東京電力エナジーパートナーが、契約者らから理不尽な要求や嫌がらせを受けるカスタマーハラスメント(カスハラ)への対応方針をまとめたとのこと。
東京電力へのカスハラ電話は年間656万以上になっているらしい。
怒鳴る、わめく、脅す、中にはセクハラにあたる内容もあるのだとか。
これでは、社員も心を病んでしまうだろう。
さて、東京電力は、どのような対応方針をまとめたのだろうか。
カスハラ:どんな内容か

東電には、全国に20か所以上のカスタマーセンターがある。
そこに寄せられた苦情としては、今回の補助金切れの電気料金の値上がりに対し、

「おまえの所に乗り込んでやる」
とすごんだり、



「会社はもうかっているくせに、ふざけるな」
と叫んだりする場合もある。
また、女子社員が対応した場合には、



「お前の下着の色を教えろ」
などと聞いてくるセクハラ行為もあったのだとか。
さらに、『人格否定』、『差別的発言』、



『SNSへ投稿してやるぞ』
とか、



『〇〇についてテレビ局に電話して暴露してやる』
と脅しをかけてくる事例もあるとか。



『お前は、誰だ。何と言う名前だ。どこに住んでいるんだ。』
など、従業員の個人情報の開示要求してきたりもするのだという。


お客様は、神様ではないでしょう
1970年代の大阪万博の時、『お客様は神様です。』という言葉が流行った。
心優しい日本人は、本当に『お客様を神様』のように扱う文化を確立していったわけ。
商品の包装も『これでもか』と言うくらい丁寧…。
『客の買い物袋を抱えて、出口まで見送る』、というて行為も日常的に見られる。
これは悪いことではない。
日本の誇るべき文化の一つだとは思う。
だが、客側が(本当は一部の人間だけなのだが)
『自分は客だから、神様だ。だから、何を言っても何をやってもゆるされるべき』と思い込んでしまっているらしい。


東電の対応策
東電は、カスタマーサービスにかかってきた電話で、『カスハラ(カスタマーハラスメント)に当てはまる内容があった場合、電話の応対を中断したり、警察に通報したりするといった方策も明記したガイドラインを作成した。
東電は、ガイドラインを基に内部の対応マニュアルも作成しているという。
まとめ
このところ、多くの企業や役所・病院などでカスハラ対応マニュアルが作成されている。
東京電力の基本方針(ガイドライン)の要点は、以下。
- カスタマーハラスメント発生時に迅速かつ適切な判断・対応ができるよう社内サポート体制確立
- カスタマーハラスメントと判断した場合、説明の上対応中断
- 悪質と判断した場合、警察・弁護士などと連携(適切な対処)
- カスタマーハラスメントの具体例の明確化
これらを、事前に『明確に客に事前に示しておく』というカスハラ予防策は有効だろう。
これから、社内にカスハラ対策ガイドライン作成・マニュアル作成を目指す場合の参考になる。




カスハラ対策の法的枠組みと最新動向
2025年3月11日、政府は顧客による従業員への著しい迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」への対策を企業に義務付ける労働施策総合推進法など関連法の改正案を閣議決定しました。
この改正により、企業は対策マニュアルの策定や相談窓口の設置などを求められ、従業員が心身共に安心して働ける環境整備が義務となります。
厚生労働省の審議会では、カスハラを「顧客や取引先、施設の利用者などによる、社会通念上相当な範囲を超えた言動で、労働者の就業環境が害される」行為と定義しています。
企業には消費者の権利にも配慮しつつ、従業員の保護が求められることになります。
東京都カスハラ防止条例の施行
2025年4月1日から、東京都では全国初となるカスタマーハラスメント防止条例が施行されます。
この条例は事業者に対し、カスタマーハラスメント防止のための対策を講じるよう義務付けており、以下の内容が盛り込まれています:
- カスタマーハラスメント防止の目的・理念
- カスタマーハラスメントの禁止
- 事業者の責務3
この条例は全国初であり、今後他の自治体でも同様の条例が施行される可能性があるため、その影響が注目されています。
カスハラの具体的な行為類型
東京都のガイドラインでは、カスタマーハラスメントの代表的な行為類型として以下の例を挙げています:
- 要求内容が妥当性を欠く行為
- 全く欠陥がない商品を新しい商品に交換するよう要求する
- あらかじめ提示していたサービスが提供されたにもかかわらず、再度同じサービスを提供し直すよう要求する
- 就業者が販売した商品とは全く関係のない私物の故障等について賠償を要求する
- 要求を実現するための手段・態様が違法または社会通念上不相当である行為
- 就業者への身体的な攻撃(物を投げる、唾を吐く、殴る、蹴るなど)
- 就業者への精神的な攻撃(脅す、大声で責め立てる、人格を否定する、名誉を傷つけるなど)
企業に求められる対応と準備
2025年度中には企業におけるカスハラ防止措置義務化を盛り込んだ労働施策総合推進法改正案の国会提出が予定されており、2026年度にも施行される見込みです。
企業には以下のような対応が求められます:
- 対応方針の明確化と周知:カスハラに対する会社の方針を明確にし、従業員や顧客に周知する
- 相談窓口の設置:従業員がカスハラ被害を相談できる窓口を設置し、適切に対応する体制を整える
- 従業員への研修・演習の実施:カスハラに遭遇した場合の対応方法について、継続的な研修や演習を実施する
- 対応マニュアルの整備:「ネットにさらすぞ」などと言われた場合の具体的な想定問答集などを含む対応マニュアルを整備する
カスハラの実態と社会的背景
厚生労働省が2024年5月に公表した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間で多くのハラスメント相談件数が減少傾向にある中、唯一「顧客等からの著しい迷惑行為」についてのみ増加傾向が見られています。
サービス業などの産業別労働組合「UAゼンセン」が実施した調査では、約3万3千人のうち46.8%が「直近2年以内でカスハラ被害にあった」と回答しています。
具体的な行為としては「暴言」が39.8%で最多、次いで「威嚇・脅迫」14.7%、「同じ内容を繰り返すクレーム」13.8%となっています。
背景として日本社会特有の「顧客第一主義」が指摘されており、法改正がこの状況改善への布石となる可能性があります。
かつて「お客様は神様」という意識で顧客対応を行っていた企業文化が見直され、顧客と従業員は対等な関係であるという認識が広まりつつあります。
企業の実務的対応のポイント
法改正に備え、企業は以下のポイントに注意して対応を進めることが重要です:
- カスハラの定義と具体例の明確化:社内で何がカスハラに当たるのかを明確にし、従業員に周知する
- 正当なクレームとカスハラの区別:品質やサービス向上につながる正当な要求とカスハラをどう区別するかを検討する
- 対応フローの整備:カスハラ発生時の対応手順を明確にし、従業員が迅速かつ適切に対応できるようにする
- 従業員保護の仕組み構築:名札の廃止や個人情報保護など、従業員のプライバシーを守る対策を講じる
これらの対策は、従業員の離職防止や顧客との健全な関係構築につながり、企業の持続的な発展に寄与するものと考えられます。
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