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それ、危ない!:サウナで「整う」の裏に潜む 4つのリスク

『整いました』と、爽やかな顔をしてサウナから出てくる人たち。「『整う』っていう感覚、あれ気持ちいいんだよ。」と、サウラーの人たちが口をそろえて言っている。世は、空前のサウナブームだ。だが、『整う』って、どういう状態なのだろう。「それって、本当に健康にいいの?」
この疑問を追究すべく、このブログでは、『整う』と、その裏に潜む『危なさ』について追究する。

目次

サウナで『整う』とは、どういう状態のことか:『整う』の正体とは

「ガマンだ。あと、5分~。」
「まだまだ、あと3分」

サウナ愛好家の人たちは、したたる汗を拭いながら、まるで修行僧のように高温に耐える。ランナーズハイという感覚があるが、サウラーズハイの状態が訪れるのを自分と戦いながら待つ。
そして、自らの努力を賞賛しながら水風呂につかる。
至福の時だ。
『プハー、整いました。』

ところで、この『整いました』という状態の正体は何なのだろうか。

脳内で放出されされている物質がある

サウナで汗をたっぷりかき、水風呂に入って火照った体を冷やす。その後に外気浴を浴びて休憩。
この、①サウナ、②水風呂、③外気浴という3つの過程を1セットとする。

これを2~3セット繰り返すと外気浴をしている間に『恍惚感』を感じることになる。この『恍惚感』がいわゆる『整う』という状態。

体が軽くなり、宙を舞うような浮遊感、そして何やら五感が研ぎ澄まされる感覚。
「もう一歩で、『悟り』を開けるかも」
というような恍惚感。

一度この『整う』という感覚を味わうと、さらに快感レベルを上げたくて、
『サウナはもっと高温で、もっと長い時間を』
『水風呂は、さらにさらに低温で、こちらももっと長く』

と、考えだす。
そして、それを勧める『専門家』なる人物もいる。

では、医学的に『整う』というのは、どういう状態なのだろうか。
国際医療福祉大学大学院教授で、日本サウナ・スパ協会理事を兼ねる前田眞司氏は、

日本で一般的な高温のドライサウナ

「『整う』とは、体がリラックスして副交感神経が優位になり、いわゆる脳内麻薬が出ている状態」

と、解説している。

副交感神経とは、内臓の働きを調整する自律神経の一つ。
交感神経と対をなす。

交感神経は、体を動かすアクセルに例えられる。
交感神経が活発になると、例えば心臓の心拍数が上がり、敵に襲われるなど、立ち向かったり逃げたりするような烈しい運動に耐えられるようになる。

一方副交感神経は、ブレーキの役割。
人間の脳や体の機能を鎮める役割がある。
副交感神経が優位になると、『リラックス』状態になる。

前田氏は、『整のっている』時の脳の状態を、次のように説明している。
脳内麻薬、例えばオキシトシンという物質が分泌され、副交感神経が優位になり、さらにβーエンドルフィンセロトニンなどが脳内で放出されている」
と。

オキシトシンは、『ストレスを受けたときに増えるコルチゾールという物質を押さえる作用』があるという。
別名『愛情ホルモン』
なぜ、『愛情ホルモン』と言われるかというと、赤ちゃんとスキンシップをする母親や父親にこのホルモンが増えることが分かっているから。

私には、1歳半になる孫がいて、週1・2回おもりのために孫のところに行く。自分で言うのも何だが、デレデレ状態になる。
私は、父親でも母親でもないおじいちゃんだ。だが、間違いなく孫と一緒の時の私の脳にも、オキシトシンが大量に出ている。

βーエンドフフィンは、苦痛を緩和する効果があり、モルヒネの約6倍の鎮痛作用がある。
セロトニンは、覚醒、精神安定や安心感をもたらす。
だから、セロトニン量が低下すると、人は不安、うつ、攻撃性が表れ、精神病的な状態になる。

『整う』状態で、注意すべき点

サウナで『整う』という状態は、簡単に、そして安価に脳内に快楽を促す物質を放出させることができる。
安価に、『快楽体験』を味わうことが出来ると言う点では、優れた娯楽の一つと言えるだろう。

だが、注意しなければならないのは、『整う』という状態に至るために、肉体へは相当の『負担』がかかっているという点。
高温のサウナと、低温の水風呂には、心臓や血管に相当のリスクがかかっている。

サウナで『整う』に至るまでには、『心臓と血管に相当の負担がかかる』

『整う』を一度経験すると、「またサウナに行きたい」、とサウナ通いが習慣化することがある。
「人は、『ご褒美』を期待して行動を選択する動物だ」
と、語るのは東京慈恵会医科大学麻酔科学講座教授、同医院医師の坪川恒久氏。

「脳の側座核と呼ばれる部位から、ドーパミンが放出されると人は快楽を感じる。ドーパミンは、さらなる報酬への期待をもたらす。このような脳の仕組を報酬系と呼ぶ。」

と言っている。
そして、βーエンドルフィンが、このドーパミンの放出を促す。また、ドーパミンの効果を持続させる働きもある。
知っておきたいのは、これらの物質で得た『快感』には、強い中毒性がある、という点だ。

サウナジャンキー、サウナ中毒を自称する人がいるが、脳の機能的に言えば、脳内麻薬による『中毒』状態に陥っている、ということ。普通の状態ではない状態に脳はあるのだ。

『整う』という言葉のイメージだと、何か体のいろいろな部分がサウナに入ることで『調和』した、というイメージをもつ。
だがサウナの『整う』は、決して人間本来の調和のとれた状態ではない。
むしろ、『調和のとれた状態』から、『基準値外へ、身体の状態が偏った状態』にあることを、意識しておく必要がある。

最も怖いのは、『整う快楽』を求める気持ちが、習慣性をもってしまうことだ。いわゆる中毒状態に陥ることの危険性を、意識しておきたい。
サウナ中毒となると、快楽を求める余りもっと極端な高温へ、もっと極端な冷水へ、と思考することになる。

坪川氏は、水風呂に入るときは、『必ず、自分の手首に指を当て、心拍数を確認すること』を勧めている。
水風呂で最も怖いのは、『血管迷走神経反射』だと言う。
水風呂で、冷たい水の全身浴をすると、副交感神経の迷走神経が一気に活発化する。
それによって、心拍数が急激に低下してしまうことがある。
最悪の場合、脳に十分な血液がいかなく、失神してしまう。
これによって、『水風呂で溺れてしまい救急車のお世話になる』という事例も発生している。

多くの医者が、
『刺激を求めるためにサウナに入る』という習慣には、注意をすべきだと指摘している。
特に100度前後の超高温のサウナを好む方は、要注意。

はっきり言って、この状態の常習化(サウナ中毒)は危険だ。
体の体温調整機能に負担がかかり、異常を来してしまう場合もある。
気がつかずに、体温が39度異常に上がっている場合もある。

日本のサウナ文化と、本場フィンランドのサウナ文化は別物

ロウリュ式サウナ

サウナや水風呂には、様々な健康効果があることは医学的な免疫学調査でも明らかになっている。
心臓病、脳卒中、高血圧のリスクを下げる効果も期待できる、とされる。

だが、これらの医学的な見地は、フィンランド式サウナによる検証データによっているのだ。
『本場のサウナ文化は、日本のサウナ文化とは実は違っている。』
この点は、知っておかなければならない。

だから、フィンランド人が日本のサウナを体験すると、
「日本人は、なんであんなに高温でカラカラのサウナに入っているのか」
というのだ。

日本でサウナと言えば、十中八九、温度が80℃~100℃のドライサウナ。
一方、フィンランドのサウナは、ストーブの焼け石に時々水をかける(ロウリュ)形式のサウナ。
湿度は高い。
温度は、60℃~80℃
入った瞬間に、「熱い」と感じることはまず無い。

また、「サウナと冷水浴を交互に繰り返す」という人は、フィンランドサウナではほとんどいないのだ。
ただし、サウナの後にシャワーを浴びたり、自然の湖や海に入って体を冷やすという人はいるが、どちらかというと少数派。

サウナに伴う、4大リスクを回避する

サウナは、入り方によっては体に良い。
では、どういう入り方をすれば良いのか。

それを考えるには、日本のサウナの入り方に伴う4大リスクを回避することが肝要だ。

サウナリスク:「高温・乾燥サウナに潜む危険」

①「体温異常」

日本のサウナは、高温で乾燥したドライサウナであることが一般的。
だが、「高温」・「乾燥」は身体にとって負担であり、弊害であることを意識しておきたい。

できれば、60℃から80℃のフィンランドサウナの状態に近いサウナを選びたい。
また、ドライサウナでは無く、ロウリュ式(石に水をかけて湿気を持たせる式)のサウナを選ぶ。

人の体温は、平均36℃前後。
だが、高温サウナのために体温が39℃以上になってしまうことがある。
この状態が続くと、頻脈・不正幕・血圧不安定・低酸素血症などが怒る危険性が高まる。
もし、体温が40℃以上になってしまうと、致命的な症状を引き起こす危険性が高まってしまうので本当に注意が必要だ。

②血圧異常(超低血圧)

高温のサウナに入ると、血管が拡張して全身の血流が良くなる。
程度なら、健康に良い。
だが度を超すと、血管が広がりすぎて、超低血圧に陥ってしまう。

普段から降圧剤(血圧を下げる薬)を飲んでいる人は、フィンランド式の低温サウナでも十分注意を払う必要がある。
ましてや、日本式の高温のドライサウナに入るのは、十分に考えてからがよいだろう。

心臓を取り巻く冠動脈が狭くなっている方も、要注意。
サウナでいきなり血圧を下げると、血管内で虚血(組織や細胞に十分に血液がいかない状態)が起こり、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まる。
また、心臓の末梢神経では、血液が回りにくくなり狭心症を起こす可能性もある。

サウナの健康効果を考えると共に、この点のリスクも考慮することが必要だ。

③脱水症状

サウナに入ると、1回で300~400㏄の水分が失われると言われる。
サウナに何度も入り、1日で体重を2~3キロ落としたなどという強者もいる。

だが、これは本当に痩せるのではなく「血管内脱水」という症状を起こしているだけ。
つまり、血管内の水分が失われているだけで、サウナの後にビールなどの水分を取れば、すぐに元に戻る。

ところで、脱水状態の血管の中では、何が起こるだろうか。
血液がドロドロに濃縮された状態になるのだ。
当然、脳梗塞、心筋梗塞、痛風、尿管結石のリスクが高める。

また、腎臓に血液が行き渡らなくなり、腎臓にダメージを与えるリスクも高まる。
もし、腎機能が損傷されると、ほぼ回復しないので注意が必要だ。

水風呂リスク:「冷たすぎる水風呂に全身を浸す危険」

④超高血圧状態

急激に全身を冷やすと、何が起こるか。
血管が、絞まり短時間に、急激に「超高血圧状態」になる。

どのくらい血圧が上がるかは、個人差があるが、「水風呂で倒れた」という人は、案外多いのだ。
フィンランド人が一般的に行っているサウナ文化を真似して、自然に体を冷ますか、「ぬるめのシャワーを頭から浴びる」。

どうしても水風呂に入りたいなら
「まず、ぬるめのシャワーから徐々に~」
そして、「まずは半身浴」などというように段階を踏む必要があるだろう。

まとめ:フィンランドサウナの入り方を参考にする

サウナは、入り方に気をつければ健康効果をもたらす。
そのためには、フィンランド人のサウナ文化を参考にすべき。

①低温、高湿度のサウナに短時間で。
②水風呂は、段階を踏んで短時間で。(ぬるめシャワーだけという手もある。)

『整う』という感覚は、脳内ホルモンに脳内麻薬物質が分泌されている状態。
確かに気持ちいいが、『整う』は「身体が調整された状態」ではなく、「身体の負担の上にある状態」で、必ずしも『健康的』な状態ではない。

『整う』という「快感」を求めるあまり、「サウナ中毒」に陥り、より刺激(高温・冷水)を求めることは、健康に良くはない。
サウナは、正しく利用すれば心身共によい影響を得ることができる。

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