楽しい,明るい,美しい学校について
懇談の席で,○○校長先生より,「楽しい,明るい,美しい学校」についての話がありました。そこで,本日の授業を例として,楽しさを演出する教師の支援としての
- 「教材の工夫の重要性」,
- 明るい学級を実現するための,「人間関係づくりの重要性」
について話させていただきます。
クラスの友達への「信頼感・安心感」を育てる
クラスの仲間への信頼感や安心感が,育っていることが,各クラスの雰囲気から感じられました。
学校における教育の土台として,人への安心感が育っていることが大切です。受容的な雰囲気の中にこそ,楽しく,明るい学校が実現できます。(平成13年6月2日)
総合的な学習の時間の課題をどのようにもたせればよいのか
安心感の育成が教育の土台となる
教室で自由にものが言える雰囲気があること。
友達や先生に対する安心感が成立しているかどうかが,教育の土台となります。
総合的な学習で「安心感を育てる」ために、「課題から問題」へ
課題を教師が課した題ととらえるならば,課題が課題のままでは,児童の興味・関心は深まりません。教師が体験的活動を仕組むなどして,子供にとっての切実な問題意識を育てなければならないのです。
切実な問題意識を育てるためのポイントとして,
① 話合い活動を適切に位置付け,問題意識を全員で共有できるようにする。
② 協力して体験できる場を設定する。
③ 自尊感情を刺激する,
ことを意識する必要があります。
授業の中に育てたい子を位置付ける
総合的な学習では、教師が育てたい子を授業の中に位置付ける、というテクニックがあります。やや高等テクニックです。ある子を授業の中に位置付けるためには、その子の特性「良い点」「現在不足している点」を教師が事前につかんでおく必要があります。ただしある程度のレベルの把握で大丈夫です。
その子が普段取り組んでいること。興味を持っていること。疑問に思っていること。みんなで取り組むことができそうなその子の切実な課題、などです。それらの「思い」を授業の中に位置付けることができれば、その子だけでなく、その子を取り巻く子らが成長していきます。
富山に堀川小学校という学校があります。その学校の5年生の「プレゼントを作ろう」という家庭の学習を参観しました。教師が「誰にどんなプレゼントを作りたいですか」と発問します。
長い沈黙、おそらく5分程度の大沈黙の後、参観者がそろそろざわついてきた時あたりに、ある女の子が、「私は、おじさんに、ギターのピックケースをつくってプレゼントしたいです」と発表しました。
「どうして、おじさんにピックケースをプレゼントしたいの」と、ある子がつぶやきます。
教師はすかさずその子のつぶやきを全体へと位置付けます。
「○○さん、▲▲さんが『どうして』って、聞いてるよ」
と、教師はその子に問いかけたのです。
その女の子が、ボソボソと話し始めます。
「私は、おじさんが小さい頃から大好きなの。小さい頃はよくケーキとか買ってくれたり、一緒に遊びに連れて行ってくれたのね。でも、一番好きなのは、おじさんがギターを弾いて一緒に歌ってくれたことなの。おじさんはギタリストっていう仕事をしていて、とてもギターが上手なの。」
「へー」とか、「すごい」とかの周りの声が聞こえます。
「でも、おじさんは今病気なの。もう半年も入院しています。」
(エっという声。そしてざわつき)
「私は、おじさんに早く良くなってほしい。でも頑張ってって、なかなか言えない。」「・・・。」「だから私は、ピックケースをつくっておじさんにプレゼントしたいの。」
この子のこの発言を聞いた後、クラスの子らはこの子の発言に触発された自分の思いを語っていきます。
『きっとみんないいプレゼントを作ることができるだろうな』
おそらく参観した者すべてがそう感じたことでしょう。
「その子のその思い」を、授業に位置付けた教師の見事さ。単なる「プレゼントを作ろう」という課題は、ある子の思いを授業に位置づけたことで、切実な問題意識に裏付けられた「問題」に変化したのです。
教師から子供に「課する題」を、子どもの思いを位置付けることで、一人一人が「自分のこと」と捉えられる「問題」とする教師のテクニック。
暫くその場を動けませんでした。e
安心感を育むための、先生(あなた)の仕掛けは何ですか
先生は、自分のクラスの子供たちが、日々の学校生活(学習時間を含めて)の中で、お互いを認め合える時間をどのように設定していますか。
ある学校のあるクラスにお邪魔しました。(このクラスも小学校5年生でした。)
そのクラスは、全員で30名弱でした。
そのクラスには普段皆から「いじめっ子」と呼ばれているA君がいました。
そのクラスの帰りの会の時間です。
先生が、「今日のシャワーはA君です。では、○○君からおねがいします。」すると、子どもたちは、A君の今日一日の生活の中で「いいな」と思った点をポンポンポンポンと、短い言葉でA君の方を向いて語りかけていきます。まるで褒め言葉のシャワーです。
皆の言葉が終わったときに、A君を見ると目に涙をためていました。
子どもの安心感・自己有用感を育てる本当に良い実践だと思いました。
さて、先生は自分のクラスでどのような手立てをしているでしょうか。もし、まだ何もしていないのなら、そういう実践をしている教師がいる。自分も何か出来ないかと、「意識する」ことから初めてみませんか。(平成13年6月29日)
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