
農相の「おいしい」発言で済まない深刻な課題がある。
2025年5月29日、小泉進次郎農相が4年前の古い備蓄米を試食し「どれもおいしい」と評価しました。
しかし、この試食会の背景には日本のコメ政策が抱える重大な問題が隠されています。
なぜ今このタイミングで開催されたのか、随意契約への転換は適切なのか、そして備蓄米100万トンの有効活用は本当に進んでいるのか。
一見すると単純な品質確認イベントに見えるこの試食会から、日本の食料安全保障とコメ流通の構造的課題が浮き彫りになります。
小泉農相の発信力が真の農政改革につながるのか、詳しく解説していきます。
**この記事で分かること:**
・📌 小泉進次郎農相の試食会は政治的リカバリー戦略であること
・🍚 備蓄米の品質管理は厳格だが古米特有の課題も存在すること
・🏪 随意契約への転換は中小小売業者参入促進を目指すが課題も多いこと
・🛒 大手小売業の備蓄米食用転換が進み、食品ロス削減に貢献していること
・📢 小泉農相の発信力は高いが、真の農政改革には課題が残ること
・❓ 読者の疑問であるコメ政策の今後の展開や透明性の問題に答えること
1. 小泉農相の備蓄米試食会の真意
江藤前農相の失言によるイメージ悪化を受け、急遽開催された政治的リカバリー戦略
1-1. 試食会開催の政治的背景
今回の試食会は小泉進次郎農相の提案により急遽企画されました。
タイミングが注目される理由は、江藤拓前農相が5月18日に
「コメは買ったことがない。支援者の方々がたくさんコメをくださるので、まさに売るほどあります」と発言し、政権にとって大きなダメージとなったからです。
コメ価格高騰に悩む国民感情を逆撫でしたこの発言は、与野党から「不適切」との批判が相次ぎました。
江藤氏は後に「撤回というより修正する」と釈明したものの、既に政権への不信は高まっていました。
30日に再開される随意契約による21年産備蓄米の売り渡しを前に、古い備蓄米への消費者の懸念を払拭する狙いが明確です。
試食したのは茨城県産「にじのきらめき」で、2021年から2024年産まで4つの年産を同じ研ぎ方・炊き方で調理したおにぎり。
科学的な比較を演出した点も戦略的です。
1-2. 「どれもおいしい」発言の背景と限界
小泉農相は「率直にどれを食べてもおいしい」と述べましたが、興味深いのは21年産について「少し硬い」「ちょっと硬い」との率直な感想も同時に語ったことです。
発言内容 | 詳細 | 出典 |
---|---|---|
「率直にどれを食べてもおいしい」 | 全体評価 | 共同通信報道 |
「少し硬い」「ちょっと硬い」 | 21年産への率直な感想 | 時事通信映像、読売新聞、毎日新聞 |
「(味の違いは)そこまで感じなかった」 | 古米への評価 | 共同通信報道 |
「個人的に硬めのご飯が好み」 | フォロー発言 | 毎日新聞報道 |
毎日新聞によると、この試食会は「小泉氏の発案で急きょ企画された」もので、
小泉氏は「(古米は)味や品質に指摘があるのは事実」と認めつつも、品質管理の適切さをアピールしました。
一方で、この試食会には賛否両論の声も。
党内では情報発信力への評価がある反面、「根回しが十分ではない場面も目につく」との懸念も示されています。
フジテレビの遠藤玲子キャスターも同試食会に参加し
「見た目が全く変わらない」「お味はおいしかった」とレポートしており、メディアを巻き込んだ印象改善戦略の側面も見て取れます。
ただし、根本的なコメ価格対策としての効果は限定的で、政治的パフォーマンスとの批判も根強く残っているのが現実です。
2. 21年産備蓄米の品質管理体制
15度以下の低温管理で品質は保たれるが、専門家の間でも古米への評価は分かれる現実
2-1. 全国300箇所の保管システム実態
政府は約91万トン(2024年6月末現在)の備蓄米を全国約300箇所で保管しており、
栃木県内の事業者では4棟の倉庫で約2800トンを管理するなど、リスク分散が図られています。
倉庫内では1年を通じて温度15度以下、湿度60~65%に維持され、防虫対策やネズミの侵入防止板も設置されています。
担当者は「温度や湿度は毎日確認して記録している。ネズミの侵入にも気をつけている」と徹底した管理体制を説明します。
小泉農相が強調した「低温倉庫の中でしっかりと品質管理をやっている」という主張は、こうした厳格な管理体制に基づいています。
コメは30キロ入り袋や約1トンのフレコンバッグで高さ4~5メートルまで積み上げられ、年産や品種、等級が記載された検査証明書も袋ごとに管理されています。
2-2. 古米の品質変化への専門家評価
品質管理が適切でも、専門家の間では古米への評価が分かれています。
お米マイスターの澁谷梨絵氏は備蓄米ブレンド米について「時間が経つとやや硬くなりますが、お米自体のレベルは高く、良い品種がブレンドされている」とし、「お値段以上のクオリティー」と評価しました。
一方、コメ流通評論家からは「(古古古米は新米と)えげつないぐらい違うと思います」「臭いという部分で美味しくないと感じる方は絶対いらっしゃる」との厳しい意見も出ています。
実際のメディア試食では、日本テレビの鈴江キャスターが21年産について
「古米臭ではないんですが、ご飯を炊きあげた直後に香るようなおコメの香りを感じます」「甘みの強さは若干弱い」と評価する一方、
「普段おコメを食べる意味では、遜色ないおコメの味」とも述べています。
評価項目 | 新米(2024年産) | 古米(21年産) | 出典 |
---|---|---|---|
食味特徴 | もっちりとした食感 | やや硬め、水分少なめ | 時事通信映像、読売新聞、毎日新聞報道 |
香り | 新鮮な香り | 炊き上げ時の香りあり | 日本テレビ報道 |
甘み | しっかりとした甘み | 若干弱い | 日本テレビ報道 |
総合評価 | – | 「遜色ない味」「お値段以上」 | TBS報道、澁谷梨絵氏評価 |
興味深いのは、TBSの山形キャスターがブラインドテストで「見た目や香りでは本当に判別がつかなかった」と述べている点です。
一口目の食感の違いは感じるものの、「チャーハンにするなどのアレンジを加えるといい」との提案もあり、調理方法次第で十分活用できることが示されています。
