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「らんまん」大窪昭三郎のモデル大久保三郎、徳永助教授のモデル松村任三とは、どんな人

「らんまん」の朝ドラに登場する大窪昭三郎は、東京大学植物学教室の助教授。田邊彰久教授のもとで働いている。演じるのは今野浩喜さん。大窪昭三郎のモデルは、大久保三郎という植物学者だ。大久保三郎は、明治維新後に東京府知事・子爵になった大久保一翁の息子で、アメリカ合衆国のミシガン大学に留学し、植物学を学んだ人物。その後、イギリスに留学し、内務省に勤務。その後は、東京大学御用掛小石川植物園の植物取調を務め、伊豆諸島、小笠原諸島の植物の研究を行った。
徳永助教授のモデルは、松村任三矢田部良吉教授の後の東京帝国大学理学部植物学教室教授。また、小石川植物園の初代園長。ソメイヨシノやワサビなど多くの植物に学名を付けた。牧野富太郎と不仲になり、牧野から公使の職を奪う画策を数度にわたって行った。茨城県高萩市の出身。

目次

万太郎と新種を発見した大窪昭三郎のモデル大久保三郎は、富太郎博士とどうかかわったか

「らんまん」では田邊教授から、「自分のものになれ」と言われた万太郎。
つまり、田邊教授のために手足となって働き、手柄は全て「俺によこせ」と田邊教授は言っている。
万太郎は、当然それを断る。

NHKより

だが、そうなると、何の身分もない万太郎が新種を発表する手段がなくなる。
万太郎は、大いに悩むが、自分で図鑑を発刊することを思いつく。

そして、万太郎のこの考えを聞き、寿衛が意外な行動に出た。
なんと、「高価ではあるが、図鑑を印刷するために必要な石版印刷機を購入してしまおう。」というのだ。

劇中の寿衛さんは、明るく大胆だ。

対して今野浩喜(こんのひろき)さん演じる大窪昭三郎の方は、田邊教授に、仕事の手際の悪さを指摘され、挙げ句の果てに人格否定までされてしまう。
けちょんけちょん。
こういう役をやらせると今野さんは、うまい。

「これじゃあ、さすがの腰巾着も一念発起する」と、大方の「らんまん」視聴者も思ったことだろう。
案の定、大窪昭三郎は一念発起し、万太郎と共同研究の道を選ぶ。
いわば、田邊教授に対する「大窪の乱」の勃発だ。

NHKより

大窪は、決意をもって万太郎の家を訪れた。
万太郎と共同研究をするには、牧野を切り捨てようとする田邊を裏切ることになる。

覚悟を決めている大窪は、プライドを捨て万太郎に頭を下げ、共同研究を願い出たのだった。
この場面、今野さん演じる大窪の名演技、さらにそれに答える万太郎の名ゼリフが光った。

「らんまん」74話に描かれた大窪昭三郎

お前は、ただ草花が好きだと笑った。そんな奴は、一人もいなかった。田邊教授でさえ留学先で新しい学問だからということで植物学を選んだだけだ。新しい学問なら世に出られる。みんな、それだけだった。だが、お前が現れて、皆が気付き始めた。このままじゃだれもお前に勝てない。だから、(本気で植物学を)好きになりたい。お前が、植物に抱く心を。お前が何を見て、どこが好きなのか、傍らにいて知りたい。

大窪さん、それは違いますき。
大窪さんの、マメヅタランの原稿、大窪さんがマメヅタランを好きじゃないとしたら、どういてあんな素敵な原稿が書けるがですか。
マメヅタランは、生きる場所を懸命に探して、岩の上に着生する。そこに心を動かされたんでしょう。
徳永助教授は、植物が出てくる和歌がお好き。
田邊教授は、シダ植物がお好き。藤丸はスッポンタケが大好き、波多野はわしらには見えん植物のもっと奥を見ようとしちょります。
どうして、ここへ来たかより、それでもみんな今、ここにおって、今日も植物が生きゆう、それだけでいいがじゃと思います。

大窪さん、ぜひわしと一緒に研究していただけないでしょうか。

恥を忍んで、頭を下げて共同研究を願おうとしていた大窪に対し、万太郎は、自らも頭を下げて大窪に共同研究を願い出る形にした。

いいのか。
わしの方が・・・

と大窪も、深々と頭を下げた。

共同研究の道を選んだ万太郎と大窪は、植物学教室の徳永助教授に報告する。
「ダメだ」と言うかと思ったが、意外なことに意地悪だった徳永は、好意的な対応を見せる。

大窪は、植物学教室の人間だ。
研究成果は、植物学教室の実績ともなる。

承知しちょります。
こちらは標本を見せてもらわんと、研究が出来ません。
お力添えは、ありがたいです。
それにわしは、自分が名付け親になって、世に出せららそれで満足ですき。

分かった。
二人とも、報告はちゃんとするように。

NHKより

この後、二人は寝食を忘れ共同研究に打ち込んだ。
そしてついに、万太郎が土佐で見つけてきた植物が、新種であることを証明することに成功する。

その研究成果を、寿衛の裁量で購入した石版印刷機を遣って製本した。
万太郎と大窪の見つけた植物は、学名を「セリゴヌム・ヤポニクム オオクボ エト マキノ」、和名を「ヤマトグサ」として発表されたのだった。

大窪昭三郎のモデル大久保三郎とはどのような人物か

NHKより

大窪のモデルは、大久保三郎。
大久保は、明治維新後の子爵大久保一翁の息子。

大久保三郎は、アメリカとイギリスに留学し、東京帝国大学で矢田部良吉教授のもとで働いた。
牧野富太郎とともに「植物学雑誌」を刊行し、日本人が発見した新種に日本人が学名を付けた最初の例を作った。
(「ヤマトグサ」【Theligonum japonica Okubo et Makino】)

大久保は、矢田絵良吉教授が東京大学を去った後も植物学者として活動したが、その後は研究者としてより、教育者としての活動が中心となった。

大正3年(1914年)に死去している。

徳永助教授

「らんまん」中で、男を上げる徳永助教授

史実では、矢田部良吉教授は失脚し東京大学を追われてしまう。
その後に教授になったのは、松村任三(まつむらじんぞう)。茨城の人だ。

「らんまん」では、田中哲司さん演じる徳永助教授にあたる。

逆です、教授。情けを受けたのはこちらです。牧野はこれが植物学教室の実績になってもいいと譲ってくれたのです。
~わが植物学教室は、何の実績も出せないでいます。

そんなことは無い。私のトガクシソウが・・・。

花は咲かなかった。今私たちがすべきことは、牧野に礼を言うことです。

………。

言葉を失い、なにも言い返せない田邊教授。

NHKより

勧善懲悪?
放送終了後、ネット上でも、「徳永は理想の上司」などの声が多く上げられている。
一方、田邊教授は、完全な悪者役におとしめられている。

だが、史実はそうではない。
牧野富太郎博士は、矢田部良吉教授への恩義をとても感じている。
このような品性下劣な人物ではない。

一方、徳永助教授のモデル松村任三教授は、やがて牧野富太郎を帝国大学から追い出す人物。
このあたりの史実を「らんまん」では、どう描くのか逆に楽しみ。

矢田部教授をここまで悪役にしたのだから、徳永助教授は、このまま「よい人」として描かれるのだろうか。

帝国大学の助手として富太郎を迎えたのは、松村任三教授

やがて富太郎を帝国大学から追い出すのは、松村任三教授だが、はじめから人間関係が悪かった訳ではない。

矢田部教授から帝国大学への出入りを禁じられ、実家の岸屋を和之助と猶に譲り、金銭的な窮しているときに、3年ぶりに帝国大学の助手として雇い入れて帝国大学に戻してくれたのは、松村任三教授だった。

新撰日本植物図説

大学の植物学教室の仕事として「大日本植物志」の編さんと同時に、富太郎は新撰日本植物図説の発刊をした。なぜ、同時期に「植物の絵を中心とした書物をつくろうとしたのか」

それは、下記にあるように「家計の助けになれば」と、考えたようだ。

牧野は「大日本植物志」の編さんとほぼ並行して、「新撰日本植物図説」の刊行にも着手する。
(発刊の)その理由は、自叙伝に再録した序に記されてある。つまり、日本の植物誌を完成することが自分の素志であり大学で企画した大事業を成し遂げることが自分の一生の任務と心得ているが、教育上の目的と困窮を極める家計の補いのためからこの書を発刊することにしたという。しかしながら、牧野の生活を救うことにはならなかったと自叙伝に書かれる。

高知新聞より

結果は実は大失敗。全く売れなかった。
家計の助けどころか、逆に借金が膨らむことになってしまう。

NHKより「うれしそうに描かれているが、これでまた借金が増えた」

大日本植物志

同時に刊行する「大日本植物志」については、「らんまん」で描かれたとおり松村任三教授から編集に携わるよう命じられている。

富太郎は、これまで「日本植物志図編」を実費で刊行してきた。しかし、資金が続かず第1巻の第11集を出したところで、中断した。

また、富太郎の「日本植物志図編」と同じ意図の雑誌を、矢田部良吉教授が刊行している。さらに、教授は「日本植物遍」を刊行しようとしていたが、途中で失職してしまう。

そこで、後を継いだ松村任三教授によって、「大日本植物志」として新たに刊行する計画となった。
「らんまん」を見て、「徳永先生すてき」「徳永先生、上司の鏡」などの声があるのは分かっているが、史実はそこまで劇的ではない。

そもそも、「大日本植物志」編さんを決めた時期は、矢田部教授はすでに大学にいない。
「大日本植物志」はあくまで大学主導で編纂されている。
松村任三教授も計算ずくであり打算もあって、牧野富太郎を松村教授が自ら編さん事業に引き入れたのが史実。

ということで、大久保三郎(「らんまん」の大窪昭三郎)は、「大日本植物志」の編纂逸話には出てこない。
残念。

だが、牧野富太郎と大久保三郎は、共同研究でヤマトグサに共同で学名・和名をつけたのは史実だ。
この点では、「らんまん」にあるような二人の共同研究場面があっただろう。

NHKより

ところで、「らんまん」のストーリーを書いた人が、万太郎や大窪、富永を上手に描いているので感心する。
暗い部分も多い牧野富太郎の一生を、明るく活力に満ちて描いている。

かわいそうなのは、大悪人に描かれている田邊教授のモデル、史実の矢田部良吉教授だ…。
ここまで悪人じゃ無いと思う。

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