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アメリカによる中国の気球撃墜、どうする日本

 令和5年2月4日、アメリカは、中国の探索用気球と見られるものを大西洋上で打ち落とした。中国は、相変わらずの論調で「民間のモノを打ち落とした」と抗議し、アメリカは中国の抗議を全く認めない。問題は、3年前に日本にも同様のモノと見られる気球が来ているという事実。当然ながら、日本は何も対処できていなかった。本当の有事の際、日本は、どう行動できるのだろう。

目次

2月5日、中国アメリカに厳重抗議

 

 アメリカが4日に打ち落とした中国の気球について、アメリカ国防総省は、『(気球によって)中国が得た情報を中国に戻すのを防いだ』と発表した。

 同時に、偵察気球は、意図的にカナダとアメリカを横断し、機密軍事施設を監視しようとしていたと非難している。

 それに対して中国は、

中国は、飛行船は民間のモノ不可抗力でアメリカに入った。想定外の事だと説明し、アメリカが打ち落としたことに、強い不満と抗議の意向を表明。

NHKニュース

 相変わらず、すごい論理だ。西側諸国では到底通用しない論理を臆面も無く主張する。
 さらに中国外務省の正式声明として、以下のようなことを表明している。

「当該の飛行船は民間のもので、不可抗力でアメリカに入ったと何度も説明してきた。武力行使にこだわるのは明らかに過剰反応で国際慣行に違反する」

NHKニュース

 観測装置を積んで、アメリカの領空を飛行したら、民間だろうがなんだろうが、打ち落とされても文句を言えまい。

 逆に、「我々(中国)のミスで、観測気球が領空に侵入してしまいました。申し訳ない」と事前に謝るのが筋。

NHKニュースより:軍事施設上空を飛行した気球

日本でも3年前、同様の気球が観測されていた

 問題は、日本でも既に、少なくとも3年前から同様の気球が観測されていたという事実だ。

 2020年、宮城県上空で、「謎の白い球体」として、同じような気球が目撃されている。このニュースは、テレビでも放映された。つまり、カメラが捉えた映像として「白い球体」が捉えられている。

 この「白い球体」に関し、当時防衛大臣だった河野太郎氏は、

「自衛隊の気象班が保有しているものでないということは、確認しております。」

 と語った。

 いかにも日本的だ。特に河野氏では、中国と気球の関係を明確に言えなかったのだろう。その点をかんがみても、アメリカと日本の対応の差に驚く。

 さらに、「白い球体」に飛行経路は、日本内にある米軍基地周辺を飛行していたことが分かっていた。よく言えば「慎重」な発言だが、もう少し毅然と出来ないものか。

今回の偵察気球について、松野官房長官はどう発言したか

 政府としては。平素から警戒監視に万全を期すとともに、様々な各種の情報収集、分析に努めているが、アメリカとのやりとりの有無を含めて、一つ一つの情報については、事柄の性質上、答えを差し控える

 と述べた。
 やはり、日本的だ。「慎重に」、そして「何もしない」

 CNNニュースで、政府高官の話(出所は明らかにしていない)として、

中南米で見つけた2つ目の気球も、中国の偵察気球で、中国はこのような気球を何年も世界中に飛ばしてきた。

と伝えた。

 日本にも、少なくとも数年前から、同様のモノが飛来し、今回のモノも、その飛行経路から逆算すると、日本上空をほぼ、飛行して行っただろう、という。
 にもかかわらず、日本は『情報を差し控える』としか言えない。
 思わず、ため息が漏れる。

門田隆将氏のTwitterでのつぶやき

《中国の気球を米が大西洋上空で撃墜。中国外交部は“強烈な不満と抗議”発表。「できるだけ早く撃ち落とすよう指示していた」とバイデン大統領が明かせば、オースティン国防長官は「米本土の戦略的拠点を監視する為の気球だ」と。主権侵害への毅然とした態度。岸田首相よ、見たか》

 領空、領海を侵略された時に、どう行動するかを本格的にシュミレーションしておかないと、『あのときに、こうしておけば』という後悔をすることになる。

橋下徹元大阪市長と、松川るい元防衛政務官の激論

 5日の『日曜報道 THE PRIME』(フジテレビ系)で、橋本氏と松川氏の激論が見られた。

 橋本氏は、

 『たぶん日本政府は撃墜なんかやらないでしょうね』

と述べた。

 これに対し、松川氏は、

「やると思いますよ」

 と返す。

「日本にも破壊措置命令がある」
しかし、『日本はポジティブリスト』なので、「国民・国土内に重大な被害を発生させるような恐れがある」と判断された場合にのみ、「そういう物体は破壊措置できる。」

 今回の「気球が重大な被害を与えるかどうか」まず、判断しなければならない。

「これは、落下しますかね」「分かりませんね。でも、おそらく落下しませんよね」
 という判断がでたら、
 現在の日本の法律では、『破壊措置命令』など出ない。

 すべてが後の祭りとなったときに、つまり、被害が及んだときに、やっと「打ち落としてもよいですよ」と総理から命令が出るのだろう。

 松川氏の言う「やるとおもいますよ」は、そういう後の祭りとなったときに、やっと「やる(とおもいますよ)だろう。

 現実的には、何の意味も無い。

 自衛隊法に基づく破壊措置命令では、弾道ミサイルなど「落下により人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる」物体(航空機以外)が落下しそうな場合防衛大臣が首相の承認を得て、自衛隊に出動命令を出せる。

 ○「被害が生じるとと認められる」?
 ○「落下しそう」?
 ○「防衛大臣が首相の承認を得てから」?

過去日本は、どう対処したのか

 日本でも2020年に宮城県上空で同形の気球が確認され、当時の河野太郎防衛大臣が「24時間、警戒監視を続けている」と述べた。また、2021年にも東北地方で目撃情報があるが、同様の対応だった。

今後、同様の出来事が起こったときに、日本はどう対応出来るのか

 SNSでは、日本で撃墜できるとは思えないといった意見が多い。

《日本で、中国の気球撃墜なんて絶対無理って誰もが思ってる》
《今後日本にも飛んで来た時(すでに来ていたようですが)政府の対応が試されますね》
《アメリカみたいに日本もこれくらいすぐできるようにしないとね… 気球撃墜くらいさ…》

日本に、気球を破壊できる能力があるのか

 そもそも、日本に高高度を飛ぶ気球を破壊できる能力があるのか、という点も気になる。
ヤフー知恵袋に以下のような意見が載っている。

高度1万8千メートルという、高高度は通常の航空機ですら到達困難です。アメリカではASAT計画で人口衛星破壊に成功した実験がありますが、この際ミサイルが発射された高度は1万2千メートルです。おそらくこの時のノウハウからミサイルをギリギリ命中させることが出来たのであって、ライフルどころか、航空機の機関砲すら当てるのは難しいです。中国側も破壊困難であることを分かっていて気球を飛ばしているので、それを米国が撃墜できたことになりふり構わず反応しているのだと思います。

 非常に参考になるご意見。勉強になる。

 この意見は、『なぜ、気球をライフルで撃ち落とさなかったのか』という質問に対するもの。ライフルや地上からのミサイルでは、おそらく撃ち落とすのは難しいのだ。

 どうしても、気球一つに、戦闘機を出動させなくてはならないのだろう。

 撃つべき弾にも、不足する自衛隊。
 出動すべき、戦闘機の部品すら不足する自衛隊

 本当に、危機に対処できるのかも心配なところだ。


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