ゼレンスキー大統領が、習近平氏と会いたいと発表した。また、24日には中国側から「和平案」が発表された。
ゼレンスキー氏はなぜ「中国と会いたい」と述べ、中国側からはどのような「和平案」が発表されたのか。それらをどう評価すればよいだろうか。
ゼレンスキー氏 習近平氏と 会談予定と発表
進む武器供与
ウクライナ侵攻から1年。戦争は長期化の様相を呈してきた。そんな中、西側諸国からは、戦車供与など重火器の供与が進み出している。
ポーランドのモラビエツキ首相はウクライナを訪問し、ドイツ製の主力戦車「レオパルト2」4両を保有国として初めて引き渡しました。ポーランド側は今後、さらに多くの戦車を供与するとして、軍事支援の継続を改めて強調しました。
YBSワイドニュース
また、
ドイツ、当初予定よりも多い戦車「レオパルト2」を供給へ
BLOOMBERGより
ドイツは当初計画したよりも4両多い18両の「レオパルト2」をウクライナに供与すると、同国国防省が発表した。これによりポルトガル、スウェーデンの供給分と合わせ、ウクライナが大隊を編成することが可能になると説明した。
とあり、戦車による大隊編成が可能な数にまで達した。
ゼレンスキー大統領 習近平国家主席との会談 示唆
そのような中、ゼレンスキー大統領は、中国の習近平国家主席に会談を望んでいる、と伝えたことが明らかになった。ロイター通信は以下のように伝えている。
ウクライナのゼレンスキー大統領は23日、中国とウクライナの代表による会合の開催が「望ましい」と述べ、ウクライナ政府がこうした意向をすでに伝えていることを明らかにした。
[キ-ウ 23日 ロイター]
また、ゼレンスキー氏は首都キーウ(キエフ)を訪問しているスペインのサンチェス首相との記者会見で、中国の習近平国家主席との会談の可能性に関する質問に対し「中国との会合を希望する。こうした会合は現在、ウクライナの国益にかなう」と述べたという。
中国の王毅氏 プーチン大統領 と会談
当の中国は、どう行動しているか。
中国外交担当トップの王毅氏はロシアを訪問しプーチン大統領と会談している。この会談で、プーチン氏は『中ロ関係が「新境地」に達したと指摘』し、習近平国家主席の訪ロに期待を示したという。
中国の動きを、アメリカはどうみているか。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は『習主席が数カ月以内にロシアを訪問しプーチン大統領と会談する』準備を進めていると報じている。
ブリンケン米国務長官は、
国連安全保障理事会で、ウクライナが領土の割譲を強いられるような、小ばかにした和平の呼び掛けのわなに国際社会は引っかかるべきではないと主張。いかなる和平案もロシアに「一息つかせ、再軍備と再度の戦争」を可能にするものであってはならないと訴えた。
○小ばかにした和平の呼びかけ
きつい表現ながら、米国はじめ西側諸国の、中国やロシアに対する評価がこの言葉に表れていると感じる。
中国側の反論
中国が、ロシアに「武器売却をしない」と、表明したことは評価したい。だが、問題は、かの国は、「飯を食うように平気で嘘をつく」ことを常識としている国だという点だ。
本当に自分たちの言葉を守るのか、注視していきたい。
ゼレンスキー氏の反応
ゼレンスキー大統領は中国がウクライナとともに「平和」の側に立つことを望んでいると述べ、ウクライナへの対応を始めたとして中国を称賛した。中国は領土保全の原則を受け入れていると楽観も示した。
「中国はロシアに兵器を供給しないと確信している。自分にとってこれは重要で、一番のポイントだ」とゼレンスキー氏は発言。「これを防ぐため、自分はあらゆることをする」とも語った。
中国の習近平国家主席と会談する計画だと述べた。
ゼレンスキー氏が、なぜ中国との会談を望んでいるのかの理由は分かる。
「中国側からロシアへの武器供与」を阻止することが一番のねらいだろう。
中国の示す「和平案」
日経新聞 2月24日より
- 「ウクライナ危機の政治解決に関する中国の立場」と題する文章は合計12項目からなる。強調したのは「戦闘の停止」だ。「各当事者は理性を維持し火に油をそそぐことをせず、ウクライナ危機のさらなる悪化を回避すべきだ」と指摘した。
- ロシアとウクライナの「できるだけ早い直接対話」を呼びかけた。国際社会が和平に向けて協力すべきだと指摘し、中国も関与を深める構えをみせた。
- 核兵器の使用や原子力発電所への攻撃に反対を表明した。生物化学兵器の研究開発や使用もすべきではないと主張した。
- ロシアへの制裁に反対する考えを示した。「一方的な制裁や極限の圧力は問題を解決できないばかりか、新たな問題を生み出す」と言及した。米欧日のロシア制裁を批判した。
- ウクライナ情勢の終局を見据えて「戦後の復興を推進する」と提案した。国際社会が戦後復興を支援する措置をとるべきだと訴えたうえで「中国は協力し、建設的な役割を果たす」とした。
日経新聞は、このように内容を報じた。読んでいて、つっこみどころ満載だが、とりあえず、
核兵器の使用や原子力発電所への攻撃に反対を表明した。生物化学兵器の研究開発や使用もすべきではないと主張した。
と言明したことは評価できる。
この表明については、今後も十分に注視し、履行を迫っていきたい。
中国「和平案」に対する識者の反応
岩間陽子政策研究大学院大学 政策研究科 教授
- 和平案というほどの具体性はない。
- 一般的な原則の列挙
- 中国側はウクライナ戦争を国家間戦争と扱っている。
- 核不使用、原発の安全を訴えたのは重要。言質を取っていくべき。
- 武器供与に一言も触れていないのは気になる。
川島真東京大学大学院総合文化研究科 教授
- 中国の立場を繰り返し述べ、部分的に新たに立場を表明したのみ。
- 「核兵器の使用への反対」なども、実は2022年11月の日中首脳会談において「ロシアがウクライナにおいて核兵器の使用を示唆していることは極めて憂慮すべき事態であり、両首脳は核兵器を使用してはならず、核戦争を行ってはならないとの見解で一致」https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/c_m1/cn/page1_001413.html
- 王毅を中心とする新たな外交体制が形成されるタイミングにしようとしている。
植木安弘上智大学グローバル・スタディーズ研究科 教授
- 中国が核使用に反対の表明をしたことにより、ロシアによる「核の恫喝」レベルは下がることになった。
- 対話への道は、ウクライナがかなりの程度領土を取り返すまでは難しい
- ウクライナも中国の関与に関心を持っているとされており、戦場が有利になった時点でロシアに唯一影響力のある中国を外交的に使う機会が出てくる。
- 戦後復興などで自国の一帯一路構想にウクライナを引き込んでいくことも念頭にある。
- 中国は噂されるロシアへの武器供与にも慎重になる。
識者の先生方は、このように分析されている。
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