
2025年4月3日に放送された竹田恒泰氏の特番「保守とは何か?日本人が保守すべきこと」について、その内容を分析し、竹田氏の保守思想の核心に迫ります。
現代日本における「保守」の意味とは何か、私たちが守るべき価値とは何かを考察します。
保守という立場の再定義
竹田恒泰氏は「保守」を単なる政治的立場ではなく、より広い文化的・歴史的文脈で捉えています。
一般的に、保守とは「古くからの習慣・制度・考え方などを尊重し、急激な改革には反対する立場」と定義されます。
しかし竹田氏は、この定義を超えた保守観を提示しているのです。
竹田氏によれば、本来「保守」とは単に過去に固執することではなく、伝統や文化の本質を理解し、それを現代に活かす姿勢を持つことだと言います。
彼は「伝統とはどんどん変わっていくもの。伝統は新しく創造される、非常にクリエイティブなもの」と述べており、保守を静的なものではなく、動的で創造的なプロセスとして捉えています。
例として天皇陛下の「お田植え」を挙げ、これが「2000年前からの”五穀豊穣を祈る”という中で昭和天皇が始められたもの」だと指摘し、伝統が新しく創造されるものであることを強調しています。
このように竹田氏は、保守を単なる過去への回帰ではなく、伝統の本質を見極め、それを時代に合わせて創造的に継承していく姿勢と考えているのです。
「右寄り」と「左寄り」の再考
竹田氏は現代日本における「右寄り」「左寄り」という政治的分類についても独自の見解を示しています。
彼によれば、安倍政権の政策は「右寄り」とよく評されますが、実際には「領土を防衛し、若者が日本人としての誇りを持てるような教育を施し、金融緩和によって経済を梃入れして『日本を取り戻す』ことは、全て普通の国なら当たり前のことばかり」であり、本来は「中道」「中庸」と呼ぶべきものだと主張しています。
竹田氏は、なぜ中道的な政策が「右寄り」と評されるのかについて、「世の中全体が『左傾化』しているため、ど真ん中のことを言うと『右寄り』に聞こえる」と分析しています。
つまり、戦後日本においては、保守と革新のバランスが左に偏っており、それが政治的言説の基準点になっていると指摘しているのです。
この視点から竹田氏は、保守主義を「伝統・文化・権威を重んじる考え方」とし、革新主義を「それらを重視せず、合理性を追求して物事を革新させていく考え方」と整理しています。
そして自身は「完全な保守主義かつ、やや経済左派の位置」にあると表明しています。
多様化する保守の現在
現代においては、かつての「革新・保守」という単純な対立軸は薄れ、「保守」自体が多様化していると竹田氏は認識しています。
例えば、日米関係についても「親米保守と反米保守」の区分が存在し、皇室の問題についても保守派内で異なる見解が存在しています。
竹田氏自身もいわゆる「典型的な保守」とは異なる立場を取る場面があります。
例えば彼は脱原発を支持し、「原発を推進する人たちは、戦争が起きた場合に原発こそが最初に攻撃目標になることを知っているだろうか」と国防・安全保障上のリスクを指摘しています。
また特定秘密保護法に対しても「いつまでも秘密指定を続けられること」などを理由に慎重姿勢を示していました。
このように、竹田氏は「保守」というラベルに固執するのではなく、個々の問題に対して独自の分析と判断を行っています。
彼にとって保守とは、イデオロギーや政治的立場を超えた、日本の本質や伝統的価値観を見極めるための視座なのです。
日本人が保守すべきもの
では、竹田氏は具体的に日本人が保守すべきものとして何を挙げているのでしょうか。
まず第一に、「皇室」を中心とする日本独自の国家体制を保守すべきだと考えています。
竹田氏は明治天皇の玄孫であり、皇室についての研究・言及を多く行ってきました。
彼は皇室を日本の歴史と文化の連続性を体現するものとして重視し、皇室制度を守ることが日本のアイデンティティを守ることにつながると考えています。
第二に、日本の伝統的な価値観や道徳観を保守すべきだと主張しています。
例えば教育勅語については「道徳の根本規範」であり、「教育勅語を廃止決議して、教育現場から追い出したツケが出てきている」と述べ、日本人の道徳的基盤を守る必要性を説いています。
第三に、竹田氏は日本語や日本文化の保守も重視しています。
これは特番のタイトルにも表れており、日本語や文化が日本のアイデンティティの根幹をなすものとして捉えています。
杉田水脈氏の「皇室・神社・日本語がなくなると日本は日本でなくなる」という発言にも通じる思想です。
しかし重要なのは、竹田氏が「保守」を単に現状維持や過去への回帰ではなく、創造的なプロセスとして捉えている点です。
彼は「お歯黒が日本の文化かと言えば、それは終わったものですよ。ちょんまげや切腹が主流だった時代もあるが、復活させようとは思わない」という鈴木邦男氏の発言に同意し、伝統の本質を見極め、時代に合わせて継承していく姿勢を重視しています。
保守思想における理性と感情のバランス
竹田氏の保守観のもう一つの特徴は、理性と感情のバランスを重視する点です。
例えば天皇陛下の生前退位問題について、「陛下のお言葉が素晴らしいから感動した、というのと、陛下がおっしゃったのだから正しい、というのは違う」と述べ、「感動しても、その上で考えて、忌憚なく慎重に議論して判断すべき」と主張しています。
この姿勢は、感情に流されない冷静な判断を重視する一方で、伝統や権威に対する敬意も忘れない、バランスの取れた保守観を示しています。
憲法についても「憲法は、国民ひとり一人が幸せになるための道具であり、常に批判的な目で見ることが大切」と述べ、盲目的な護憲ではなく、批判的思考を持って憲法と向き合う姿勢を示しています。
現代日本における保守の課題
竹田氏は現代日本における保守の課題についても言及しています。
特に「保守同士でいがみ合っている」という分断の問題は、保守派内部での対立が保守思想の本質的な議論を妨げている状況を指摘しています。
また憲法改正をめぐる議論でも、「革新派は憲法を守れば日本は安全だと言ってきた。お互い極端になってきた」と述べ、保守派、革新派双方が極端な主張に陥りがちな状況に危機感を示しています。
竹田氏は「日本は左寄りの革新思想が深く根を張っていた」状況から、「平成12年ごろから一気に価値観が保守思想に転換した」と分析し、「日本が好き」と言える空気が形成されつつあることを肯定的に評価しています。
しかし同時に「いまだに日本の社会は全体的に左に傾いている」とも指摘し、バランスのとれた議論の必要性を説いています。
結論:動的で創造的な保守へ
竹田恒泰氏の「保守とは何か」についての考えをまとめると、彼は保守を静的・固定的なものではなく、動的で創造的なプロセスとして捉えています。
単に過去を懐かしむのではなく、伝統の本質を理解し、時代に合わせて創造的に継承していくことが真の保守だというのが彼の主張です。
皇室、日本語、伝統文化など日本のアイデンティティの核心を守りながらも、時代の変化に応じた柔軟な対応を求める姿勢は、古き良きものと新しいものの調和を目指す保守観と言えるでしょう。
竹田氏の保守思想は、単なる政治的立場を超えて、日本人としての生き方や価値観に関わる深い問いかけを含んでいます。
それは「日本人が保守すべきこと」を考えることが、すなわち「日本人として何を大切にし、どう生きるべきか」を問うことにつながるからです。
現代社会において、伝統と革新、保守と進歩のバランスを取りながら、日本のアイデンティティを守り育てていくための思索として、竹田氏の保守論は多くの示唆を与えてくれます。
それは、過去に固執するのでも、闇雲に変化を求めるのでもない、伝統の本質を見極め、創造的に未来へと継承していく姿勢と言えるでしょう。
