
こんにちは!
今日はとっておきの話題があるんです。
2025年4月9日、全国の書店員が選ぶ「本屋大賞」で阿部暁子さんの小説『カフネ』が見事大賞を受賞しました。
岩手県の作家が本屋大賞を受賞するのは史上初めてのことで、地元メディアもかなり盛り上がっているみたいです。
「阿部暁子って誰?」って思われた方も多いかもしれませんね。
でも実は2008年にデビューしてから15年以上、着実に創作活動を続けてきた実力派作家なんです。
『カフネ』は「最愛の弟を失った姉」と「弟の元恋人」という二人の女性が、家事代行サービスを通して人々の暮らしを整え、心を救っていく物語。
「食べることは生きること」というテーマが、多くの読者の心を温めたそうです。
このブログでは『カフネ』の魅力はもちろん、阿部暁子さんという作家の経歴や代表作を紹介していきますね。
本屋大賞受賞作って「難しそう」って思われるかもしれませんが、阿部さんの作品は読みやすさと深さを兼ね備えた、心に寄り添う物語ばかり。
この機会に彼女の作品世界を一緒に覗いてみませんか?
阿部暁子のプロフィールと経歴
阿部暁子(あべ あきこ)さんは1985年生まれ、現在39歳の岩手県出身の小説家です。
地方在住の作家としては珍しく、今も岩手県花巻市に住み続けているんですよ。
こういう生活スタイルから生まれる独自の視点も、彼女の作品の魅力のひとつかもしれませんね。
実は阿部さん、高校生の頃からすでに文学の才能を発揮していたんです。
2003年、第18回全国高等学校文芸コンクール小説部門で最優秀賞と文部科学大臣奨励賞を受賞しています。
岩手県立花巻北高等学校を卒業した後も、小説家の道を真っすぐに進み続けたんですね。
2008年は阿部さんにとって特別な年になりました。
Cobalt短編小説新人賞を『陸の魚』で受賞し、さらに『いつまでも』(刊行時には『屋上ボーイズ』に改題)で第17回ロマン大賞を受賞してコバルト文庫からデビュー。
それ以来、『どこよりも遠い場所にいる君へ』『また君と出会う未来のために』『パラ・スター』シリーズなど、多様なジャンルの作品を発表してきました。
特に『パラ・スター』2部作は「本の雑誌」が選ぶ2020年度文庫ベスト10の第1位に選ばれるほどの評価を得ていたんですよ。
そして2025年4月9日、待望の本屋大賞受賞。
授賞式のスピーチでは黒のフォーマルなワンピース姿で登場した阿部さんが、
「今日は本当はつなぎの服を着てごついブーツを履いて、髪をお団子にして来ようと思っていたんですが、担当さんと家族に’やめておけ!’と言われたので(笑)」
と話し、会場を笑いで包んだそうです。
また、
「2004年の春に、入学したばかりの大学の生協で『博士の愛した数式』という本を買いました。第1回本屋大賞受賞作です。明け方をボロボロ泣きながら本を閉じました」
と、本屋大賞との運命的な出会いを語っていました。
「死ぬまでにこんな物語を書きた」
と思った若き日の夢が、21年後に実現したことになりますね。
おもしろいのは、『カフネ』が生まれたきっかけ。
編集者から「弟に死なれた姉と、弟の元恋人の話はどうか」という提案を受けたことだったそうです。
阿部さんは「その設定を聞いたときに、冒頭の情景と同時に結末のシーンも見えました」と語っています。
『カフネ』詳細分析
『カフネ』は2024年5月22日に講談社から刊行された阿部暁子さんの長編小説です。
どんな物語かというと、法務局に勤める40歳の野宮薫子が、突然亡くなった弟・春彦(29歳)の元恋人である小野寺せつなと出会うところから始まります。
弟の死と夫からの一方的な離婚宣告という二重の喪失に打ちのめされていた薫子は、せつなが勤める家事代行サービス「カフネ」の活動を手伝うことになります。
当初は反発し合っていた二人ですが、さまざまな家庭を訪問して料理や掃除を通じて支援する「カフネ」の活動を通じて、徐々に心を通わせていく様子が描かれています。
特に印象的なのが「カフネ」の「お試しチケット」というシステム。
これは経済的に苦しい人や高齢者など、支援が必要な人が無料でサービスを受けられる制度なんです。
この活動を通じて、薫子とせつなはさまざまな人生の苦悩に触れながら、自身も成長していくんですね。
タイトルの「カフネ」はポルトガル語で「愛する人の髪にそっと指を通すしぐさ」という意味です。
日本語で一言では言い表せない感情や関係性を表す言葉で、阿部さんは「友達が誕生日プレゼントにくれた『翻訳できない世界のことば』という本に載っていた言葉」だと語っています。
この言葉に向かって物語が書かれていったそうです。
『カフネ』の大きなテーマは「喪失と再生」です。
薫子が弟の死と離婚という喪失を経験し、せつなとの新たな関係性の中で再生していく過程が描かれています。
また「食べることは生きること」という言葉が作中で何度も登場し、料理を通じた心の交流が重要な要素となっています。
執筆の背景としては、編集者から「弟に死なれた姉と、弟の元恋人の話はどうか」という提案を受けたことがきっかけだったそうです。
阿部さんは「その設定を聞いたときに、冒頭の情景と同時に結末のシーンも見えました」と語っています。
作品には不妊治療や虐待、貧困、ジェンダーなど現代社会のさまざまな課題も織り込まれており、それでいて読後感は温かく希望に満ちている点が評価されています。
タイトルの「カフネ」という言葉が象徴するように、言葉にできない関係性の重要性を伝える物語なのです。
この作品は2025年本屋大賞を受賞したことで大きな注目を集めていますが、実はそれ以前にも第8回未来屋小説大賞や第1回「あの本、読みました?」大賞を受賞していました。
書店員や読者から「心にそっと寄り添ってくれる」と評される温かな物語性が、多くの人の心を捉えたといえるでしょう。
代表作品紹介
阿部暁子さんは『カフネ』以外にも、多くの魅力的な作品を発表しています。
代表的な作品をいくつかご紹介しますね。
『どこよりも遠い場所にいる君へ』(2017年)
この作品は、集英社オレンジ文庫から刊行された青春小説です。
主人公は「知り合いのいない環境を求め」て離島の采岐島高校に進学した月ヶ瀬和希。
物語は、采岐島にある「神隠しの入り江」で倒れていた少女・七緒(16歳)を和希が発見するところから始まります。
七緒は身元不明で、入り江で「1974年」とつぶやいていました。
この七緒との出会いが和希の人生にどのような影響を与えるのか…感動のボーイ・ミーツ・ガールとして描かれています。
タイトルからも時間を超えた物語性が想像できますね。
『金環日蝕』(2022年)
2022年10月に東京創元社から刊行された作品です。
ミステリーなので、内容については控えます。
ですが、ネット上の感想によると「北海道を舞台にしたミステリー要素がある物語」で、「伏線回収が見事で二転三転するストーリー展開に引き込まれる」との評価があるようです。
社会問題を背景にした重厚な物語ながらも、希望を感じさせる結末が高く評価されています。
『鎌倉香房メモリーズ』シリーズ(2015年-2017年)
集英社オレンジ文庫から刊行された全5巻シリーズです。
主人公は「人の心の動きを香りとして感じとる力」を持つ高校2年生の香乃。
彼女は祖母が営む香り専門店『花月香房』に暮らしています。
「ゆったりとした時の流れる鎌倉を舞台に、あの日の匂いと、想いも……よみがえる。ほっこり、あったか香りミステリー」というキャッチコピーが付けられており、心温まる連作小説として人気を集めています。
『パラ・スター』シリーズ(2020年)
集英社文庫から刊行された2巻構成の青春スポーツ小説です。
『パラ・スター〈Side 百花〉』と『パラ・スター〈Side 宝良〉』の2冊からなります。
車いすメーカーで働く百花の夢は、親友で車いすテニス選手の宝良のために最高の競技用車いすを作ること。
高校2年の時、交通事故で脊髄損傷し、車いすでの生活を余儀なくされた宝良を救ったのは、百花が勧めた車いすテニスでした。
このシリーズは「本の雑誌」が選ぶ2020年度文庫ベスト10の第1位に選ばれるほどの評価を得ており、パラスポーツを題材にした新鮮な視点が多くの読者の共感を呼んでいます。

『カラフル』(2024年)
2024年2月に集英社から刊行された阿部さんの最新作の一つですが、この本も私は未読です。
森絵都の同名作品とタイトルが同じですが、全く別の物語です。
やまなしメディア「リビング新聞」の取材では、車椅子ユーザーの少女を主人公にした物語と紹介されています。
多様性という観点から、障がいを持つ人々を主人公にした物語を描く阿部さんの姿勢が表れた作品と言えるでしょう。
その他の注目作品
阿部さんは歴史小説も手掛けています。
『室町少年草子 獅子と暗躍の皇子』(2009年)や『戦国恋歌 眠れる覇王』(2010年)、『室町繚乱 義満と世阿弥と吉野の姫君』(2018年)などが代表作です。
私は、この歴史もの大好きです。
また、漫画原作のノベライズも担当しており、『ストロボ・エッジ』(2010年-2011年)や『アオハライド』(2011年-2015年)などの人気作品も手掛けています。
これらの多様な作品群からは、阿部暁子さんの幅広い創作の世界が垣間見えますね。
いずれの作品も「人との関わり」や「成長」をテーマにした心温まる物語として、多くの読者に愛されています。
阿部暁子作品のテーマと特徴
阿部暁子さんの作品には、一貫して「人と人とのつながり」を描く独自の世界観があります。
特に注目すべき3つの特徴を見ていきましょう。
1. 喪失から始まる再生の物語
多くの作品で「大切な人を失うこと」が物語の出発点になっています。
例えば『カフネ』では、主人公が弟の死と離婚という二重の喪失を経験。
この喪失体験が、家事代行サービスを通じた新たな人間関係の構築へとつながります。
読書サイトのレビューでは「喪失の痛みがリアルで共感した」との声が多数寄せられています。
2. 現代社会へのまなざし
阿部作品は現代的な課題を柔らかく包み込むのが特徴です。
『パラ・スター』シリーズでは車いすテニスを題材に障害への理解を促し、『カフネ』では貧困家庭への支援制度「お試しチケット」を物語に組み込みました。
読者からは「社会の見方が変わる」との感想も。
3. 食がつなぐ人間関係
料理描写の巧みさは最大の特徴と言えます。
『カフネ』では「食べることは生きること」というテーマが全編を貫き、家庭料理の温かさが人間関係を修復する様子が描かれます。
読者アンケートでは「作中料理を実際に作ってみた」という声も。
文体はシンプルながら比喩が豊かで、読書サイトでは「比喩表現の魔術師」と評されることも。
特に自然描写と心理描写の融合が秀逸で、岩手県在住ならではの季節感覚が随所に息づいています。
読者ガイド
初めての方におすすめの作品
- 『カフネ』から始める
本屋大賞受賞作で読みやすさ抜群。現代社会の課題と人間関係の機微がバランスよく描かれています。
◇ - 感動ストーリーが好きなら
『どこよりも遠い場所にいる君へ』(時間を超えた恋愛)や『パラ・スター』シリーズ(車いすテニスと友情) がおすすめ。
◇ - ミステリー要素が好きな方へ
『金環日蝕』がおすすめ。北海道を舞台にした社会派ミステリーで、伏線回収の妙が光ります。
読み進め方のコツ
- シリーズものは刊行順に(例:『鎌倉香房メモリーズ』全5巻)
- 歴史小説好きは『室町繚乱』から
- 短編から入りたい方は『陸の魚』(デビュー作)が最適
書店員さんからのアドバイスによると「まずは表紙の雰囲気で選ぶのも楽しい」とのこと。
電子書籍サンプルを読んでみるのも良い方法です。
読者の声と評価
SNSや書評サイトではこんな感想が目立ちます:
- 「登場人物の成長が自分事のように感じられた」(ブクログユーザー)
- 「料理描写がリアルで、作中料理を再現してみたくなる」
- 「ラストの希望に満ちた展開に勇気をもらった」
- 「阿部作品を読むと優しい気持ちになれる」
書店員からは「読後の余韻が美しい」「現実的な救いを感じる」との評価が。
特に20-40代女性からの支持が厚く、読書コミュニティでは「生きづらさを抱える人に勧めたい」との声が多数見られます。
まとめと今後の展望
阿部暁子さんの作品は、喪失体験を出発点にしながら、料理や人とのつながりを通した再生を描く「現代の癒し小説」と言えます。
岩手県在住という地方視点と、多様性への深い理解が作品に独特の温かみを与えています。
今後の注目ポイントは:
- 歴史小説と現代小説のバランス
- 地方発の文学としての可能性
- 海外文学賞への挑戦
2025年本屋大賞受賞を機に、ますますの活躍が期待される作家です。
次回作では「農業をテーマにした作品を構想中」との噂も。
これからも心に寄り添う物語を届けてくれるでしょう。