JAXAが打ち上げた小型実証機「スリム(SLIM)」が、日本初の月面着陸に成功しました。そのスリムに、タカラトミーなどが開発した超小型変形ロボット「SORA―Q(ソラキュー)」が搭載されていました。『やるなー、日本のおもちゃメイカー』。この『ソラキュー』月探査で、どんな働きをするのでしょうか。
JAXAの月探査機スリムに搭載された 月面探査ロボット、「SORA―Q(ソラキュー)」とは
令和6年1月20日に、うれしいニュースが舞い込んできました。
JAXAが前年に打ち上げていた日本の月面探査機「SLIM(スリム)」が見事着陸に成功しました。
そして、スリムに搭載されていた、タカラトミーなどが開発した超小型変形ロボット「SORA―Q(ソラキュー)」も無事月面に到達することができたのです。
「おもちゃメーカーが開発した?」
「何それ」
そう思った方も多いのではないでしょうか。
タカラトミーなどが開発した、月面探査用ロボット『ソラキュー』とは
ソラキューは直径約8センチ、重さ約250グラムの球体です。その球体が、スリムが着陸する直前に本体から放出されます。ソラキューが月面に到着すると、球体が左右に開いて変形。外殻を両輪のように回転させて走行する探査ロボットです。
前後にカメラが2台ついていて、走行しながら周辺の環境や本体のスリムがとうなっているかを撮影し、データを送ってくる仕組です。
ネックは、『電池が切れると活動が止まってしまう』という点です。
つまり、地球に戻ってくることは想定されていません。
トランスフォーマーの技術を活用
『ソラキュー』の、『変形する』という発想は、タカラトミーのおもちゃ『トランスフォーマー』のアイデアから生まれました。
日本のおもちゃメーカーの発想が、最先端技術の世界(宇宙開発)で生かされるなんて、面白いですねえ。
わくわくします。
また、『ソラキュー』が変形した後の両輪が回転しながら進む動き、砂をかき分けて体を浮かせながら移動する動きは、なんと「干潟で動く、ムツゴロウやウミガメの動き」がヒントになっているそうなんです。
この目の付け所、まるで『下町ロケット』を彷彿させられます。
『苦労が多かったのだろう』と考えると、じんわりと目頭が熱くなります。
月面探査機スリムが 月面着陸に成功したことにどんな意義・意味があるのか
小型実証機「スリム(SLIM)」による日本初の月面着陸成功は、日本の宇宙開発力の高さを世界に示しました。この意味は大きいです。
月面着陸の成功国は、これまで米国、旧ソ連、中国、インドの4カ国でした。そこに日本が5番目の国として加わったわけです。
月探査は、今後約20年で150兆円近くに急拡大すると予想される宇宙ビジネス市場です。そこに、『日本が割って入ることに成功した』、そういうことになります。
これにより、日本の持続的経済成長への貢献が大いに見込まれるわけです。
日本の着陸技術が世界を一歩リード
世界の探査機の着陸精度が誤差数キロ・メートル以上だったのに対し、日本の『スリム』は、誤差100メートル以内となる世界初の「ピンポイント着陸」をねらい、誤差の範囲内の着陸に成功したと思われます。
(ただし、現在詳しいデータの解析中。その結果で改めて成否を判断する予定。)
日本の技術は、本当にすごいですね。
それまでの世界標準を一気に塗り替えて着陸地点の誤差を減らしました。
ところで、なぜ誤差を小さくする必要があるのでしょうか。
なぜ、少ない誤差で月面に着陸する必要があるのか
着陸予定地のクレーター付近には、隕石(いんせき)の衝突で掘り返された月のマントル由来のカンラン石があります。
そこの組成などを解析すれことができれば、月の起源を解明できる可能性があります。
月がどんな成分の岩石からなり、どんな進化をとげてきたかを知ることは、地球の成り立ちの理解にもつながるわけです。
そのためには、月面に露出したマントルの成分を分析する必要があります。
そして、マントルを調べるためには、マントルが露出している月のクレーター付近の傾斜面の比較的平らな所に着陸する必要があります。
だから、日本の『100メートル以内の誤差で高精度に着陸するピンポイント着陸』技術が実現すれば、世界を驚かせるに足る意義・意味のある成果となります。
さらに、JAXAは、着陸時に本体の機体をわざと横倒しにしてそこから建て直す『2段階着陸方式』など、挑戦的で斬新な新技術の開発にも取り組んでいます。
JAXAのSLIM(スリム)は何時打ち上げられたのか
スリムは昨年(2023年・令和5年)9月に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられました。
そして、同年12月に月の周回軌道に乗ることに成功します。
そして、令和6年1月20日の午前0時ごろ、月面へ降下を開始し始めます。
約20分後、スリムは月面に降り立つことに成功しました。
スリムの着陸目標地は月の東側の赤道のやや南にある「神酒(みき)の海」と呼ばれるクレーター(直径約300メートル)付近の傾斜地でした。
ここへ、「誤差100メートル以内のピンポイント着陸」することが、まず第一目標です。
AXA宇宙科学研究所の国中均所長は「計画した軌道をなぞることができており、実証できたと考えている」と述べました。
ただし、『データを分析して成否判定するためには、約1カ月かかる』とも述べています。
日本の探査機が地球以外の天体への着陸に成功したのは、2005年のはやぶさ(小惑星イトカワ)、19年のはやぶさ2(小惑星リュウグウ)に続き3例目となりました。
「SORA―Q(ソラキュー)」の役目
スリムに積まれていたカメラ付きの月面探査用小型ロボットは、実は2機あります。
一つは、月面を跳びはねながら移動する「LEV(レブ)―1(ワン)」。
もう一つが、「LEV―2」と呼ばれる探査ロボットが、玩具メーカーのタカラトミーなどが開発し、球体から変形して車輪で移動する「SORA(ソラ)―Q(キュー)」です。
ソラキューら探査ロボット「レブ-1」「レブー2」は、これから、主に二つの大きな役目を果たすことになります。
一つ目が、本体のスリムがどういう状態になっているのかを地上に送信する役目。
もう一つが、月面環境を地上に送信する役目です。
着陸機スリムの異常?、『スリム着陸の成功は60点』
JAXAは、スリムの月面着陸の成功を発表しました。
しかし、晴れがましい席にもかかわらずJAXAの関係者の表情はさえないものでした。
どうしてでしょうか。
実は、着陸は成功しましたが、直後に機体の太陽電池が発電していないことが判明したからでした。
これは、機体に何らかの異常が生じていると考えられます。
例えば、『着陸船スリムの着陸姿勢に、何らかの問題があり発電できない』
などです。
これによりJAXAの関係者は、『今回の着陸は、成功したものの60点のできだ』と自己評価したわけです。
スリムの状態を探るために、ソラキューなどの探索用ロボットの活躍が期待されます。
また、第二の役割である、月面環境調査もあります。
トランスフォーマーの技術、そして、ムツゴロウやウミガメの動き、さらに「レム-1」の飛び跳ねで、役目を果たしてくれることを期待します。
まとめ
・暗いニュースが続いた令和6年の正月に、明るいニュースが飛び込みました。日本の月面着陸機スリムが、月面着陸に成功しました。
・また、スリムに積まれていた月面探査用ロボットの「ソラキュー」なども、無事月面に降り立つことに成功しました。
・これにより、日本は世界で5番目の月面着陸に成功した国になりました。
・さらに、日本の月面着陸機スリムは、着陸誤差が100メートル前後という、今までの世界基準を大幅に短縮しました。(検証中)
・月面探査用ロボット「ソラキュー」は日本のおもちゃメーカータカラトミーなどの開発で、「トランスフォーマーの技術」や「ムツゴロウやウミガメ」の動きを取り入れた画期的な機械です。
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