『田沼意次 汚名を着せられた改革者』は、江戸時代の老中・田沼意次を再評価する一冊です。
著者の安藤優一郎氏は、膨大な史料をもとに、田沼意次が「賄賂政治家」として悪評を受けた背景と、その政策の革新性を丁寧に分析しています。
本書では、田沼意次が推進した重商主義政策（株仲間制度や専売制）、貨幣改革、蝦夷地開発や印旛沼干拓などの新規事業が詳述されています。
これらの施策は幕府財政の改善に一定の成果を上げましたが、天明の大飢饉や浅間山噴火などの天災が改革を頓挫させる一因となりました。
また、田沼時代には文化も大きく発展し、出版業界で活躍した蔦屋重三郎など、多くの文化人が登場しました。
特に注目すべきは、田沼意次が市場経済への転換を目指し、現代的な視点でも評価される政策を実行した点です。
しかし、家臣団の統制不足や賄賂文化の助長といった課題もあり、「賄賂政治家」という悪評が定着する結果となりました。
本書は、田沼意次を単なる「悪政」の象徴としてではなく、大胆な改革者として再評価する内容となっています。
読後には、歴史を見る多面的な視点や、公平な評価の重要性を改めて感じさせられるでしょう。
この書評では、本書の内容を掘り下げます。
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