日本人の背骨とは
「日本人とは、どのような民族か?」と聞かれたら何と答えるだろう。おそらく、日本人の多くはこの質問に答えられない。
なぜなら、「日本とは」、「日本人とは」という問いに関する学びを学校教育が避けてきたからだ。
その結果、ヨーロッパなどの評論家から「現代の日本人は、日本人としてのバックボーンを失ってしまった民族だ。」などと酷評されている。
日本人は、古来日本人としての背骨をもっていた。その背骨が今や失われ、民族として軟体動物になりかけている。
私がある中学校の校長時代、先生方に無理を言い毎週全校朝会を設定していただいた。そして朝会での校長の話として、「日本人とは」という問題意識を生徒に投げかけ続けた。その際、最強のバイブルとなったのが以下の本。
『日本のこころの教育(境野勝悟先生著:致知出版社)』だ。この本の中で著者は、
『日本人とは太陽や自然など、自分を生かす身の回りのモノすべてに「恩」を感じて生きる民族』
であると述べている。
日本人は「恩」を感じて生きる民族
著者が一教諭だった時代、校長先生が次のように言ったそうだ。
~イギリス人てなんですか、と(イギリスの)学生たちに聞けば、イギリス人とは、ジェントルマンシップを持っていることです、と答えますよ。フランスに行って、フランス人とは何かと聞けば、学生たちは、フランス人とはボンサンス(良識)を持ち、フランスの文化や伝統について深い理解力を持っている、これがフランス人です、と答えますよ。ドイツに行ってドイツ人とはなんですか、と聞けば、かれらは、ジャーマンスピリットを持つことです、と答えるでしょう。ジャーマンスピリットとはなんですかと聞けば、社会の善いことについては、喜んで賛同し、悪い面については力をあわせてこれを改革する、と答えるはずですよ。
『日本のこころの教育 P23~24(境野勝悟先生著:致知出版社)』
そして、
~先生、日本人とは、なんですか。日本人の心とは、いったいなんなのですか。一言で答えてください」
『日本のこころの教育 P24(境野勝悟先生著:致知出版社)』
「恩」を感じて「生きる」民族
著者は長い間、この問いについて考え続けたそうだ。そしてこのような答えに行き着いた。
~○○学校の校訓は「報恩」だった。その校訓を指して、
~「恩」という字の意味はなんでしょうか。この「恩」という字を二つに分解する、その意味がよくわかってくるんです。「恩」を上・下二つに分けると、「因」と「心」になりますね。上の「因」とは、原因という意味ですね。下の「心」とは、生命という意味ですね。ですから、「恩」という字の意味は、「心」つまり生命の原因について考えること~
『日本のこころの教育 P28(境野勝悟先生著:致知出版社)』
日本人は古来より、何かに「恩」を感じて生きてきた民族だ。ところで、「生きる」という言葉は、「いき」と「る」に分解できる。
「いき」とは「息」、「る」とは「流」であり「物事が自発的に継続している状態」つまり、英語の「ing」の状態を指す。
「生きる」とは『息』が『ing』している状態だ。
我々は、生きている間ずっと息をし続けている。そして息ができるのは、心臓が動いているから。
では、心臓はどうして動いているのかというと、動力は太陽電池であるという研究がある。体が太陽からエネルギーを取り込んでいる。このように考えていくと、我々の生命は、太陽によって維持されている。生命の原因は太陽(自然)。
太陽の恵みを自覚してきた民族
日本人は、太陽の恵みを2千年も前から自覚していた。古代人は太陽のことを「お陰様」とも言っている。「我々は太陽のお陰様で生きている」と。
命の原因は太陽だということを、我々の先祖はすごく大事にしてきた。そこから「日の本」という言葉が生まれる。「日の本」は「日が本」であり「私たちの命は太陽が元になっている」という意味であり、「日本」という国名となった。
日本人とは何か
日本人とは、「日本」という国名の通りだ。
日本人とは、我々の命の元は太陽であると自覚し、『太陽や自然など、自分を生かす身の回りのモノすべてに「恩」を感じて生きる民族』
これが日本人だ。
太陽を初めとする自然に恩を感じる日本人は、例え「わら靴」の中にさえ神が宿っていると捉える、草木山海すべてのモノに感謝の念をもって生きている(生きてきた)。
主義が違っていても、思想が違っていても、「みんな違って、みんな良い」と感じることが出来る。
だから、例え罪人であっても死んだら、自然に帰り神や仏となると感じることが出来る民族だ。
日本人は、「お陰様」の心をもって生きてきた。
ほんの少し前まで、朝起きると太陽に向かって手を合わせ「お陰様で新しい朝を迎えることが出来ました。今日も一日元気に働けますように」と、願う人々の姿を見ることができた。
元日の朝だけでなく、日々太陽に向かい「お陰様で」と感謝の心をもって日々を過ごしていたのが、太陽の民日本人。日本の背骨を若者が失わないよう祈る。
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