。
お歯黒はしていませんでしたね。蹴鞠を始めたのも、今川義元なりの戦略だったのでしょう。
一方、**松平元康(後の徳川家康)**が、大高城に兵糧を入れることに成功。
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丸根砦、鷲頭砦にも攻めかかります。
元康の初登場シーンは短いですが、後の天下人の片鱗を感じさせる描写でした。史実では、この大高城への兵糧入れが元康の重要な戦功の一つとされています。
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熱田神宮へ走る信長
今川への対処について、織田家の家臣団は意見が割れています。
それをよそに、信長は呵々大笑して「疲れたから休む。だれか酒をもて」と言って奥へ引っ込んでしまいました。
家臣たちはあきれ顔。
でも、この信長の行動には深い意図が隠されていたんですねぇ。誰が信長を見限るか、誰が最後まで付いてくるか。信長なりの人心掌握術だった。
信長とお市の方の会話が印象的でしたよね。
お市の方は、自分が今川の人質になり義元と差し違えると提案。信長は「義元の命と引き換えにするには、お市はもったいない女だ」と。
かっこいいねえ。
さあ、信長が動く時が来ましたよ。
熱田神宮に走り出す直前の信長。そこに武装した小一郎が登場。
おお、今日の見せ場ですね。
信長の叱責が、そして直の言葉が、小一郎を動かした!
第4回は、いよいよ桶狭間(田楽狭間)の戦いですね!
Q&Aで振り返る豊臣兄弟第3話
Q1:藤吉郎の嘘はどこまで本当なのか?
小一郎を連れてきた理由を「寧々との恋を成就させるため」と説明しましたが、実際は父の敵討ちの目的もあったのです。そして、寧々への想いも本物。複数の動機が重なり合っているのが藤吉郎らしい人間性です。
Q2:信長が宴を開いたのはなぜ?
家臣団が今川の脅威に怯える中、あえて宴を開いたのは、誰が信長を見限るかを見極めるためだったと考えられます。信長なりの人心掌握術であり、戦前の心理戦だったのでしょう。
Q3:直は史実のどの側室に該当するのか?
Q3:直は史実のどの側室に該当するのか?
史実では秀長に正室・慈雲院と側室・光秀尼がいた記録がありますが、いずれも法名のみで本名は残っていません。ドラマに登場する「直」は史料に名前が見当たらず、完全な創作キャラクターと考えられます。
今後、直が秀長の側室として描かれる可能性もありますが、史実の光秀尼とは出自が異なるため、ドラマならではのオリジナル展開になりそうです。
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筆者紹介|なおじ
元社会科教師として35年間教壇に立ち、現在は8つのブログでドラマ・芸能・政治・歴史・スポーツ・旅・学び・書評を執筆。
ドラマ記事では「時代背景」や「心の揺れ」をゆっくり言語化するスタイルで、教師経験を活かした歴史解説が持ち味です。