3. 駿河湾地震が引き起こすリスク
駿河湾地震がもたらす影響
駿河湾地震が発生した場合、特に静岡県を中心とした広範囲に甚大な被害が及ぶと予想されています。地震の規模としては、マグニチュード8クラスの巨大地震が想定されており、震度6以上の強い揺れが広範囲に及ぶことが予測されています。具体的には、静岡県全域や山梨県、愛知県、神奈川県、長野県などの一部地域で震度6強から6弱の揺れが発生し、それに隣接する地域でも震度5強程度の揺れが予想されています。
さらに、この地震によって津波の発生も大きなリスクとなります。特に駿河湾沿岸や伊豆半島南部、遠州灘沿岸では、津波の高さが5メートルから10メートルに達する可能性があり、一部地域ではそれ以上の大津波となる恐れもあります。津波による浸水被害は、沿岸部の住民やインフラに甚大な影響を与える可能性が高く、迅速な避難が求められます。
建物被害と交通網への影響
駿河湾地震による揺れは、多くの建物に深刻な被害をもたらすと考えられています。特に耐震性の低い建物は全壊するリスクが高く、内閣府による試算では、東海地震(駿河湾地震を含む)によって約26万棟の建物が全壊する可能性があるとされています。また、交通網への影響も甚大であり、東海道新幹線や高速道路など主要な交通インフラが寸断される恐れがあります。これにより、物流や人々の移動が大幅に制限されるだけでなく、救援活動にも大きな支障をきたす可能性があります。
さらに、この地域には浜岡原子力発電所も位置しており、大規模な地震によって原子力施設への影響も懸念されています。過去の駿河湾地震(2009年)では、浜岡原子力発電所で自動停止が行われたものの、一部設備に損傷が発生しており、大規模な地震時にはさらなるリスク管理が必要です。
南海トラフ地震との関連性
駿河湾地震は、南海トラフ全域で発生する巨大地震とも密接に関連しています。南海トラフは、フィリピン海プレートとユーラシアプレートが接する場所であり、このエリアでは100~150年周期で巨大地震が繰り返し発生しています[6]。前回の南海トラフ巨大地震(昭和東南海地震および昭和南海地震)は1940年代に発生しており、その後70年以上経過している現在、新たな巨大地震の発生リスクが高まっています。
南海トラフ全域でマグニチュード8~9クラスの巨大地震が発生した場合、その影響は駿河湾地域にも及びます。このような連動型の巨大地震では、広範囲にわたって甚大な被害をもたらすだけでなく、一度津波や揺れが収まった後にも再度大きな揺れや津波が襲う可能性があります[5]。そのため、防災対策としては単一の地震だけでなく、連続して起こり得る複数の災害シナリオを想定した準備が求められます。
南海トラフ巨大地震による被害想定
南海トラフ全域で発生する巨大地震は、日本政府によって「最悪の場合」を想定した被害予測も行われています。その試算によれば、この地域でマグニチュード9クラスの地震が発生した場合、日本全体で23万人以上の死者数と約220兆円もの経済的損失が見込まれており、その影響は東日本大震災を遥かに超えるものとなります。静岡県内でも多くの犠牲者や建物被害が予測されており、防災対策を強化する必要性は非常に高いです。
このように駿河湾地域は単独でも非常に高いリスクを抱えていますが、それ以上に南海トラフ全域との関連性を考慮すると、その影響範囲と被害規模はさらに拡大します。次章では、このようなリスクに対処するための防災対策について詳しく解説します。