MENU

兄弟神社:大洗磯前神社と酒列磯前神社に祀られる出雲神が、なぜ常陸に?

目次

大己貴命と少彦名命とはどのような神か

そもそも、大己貴命(オオナムチノミコト)と、少彦名命(スクナヒコナ)の命とはどのような神なのだろうか。

縁結びの神・大己貴命

大己貴命とは、出雲大社のご祭神の大国主神のことだ。
10月は、神無月と言われる。
10月には日本中の神が出雲に集まり、神が射なくなるので神無月と言われる。
だから出雲だけは10月を『神在月』と呼ぶ。
その出雲の神こそが、大国主命。

では、10月に出雲に集まった神たちは何をするのかというと、『縁結び』を行う。
だから、大国主命(大己貴命)は縁結びの神でもある。

さて、この大己貴命であり大国主命でもあるこの神は、本当は何と言う名前なのだろう。

日本の神の特徴の一つに、「多くの名を持つ」という特徴がある。
大己貴命にも、大穴牟遅命葦原色許男命・葦原醜男命・八千戈神・大国主命・大黒神など、複数の名がある。
これは、本来が一柱の神では無く、土地神や農耕の神など複数の神が習合した結果なのだろう。

日本の神は、複数の神がまとまって一つの神となる「習合」する、という特徴ももつ。
そしてもう一つ、神が人間と同じように様々な試練に直面し、それを乗り越えることで成長していくという特徴もある。

大洗磯前神社の鳥居

:稲羽(因幡)の素兎(ウサギ)の話で有名な大己貴命(大国主命)

古事記には、出雲の神大己貴命の話、つまりオオクニヌシの話が載っている。
大己貴命は、なんとスサノオの6世の孫なのだが、スサノオの娘と結婚することになる。
神様だから、こういうこともあるのだろう。

出雲神話として有名なのは、絵本などにもなっている「稲羽(因幡)の素兎(しろうさぎ)」があげることができる。有名なので知っている方も多いのではないだろうか。

大己貴命には、多くの兄弟神がおいでになった。
あるとき、大己貴命と多くの兄弟神たちが、とてもきれいな稲葉(因幡)の国の八上比売と誰が結婚するかで争ったことがあった。

そこで、八十神たちは、連れだって因幡国へ向かうことになった。
八十神たちが、ある海岸を通ったときに、毛をむしり取られて丸裸になったウサギがいた。そのウサギは、「どうか私をお助けください。」と八十神たちに救いを求めた。

すると、八十神の一人が、
「その傷を癒やしたければ、海水を浴び、風に吹かれて、山の頂で横になっていれば治る」
と、教えた。

ウサギは礼を言い、その通りにした。
ところが、傷は良くなるどころか、ますますひどくなり、あまりの激痛にウサギは泣いてしまった。

そこを一人の神が近づいてきた。
大きな袋を抱えた神で、袋の中は兄弟神の八十神の荷物だと言う。
この神が、大己貴命だった。

この後、ウサギは大己貴命に正しい治療法を教わり傷を、治すことができる。
このウサギはやがてウサギ神となり、「八上比売と結婚できるのは、大己貴命だ」と預言する。そして、その通り大己貴命と八上比売は結婚するした、という話。

大己貴命は、やがてスサノオの娘とも結婚する。この頃の神は一夫多妻制だったようだ。

大洗磯前神社の風景

大己貴命の神は、一度死んでいる

古事記の大己貴命の「稲羽(因幡)の素兎」の話には続きがある。
八十神たちは、八上比売と結婚した大己貴命を嫉妬した。
そこで、大己貴命をいじめてやろうと計略をねる。


計画はこうだ。
『八十神たちが、山から赤い猪を追い落とすから、大己貴命は山の下で待ち受けてそれを捕らえよ』
と言う。
だが赤い猪というのは、火を付けた大岩。これを山の上から落として、ビビらせる計略。

だが、真面目な大己貴命は、本当に燃えさかる大岩を受け止めてしまう。
そして、焼死してしまったのだった。
日本の神は、死ぬ。

大洗磯前神社の鳥居

生き返る大己貴命

この最大の試練を救ったのは、大己貴命の母だった。
母神は、高天原の神産巣日神に使者を送り、大己貴命を生き返らせてもらうことに成功する。

造化三神の一柱である神産巣日神も、他の造化三神と同じように現れるとすぐに消えてしまったことになっている。だが、その後の古事記の記述で当たり前のように登場してくる。
『変だ!』というのは、野暮なこと。
そういうものだと、納得するしかない。
母の愛と、神産巣日神の助力で生き返った大己貴命は、この後スサノオの国「根堅州国」へ向かう。

スサノオが、大己貴命に与える試練

大己貴命は、もともとスサノオの6世の孫だ。
だが、血族は5世までとされるので、6世の孫なら、自分の娘と結婚してもおかしくない。
人間世界では、あり得ないが…。

スサノオの娘は、須勢理毘売命(スセリヒメノミコト)と言った。
絶世の美女だった。
須勢理毘売を一目見て、大己貴は恋をしてしまう。

須勢理毘売も、大己貴を見て「美しいく、力強い神だ」と言う。
だが、父のスサノオは、「醜男(ぶおとこ)」じゃないか、とけなす。
(自分の孫の孫の、孫の孫の、孫の孫、なのに…。)

ちなみに、大己貴命の別名に、アシハラシコオという呼び名がある。
漢字には、葦原醜男という漢字と、葦原色許男という漢字を当てる場合がある。

葦原醜男と書くと、地上の醜男(ぶおとこ)という意味になるが、
葦原色許男と書くと、地上の見目麗しい力強い男、という意味になる。

「結婚させて」と願い出た大己貴に対し、スサノオは試練を与える。
例えば、「蛇のいる部屋で一夜を過ごしてみろ」
それをクリアすると、今度は「ムカデと蜂の部屋で寝ろ」

極めつけは、鏑矢を野原に打ち込み、「あの矢を探して取ってこい」
と言って、大己貴を取りに行かせ、そこに火を放ち焼き殺そうとした。
このときは、須勢理毘売も、「もうだめだ。大己貴命は死んでしまった。」と思った。だが、このときは野のネズミが助けてくれ、命を救われる。
大己貴は、数々の試練に見舞われるが、常に誰かが助けてくれるのだった。

最後の試練は、スサノオから逃れて「黄泉の比良坂」まで逃げ、地上に戻る場面。
イザナギ・イザナミの逃避行と同じように、大己貴命と須勢理毘売はスサノオから逃げきる。
地上に逃げ帰った大己貴は、その後地上を統治する神となっていく、と言うのが古事記の出雲神話。

1 2 3

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次