5. 法制度の課題
「法律があれば大丈夫なんじゃないの?」
そう思われるかもしれません。確かに日本にも個人情報保護法はありますが、実は国際的に見ると、日本の法制度にはいくつかの課題があるんです。
まず、日本の個人情報保護法。2005年に施行され、2022年に大きな改正がありました。でも、この法律、主に企業による個人情報の取り扱いを規制するものなんです。
「え?じゃあ、国による情報収集は?」
そこなんです。
実は、国による情報収集に関する包括的な法律が日本には存在しないんです。
例えば、アメリカには外国情報監視法(FISA)という法律があります。これは、国家安全保障のための情報収集活動を規定し、同時に市民のプライバシーを保護するための法律です。
「へー、アメリカってすごいんだね」
そうなんです。でも、アメリカだけじゃありません。イギリスには調査権限法、フランスには国家安全保障法、ドイツには連邦情報局法など、多くの先進国が情報収集活動に関する法律を整備しています。
一方、日本はどうでしょうか。
「うーん、なんかあるのかな?」
残念ながら、そういった包括的な法律はないんです。日本の情報収集活動は、主に自衛隊法や警察法などの個別の法律に基づいて行われています。これでは、体系的な情報収集活動が難しいんです。
例えば、2013年に特定秘密保護法が制定されましたが、これは情報の管理に関する法律であって、情報の収集に関するものではありません。
「じゃあ、日本の情報収集って、法的にグレーなの?」
そう言えるかもしれません。
実際、2015年に登場した安全保障関連法でも、情報収集に関する明確な規定は盛り込まれませんでした。
この法制度の不備が、日本の情報収集能力の低さにつながっているんです。
例えば、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻の際、日本は独自の情報収集能力の不足から、アメリカからの情報に大きく依存せざるを得ませんでした。
「でも、法律を作ればいいんじゃないの?」
その通りです。
しかし、ここにも課題があります。
日本では、個人情報保護に対する意識が非常に高いんです。2021年の内閣府の調査によると、約80%の人が個人情報の取り扱いに不安を感じているそうです。
このため、国による情報収集を可能にする法律の制定には、強い反対意見が予想されます。実際、2013年の特定秘密保護法制定時には、大規模な反対デモが起きました。
「難しい問題だね…」
そうなんです。
個人の権利保護と国家安全保障のバランスをどう取るか。これは日本だけでなく、世界中の国々が直面している課題なんです。
では、こういった状況下で、技術的にはどのような対策が可能なのでしょうか?
次は、その点について詳しく見ていきましょう。私たちにできることもきっとあるはずです。