こんにちは、なおじです。
2026年3月6日(金)放送、NHK朝ドラ「ばけばけ」110話。
ついにトキとヘブンの赤ちゃんが生まれて、松野家は大喜び。
でもそこに「戸籍問題」という難題がすっと混じってくる。
元社会科教師のなおじが、明治の出産風習と壬申戸籍の史実とともにこの回を読み解きます。

この記事でわかること
- ヘブンのお百度参りが完遂できなかった経緯
- 「鉄砲柱」という明治の出産風習とは何か
- 正木が気づいた戸籍問題の正体
- 史実の小泉セツ・八雲と壬申戸籍の関係
- 来週(111〜112話)松江で何が起きるのか
ヘブンのお百度参り、完遂できなかったけれど
百回参拝という安産祈願の風習

110話の舞台は、あれから半年が経った松野家です。
トキ(髙石あかり)の出産が近づき、ヘブン(トミー・バストウ)はお百度参りに向かいます。
お百度参りとは、神社やお寺の境内を百回往復しながら祈願する風習のこと。
平安時代ごろから続いていて、特に安産祈願・病気平癒のときに行われてきました。
「百」という数字には「満数=完全」という意味があって、百回往復することで願いの誠実さを示すんですよね。
イギリス出身のヘブンが、この日本の風習に一生懸命取り組んでいる。
そのシーンだけで、じわっとくるものがあります。
「鉄砲柱」という明治の出産風習

一方で家の中では、司之介(岡部たかし)や丈(杉田雷麟)、正木(日高由起刀)たちが鉄砲柱に向かっていました。
鉄砲柱とは、出産のとき家の柱に腰を落とした姿勢で手を当て、力を込めて押す風習。
この風習、知ってました?
「柱を押す」という行為に、「難産を押し切る」「家の力で守る」という意味合いが込められているんです。
たとえばなおじが教壇に立っていたころ、地域の祭りや風習を調べる授業があると、こういう細かい民俗が出てくるんです。
「知ってる!うちのおばあちゃんから、やってたって聞いた」と言う生徒が必ず一人はいて、授業が急に生き生きしてくる瞬間がありました。
外でヘブン、家の中で男たちが、それぞれに日本的風習・方法で赤ちゃんとトキを守ろうとしていた、そういうシーンだったんですね。
日本古来の風習、その重層感が、このシーンをぐっと豊かにしていましたね。
百回に届かなかったのに、泣き声が聞こえた
ところが、ヘブンが帰ってきたとき手にはまだ大量のこより。
おそらく、お百度参りは、まだ百回に届いていなかったようです。
そのとき、赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。
なおじは思わず「あ、ええやん」と声が出てしまいました(笑)。
「祈りを行動で示したこと自体が届いたんだ」というドラマの語り方が好きですねー。
百回は 要らぬと神が 泣かせけり
正木が気づいた壬申戸籍の問題とは
法律上の夫婦ではなかったふたり

フミ(池脇千鶴)やクマ(夏目透羽)に見守られながら、可愛らしい赤ちゃんが生まれました。
デレデレになる松野家一同のなか、名探偵・正木が「あること」に気づきます。
それが「戸籍問題」。
トキとヘブンは、まだ戸籍の上で正式な夫婦になっていなかったんですよね。
同じ戸籍に入らないと、産まれた赤ちゃんも家族として公的に認められない。
元社会科教師のなおじには、このシーンがいちばん刺さりました。
明治の壬申戸籍という制度
さてここで、壬申戸籍の話を少しさせてください。
110話の時代背景は1890年前後の熊本です。
このころ日本で使われていた戸籍制度が、明治5年(1872年)に編製された壬申戸籍(じんしんこせき)です。
「壬申」とは、明治5年の干支のこと。
日本初の全国的な戸籍制度で、居住地を基準に「戸(世帯)」単位で編成されました。
また、この壬申戸籍には「士族」「平民」「新平民(旧被差別部落民)」などの身分記載があり、後に深刻な差別問題の温床となったことでも知られています。
なおじのブログで詳しく解説しています。ぜひ読んでみてください。
👉関連記事:壬申戸籍はなぜ閲覧禁止?差別問題の歴史的背景を元教師が解説
外国人が日本の戸籍に入るということ

たとえばイギリス国籍のヘブンが日本の壬申戸籍に入ること自体、明治の時代には極めて異例の手続きです。
当時の戸籍は「日本人」を管理するために作られたものですから、外国人の入籍は法的にも手続き的にも相当な困難を伴いました。
だからこそ正木が「気づく」という演出になっている。
そこに史実の重みが乗っているようで、なおじにはそのシーンが妙にリアルに感じられたんです。
👉関連記事:まさかヘブンがフィリピン断念?泣けたばけばけ109話
史実との対比|小泉セツと壬申戸籍の現実
まだ前夫の籍にあったセツ
トキのモデルは、小泉セツ(こいずみ・せつ)です。
| ドラマの設定 | 史実 |
|---|---|
| トキは松野家の籍のまま、ヘブンと正式婚姻していない | セツは小泉家の出身で、前の婚姻関係が残っていた |
| 戸籍問題を正木が指摘 | ハーンとの入籍手続きには時間がかかった |
| 赤ちゃん誕生後に戸籍手続きへ | 帰化は1896年(明治29年)で赤ちゃん誕生より後 |
史実でも、ハーンとセツが正式に夫婦として認められるまでに複数の手続きと時間が必要でした。
ドラマはその複雑さをきちんと拾っている、ということですよね。
👉関連記事:ばけばけ 熊本編 史実 暇で地味と言われた熊本の真相
来週(111〜112話)の展開を予習する
来週(第23週「ゴブサタ、ニシコオリサン。」2026年3月9日〜)では、トキとヘブン・赤ちゃんの勘太が松江に戻って戸籍手続きに臨むのだとか‥。
トキは松野家の籍を抜けて「雨清水トキ」になります。
そして**ヘブンは「雨清水八雲」**を名乗ることに。
史実では「八雲立つ出雲八重垣…」という日本最古の和歌に由来する名前で、養祖父である稲垣家の方が名付け親になったとされていますよね。
ここで熊本編は一区切りとなり、舞台は松江に戻ります。
⚠️ 来週の展開は事前公開あらすじに基づく予習情報です。放送内容と異なる場合があります。
元教師が見たこの回の「深さ」
言わずに伝える技術
「お百度を完遂できなかったのに願いが叶う」というさじ加減、ふじきみつ彦さんらしいですよね。
元教師として言えば、授業でいちばん難しいのは「言わずに伝えること」かな‥。
なおじが35年の教壇で実感し続けたのは、「説明しすぎると伝わらない」ということ。
言葉にしなくても伝わる瞬間を作れるかどうか——それが「教える」ということの本質だと今でも思っています。
このドラマはその境地にある回が多い。
なおじには、おもいろいと感じちゃうんですよねー。
ただし、熊本編など伝わらなすぎて、「おもしろくない」という批判が、一部には確かにありましたね‥。
壬申戸籍の授業で生徒が静かになる瞬間
社会科で「壬申戸籍は差別の温床となった制度」として触れたことが、何度かありました。
そのときの授業で子どもたちに一番刺さるのは、「その戸籍に書かれた一行のせいで、就職や結婚を妨げられた人がいた」という事実です。
一瞬、教室が静かになる瞬間があったんです。
その静けさで、なおじは自身も過去の歴史について考えさせられました。
110話でヘブンと正木が直面した「壬申戸籍の問題」は、単なる手続きの話ではないんですね。
この演出の裏には、そういう時代の空気が隠れて流れています。
よくある疑問(Q&A)
Q1. お百度参りとは何回参拝するものですか?
お百度参りとは、神社やお寺の境内を百回往復しながら祈願する風習です。
平安時代ごろから続いていて、特に安産祈願や病気平癒の願掛けとして知られています。
「百回に満たなくても誠意が届く」という解釈もあって、ヘブンのシーンはそういう意味合いもあったのかもしれませんね。
Q2. 壬申戸籍とはどんな制度ですか?差別とどう関係しますか?
壬申戸籍とは、明治5年(1872年)に編製された日本初の全国的戸籍制度です。
この戸籍には「士族」「平民」「新平民」などの身分欄があり、旧被差別部落出身者を特定できる記載が含まれていました。
そのため後に深刻な差別の温床となり、現在は閲覧禁止(封印)の措置がとられています。
詳しくはなおじの歴史ブログをどうぞ。
👉関連記事:壬申戸籍はなぜ閲覧禁止?差別問題の歴史的背景を元教師が解説
Q3. 来週(111〜112話)の予告はどんな内容ですか?
来週(第23週、2026年3月9日〜)は「ゴブサタ、ニシコオリサン。」というタイトルです。
親子3人と司之介・フミが松江に戻り、壬申戸籍の手続きに臨みます。
赤ちゃんは「勘太」と名付けられ、ヘブンは日本名「雨清水八雲」を名乗ることになります。
⚠️ 放送内容と一部異なる場合があります。
Q4. ラフカディオ・ハーンは実際に日本名を名乗りましたか?
はい。ラフカディオ・ハーンは1896年(明治29年)に日本に帰化し、「小泉八雲」を名乗りました。
「小泉」はセツの実家の姓で、「八雲」は養祖父を名付け親として「八雲立つ出雲八重垣…」という和歌に由来する名前です。
ドラマが史実の名前の由来を自然な形で物語に組み込んでいる点は、歴史好きにはたまりませんよね。
Q5. ばけばけは残り何話ですか?
110話時点で残り16回(スポニチ報道より)。
来週からは松江編が始まり、その後さらに舞台が変わる可能性もありますが、現時点では松江編までが公式確認できています。
最終回の日程はNHK公式サイトでご確認ください。
なおじは「お百度未完でも願いが叶う」シーンが今週いちばん好きでした。
みなさんはどのシーンが印象に残りましたか?
コメント欄でぜひ教えてください。
👉関連記事:ばけばけは史実と何が違う?全話感想と人物モデル一覧
筆者紹介|なおじ
元社会科教師35年・現在はブロガー
なおじは茨城県の公立学校で社会科教師を35年、校長を11年務めました。
バスケットボール部の顧問も10数年経験しています。
現在は歴史・政治・ドラマ・スポーツなど多角的な視点で、8つのブログを運営しています。
今回の「壬申戸籍と史実」は、まさになおじの得意分野。
ドラマを窓口に「史実」を楽しんでもらえたら、元社会科教師としてこれ以上嬉しいことはありません。