
今回は政界を揺るがしている「石破茂首相の商品券問題」について、その全容と背景、各界の反応までを詳しく解説していきます。
「ケチ」と言われてきた石破首相がなぜ突然、大盤振る舞いをしたのか?
その謎に迫ります。
問題の概要:いったい何が起きたのか
2025年3月3日、石破茂首相は首相公邸で当選1回の衆院議員15人との懇談会を開催しました。
この際、石破首相の事務所は各議員に10万円分の商品券を「お土産」として配布。
商品券は当日、首相の秘書が各議員の国会議員会館の事務所を訪問して手渡しました。
この懇談会には石破首相と新人議員15人のほか、林芳正官房長官と橘慶一郎及び青木一彦両官房副長官も同席。
配布が報道されたのは3月13日で、朝日新聞がデジタル版で速報したのをきっかけに各社が報じる展開となりました。
報道後、石破首相は会食を切り上げ、急遽その日の深夜に会見を開催。
懇談会はあくまでプライベートな会合で、商品券の配布は政治資金規正法が禁じる「政治活動に関する寄附」には当たらないと強調しました。
一方、商品券を受け取った議員15人は全員が既に返却していることが明らかになっています。
参加した1回生議員の一人は「(商品券を)開けた瞬間、『これはヤバいな』と思って」と週刊文春の取材に語っています。
「ケチな石破」のイメージとの矛盾
この問題で多くの人が「?」と思ったのが、「ケチ」として知られる石破首相が、なぜ突然10万円もの商品券を配ったのかという点です。
「石破首相は人にメシを食わせない人です。総裁選で支援した仲間の中には、”なんで首相になったのに、酒の一杯もおごらないんだ”と騒いだ連中がいるくらい」と、石破氏を総裁選で支援したあるベテラン議員は語っています。
前東京都知事の舛添要一氏もXで
「あの吝嗇家(りんしょくか)の石破さんが、どこで変わったのかということだ」
「総理になると潤沢な金が出来るようだ。ポケットマネーというが、そもそもそれはどうして稼いだのか。分からないことが多すぎる」
と疑問を投げかけています。
石破首相は3月19日の参院予算委員会で「長年やっていて、人付き合いが悪いの、ケチだのと散々言われてきたので、そのことについて気にする部分が相当にあったんだろうと思っている」と述べ、商品券配布に至った心理的背景を自ら明かしています。
「指南役」は誰か?青木副長官説が浮上
石破首相のような「ケチ」として知られる人物が、突然高額な商品券を配るというのは不自然です。
そこで浮上したのが「誰かが助言したのでは?」という推測です。
「誰かが”1年生議員にはごちそうしておけ”とアドバイスしたのでしょうし、お土産を渡すのなんて、どう考えても気の利かない本人の考えではありません」と前述のベテラン議員は指摘しています。
特に注目されているのが青木一彦官房副長官です。
「自民党内の一部では、商品券配布の発案者は一彦氏だといわれています」と自民党関係者は明かしています。
青木氏は、自民党参議院議員会長を務めた青木幹雄氏(故人)の長男で、内閣官房長官秘書官や公設秘書として父親を支えた経験があります。
「参院のドンで、気配りの人として知られた幹雄氏の息子・一彦氏の助言に従った」という推測がされています。
ただし、この「青木一彦官房副長官説」は現時点では噂レベルにとどまっており、青木氏本人や石破首相からの直接的な言及はありません。
「歴代首相の慣例」説は本当か?
この問題発覚後、自民党の舞立昇治参院議員が鳥取市内の会合で「歴代の首相が慣例として普通にやっていたこと」と発言したことが報じられました。
しかし、翌日になって「事実誤認、推測に基づく発言であり、撤回します」とする文書を公表しています。
ところが3月19日、朝日新聞が「岸田文雄前首相の在任中に首相公邸で開かれた政務官との懇談の際、岸田氏側から10万円分の商品券を受け取っていた」と報道。
この新たな情報により、「歴代首相の慣例」説が再び浮上しています。
岸田氏の事務所は「常に法令に従って適正に対応している」と答え、石破首相も「私が確認したものでもない。コメントする立場にはない」と述べるにとどめていますが、立憲民主党の小沼巧氏は岸田氏の参考人招致を求めています。
さらに、ある自民党関係者は「安倍さんの時も同じように商品券が配られたことがあった」と証言。
第2次安倍晋三政権時にベテラン議員が首相公邸で会食した前日、首相周辺が「お土産です」と紙袋を渡し、中には数十万円分の商品券が入っていたといいます。
この「歴代首相の慣例」説については、複数の証言がある一方で、公式に認められた事実ではなく、現時点では確定的な結論を出せない状況です。
受け取った議員たちの本音
商品券を受け取った議員たちはどう思ったのでしょうか?
愛知10区選出の若山慎司衆院議員は「中身を見ることなく返した」と証言しています。
「中身は拝見していませんし、そういう場を持っていただいたのに、御礼申し上げるべき立場なのにというところもありますから、特段頂き物をするのはそぐわないというか」と述べています。
自民党1期生の向山淳衆院議員は自身のXで「後日中身を確認し、適切でないと考え返却した」と投稿。
結局、商品券を受け取った15人全員が返却したことが報じられています。
この全員返却という事実は、議員たちも「これはマズい」と感じたことを示しており、政治家としての倫理観が問われる問題だということがわかります。
各界著名人の意見
上念司氏(経済評論家)の意見
上念司氏は石破首相の「法律に違反していない」という主張に対して、「法律的にアウトかグレーなのかは正直判断できないが、すごくグレーだ」と述べています。
しかし同時に、法律違反の有無だけで判断すべきではないという立場を明確にし、「法律に違反してないからセーフ(意訳)では済まない」と主張しています。
特に国民感覚とのずれを強調し、「これだけ多くの人が困っていることを知りながら、仲間内の議員に10万円ずつ配る」行為について「やること違うだろう、先にやることがあるだろう」と批判しています。
高橋洋一氏(元大蔵・財務官僚、経済学者)の意見
高橋洋一氏は3月14日のYouTube動画で「石破、商品券10万円分を渡す!これはダメでしょ いよいよ政権末期」と題した動画を公開。
石破首相の行為について「公邸で国会議員だけの会食でしょ。これが政治活動じゃないって言えないでしょ」
「普通の会で普通の人が入ってたら多少言い訳できるけど、国会議員しかいない。政治活動以外の何物でもない」と述べ、首相の弁明に対して明確に反論しています。
さらに「100歩譲ってグレーであるとしても、石破さんて法律違反してない人を非公認にしたりいろいろやったじゃない。そういう人が自分に甘くちゃいけない。トップに立つ人が自分に甘いってダメですよ」
と、自民党の裏金問題で厳しい姿勢を示していた石破首相が自身については甘い対応をしていることを強く非難しています。
江崎道朗氏(評論家)の意見
江崎道朗氏は2025年3月18日の「ニッポンジャーナル」に出演し、「石破おろし」だけでなく「全面的な政策の見直し」について言及しています。
ただし、その詳細な内容は一般公開されておらず、メンバーシップ会員限定となっているため、具体的な発言内容は確認できませんでした。
江崎氏が所属する国家基本問題研究所の週刊記事では「石破内閣は予算成立とともに総辞職せよ」というタイトルの記事が掲載されており、同様の見解を持っている可能性があります。
小林鷹之氏(元経済安全保障担当相)の意見
小林鷹之氏は福岡市で記者団に対して「国民になかなか理解はされない。政治の初歩であり、当たり前の話だ」と述べ、石破首相の行為が政治家として基本的な倫理に反するという強い批判を示しています。
また「首相自身が国民の理解が得られるよう説明してほしい」と述べ、首相自身が直接国民に対して説明責任を果たすべきだという強い要求も示しています。
高市早苗氏(前経済安全保障担当相)の反応
高市早苗氏は商品券問題発生前の3月11日、自身のXで石破茂首相の政策演説に対して「首相が目指す『楽しい日本』への道筋やパンチの効いた政策メッセージは打ち出されなかった」と投稿し、石破首相の政策ビジョンの欠如を公然と批判していました。
商品券問題に対する直接的なコメントは見つかりませんでしたが、
日刊現代は3月16日の記事で「『10万円商品券』配布問題で大炎上! 石破首相の窮地に勢いづく高市早苗”一派”の鼻息」
という見出しで報じており、高市氏とその支持者が政治的機会を見出していると分析しています。
ネット上での反応:「ねっとり説明」への批判

石破首相の対応についての興味深い分析として、石破首相特有の「ねっとり構文」が不祥事対応に適していないという指摘があります。
「法的に問題ない」という説明が現代社会では通用しないと批判されているのです。
法的解釈よりも倫理観が求められる現代社会において、石破首相の複雑で丁寧すぎる言い回しが、かえって「言い訳」と受け取られてしまう傾向があります。
SNSで感情ベースのやりとりが増えている昨今、こうした説明スタイルはむしろ避けるべきだという指摘があります。
元大阪市長の橋下徹氏はXで「これはもう時代遅れ。アウト。このような金の使い方が永田町の金の使い方。領収書のいらない莫大な金がこうやって使われている」と強く批判。
日本保守党の河村たかし衆院議員も「まあとんでもないわなというよりも、こういう風ですわ、日本の政治は。ばれたかと。裏金を配ることによって子分をつくっていくという構造だがね。普通は辞めないかんわな、これ」と強い批判を寄せています。
「政治とカネ」をめぐる皮肉な状況
この問題の法的争点となっている政治資金規正法21条の2(政治家個人の政治活動に関する寄附の禁止)には、皮肉な側面もあります。
実はこの条文は、過去の自民党派閥裏金問題では適用されませんでした。
「検察が、政治家個人宛寄附を禁止する『21条の2』の規定を適用した事例は、皆無」であり、この規定は「事実上『死文化』している」との指摘があります。
裏金問題においてこそ適用すべきだった条文が、今回の石破首相の商品券問題に持ち出されていることが皮肉だという見方もあります。
「石破おろし」につながる可能性も
この問題が浮上した背景には「石破おろし」の動きがあるのではないかという見方も出ています。
立憲民主党の有田芳生衆院議員はXで「国会ではさまざまな情報が飛び交っています。旧安倍派幹部が動いているという噂もあれば別の派閥責任者の名前も流れています」「いずれにしても『石破おろし』の動きに間違いありません」と指摘します。
実際、3月12日の党参院議員総会では、旧安倍派に所属していた西田昌司参院議員が
「今のままでは参院選を戦えない」として、首相退陣を要求。「(石破首相に対する)国民の審判は(昨年の衆院選で)もう出ている。その方がまた参院選の(党の)看板になるのは、あり得ない」
「総裁にふさわしい人をもう1度、選び直す手続きをしてほしい」
と訴えたことが報じられています。
内閣支持率も急落しており、朝日新聞の調査では2月の40%から26%に14ポイント下落。
読売新聞の調査でも31%となり、内閣発足以降最低の数字となっています。
原資の疑問:本当に「ポケットマネー」なのか
石破首相は商品券の原資が自身の「ポケットマネー」だと説明していますが、その出所が内閣官房機密費ではないかという疑惑も浮上しています。
「一番の疑惑は官房機密費を使ったんじゃないかと。税金で飲み食いをして、お土産まで10万円配った(のではないか)というところに、私はあると思っている」
と指摘し、
「ご本人がポケットマネーで払ったというのだから、預金通帳なり証拠を示してもらいたい」
と訴えています。
これに対して石破首相は「官房機密費は一切使っていない」と明確に否定し、銀行員時代の蓄えや遺産を活用し、私費で負担したと説明していますが、その説明の信憑性を検証する具体的な証拠は示されていません。
予算審議への影響も
この問題は国会運営にも影響を及ぼしています。
国民民主党の玉木雄一郎代表は
「石破総理が何らかの形で責任を取らないと、予算も法律も前に進まない可能性が高い」
と発言。
また、高額療養費の問題で予算が再修正されたため、衆院での再議決が必要となっており、当初は予算案に賛成した日本維新の会も
「(予算案への)賛否と結びつけるかどうかも含め、しっかりとまた党内で話し合いをしたい」
と述べるなど、新年度予算の成立にも影響が及びつつあります。
まとめ:この問題が示す日本の政治の課題
石破茂首相の商品券問題は、単なる一首相の不適切な行為にとどまらず、日本の政治文化や「政治とカネ」をめぐる構造的な問題、そして政治家と一般国民の感覚のずれを改めて浮き彫りにしています。
物価高やコメ高騰に苦しむ一般国民の視点からすれば、政治家同士が10万円もの商品券をやり取りする感覚が理解できないという声が多く上がっています。
また、「政治とカネ」の問題が繰り返し発生する背景には、密室での金銭のやり取りを許容してきた政治文化があるのではないかという指摘もされています。
石破首相自身の言葉を借りれば「社会通念上、世の中の方々の感覚と乖離した部分が大きくあった」ということなのでしょう。
これからも「石破茂 商品券問題」の展開を注視していく必要がありますが、この問題が単なる一過性のスキャンダルではなく、日本の政治文化や政治資金の透明性という根本的な問題に関わっていることを忘れてはならないでしょう。
この問題を契機に、政治資金の透明化や政治家の倫理観の向上につながる改革が進むことを期待したいところです。
私たち国民も、こうした問題に対して関心を持ち続け、政治家に説明責任を果たすよう求めていくことが大切です。
政治の信頼回復のためには、政治家の努力だけでなく、私たち有権者の監視の目も欠かせません。
