三つの系統をもつ、スサノオを祀る神社
神道、不思議な宗教
神道は、自然信仰から始まる日本固有の民俗信仰。
平安時代になると神祇制度(じんぎせいど)が整い、神道の形が出来上がる。
神祇とは、「天神地祇」の略。
つまり、
神祇の「神」とは、天神つまり「天つ神」を指す。
神祇の「祇」とは、地祇(ちぎ)つまり「国つ神」を指す。
さらに、仏教などの影響を受け「本地垂迹説」が生まれ、さらには、本地垂迹説の逆の「神の方が上で、仏は仮の姿だとする」伊勢神道や、唯一神道(吉田神道)などの神道理論が生まれた。
神道の特徴
神道にも、「何々神道」と名のつくものはあるが、一言で神道の特徴を説明するなら、
『神道は、開祖も無く、教典も無く、救済も無い』 宗教
と言える。
氷川神社
開祖も無く、教典も無く、救済も無い宗教といわれる神道。
神道に登場する天つ神として、アマテラスについで有名な神に「スサノオ」がいる。
そのスサノオを祀る神社として、まず氷川神社がある。
氷川神社の社記によると、
氷川神社は、今からおよそ2千有余年前の第五代天皇の孝昭天皇(こうしょうてんのう)の御代の3年4月末のご創建と伝えられる。
第12代天皇の景行天皇の御代に、その皇子の日本武尊(やまとたけるのみこと)が東夷鎮定の祈願を成された神社が氷川神社だったと言われる。
第13代天皇の成務天皇の御代に、出雲族だが朝廷の名によって武蔵国国造(むさしのくにのみやつこ)となった兄多毛比命(えたもひのみこと)が氷川神社を尊び、崇拝した。
兄多毛比命は武蔵国国造として善政を行ったので、兄多毛比命の名声と共に氷川神社の神威も増し、格式も高まった。
さらに、第45代聖武天皇の御代に、武蔵一宮と定められた。
第60代醍醐天皇の御代に制定された延喜式神名帳には、明神大社として、月次新嘗案上の官幣に預かった。
武家時代になっても、鎌倉・足利・北条・徳川氏等相次いで当社を尊仰、社殿の再建や造営を行っている、
とある。
氷川神社の社記を見ると、氷川神社はヤマトタケルノミコト(倭建命)が祈願したことに由緒を求めている。
ヤマトタケルについては、「古事記」にも「日本書紀」にも、詳しい物語が載っている。
だが、ヤマトタケルが氷川神社に祈願した話は、「古事記」にも「日本書紀」にも見当たらない。
「古事記」のヤマトタケル
「古事記」に登場するヤマトタケルは、暴力的な性格。
父の景行天皇は、息子の暴力性を恐れ都から遠ざけるために、各地の種族の討伐を命令する。
ヤマトタケルが、首尾良く一つの地域の討伐に成功して都に帰還すると、すぐに別の地域の鎮圧を命じる。
タケルは、「父の景行天皇は、自分の事を疎ましく思っていて、自分が死ねばいいと考えているのではないか」と疑い嘆くシーンも出てくる。
「日本書紀」のヤマトタケル
ところが、「日本書紀」の中には、『ヤマトタケルが父に疎ましく思われていた』という話は一切出てこない。
ヤマトタケルは、父の景行天皇の命令に従順に従う忠実な息子、として描かれていた。
同じ神を祀るのに、系統が異なることがある日本の神社
朝廷に従わない地方の種族を討伐するために出かける、ヤマトタケルが祈願した氷川神社の祭神は、「スサノオ」
スサノオを祀る神社には三系統ある。
①氷川神社と、②八坂神社(祇園社)と、もう一つが、出雲から勧請されてスサノオを祀る③『須賀神社・八雲神社・出雲神社」』という出雲系神社だ。
①氷川神社は、「ヤマトタケルが討伐祈願をしたスサノオ」を祀る。
②八坂神社は、「スサノオの本地仏であり、祇園精舎の守護神の午頭天王」を祀る。
③そして、須賀神社・八雲神社・出雲神社は、「八岐大蛇を退治したスサノオ」の分霊を祀る。
氷川神社はどのエリアに多いか
氷川神社は、埼玉県や東京都に住んでいる人にとってはメジャー。
だが、鎮座する地域は限られている。
全国に280社あり、そのうち埼玉県に162社。半分以上は、埼玉県にある。
東京都には59社。
茨城・栃木・北海道にそれぞれ2社ずつ。
神奈川県・千葉県・鹿児島県に1社ずつ。
ほとんどが埼玉・東京を含めた関東に位置する。
氷川神社の由来について
氷川神社に、元々どのような神が祀られていたのかは、明確では無い。
『ヒカワ』という神が元々は鎮座しており、その名は出雲の簸川(ひのかわ・〈現・斐伊川〉)が由来である。
という説がある。
また、
とする説もある。
斐伊神社の近くには、スサノオが八岐大蛇を退治した後、その頭部を埋めたところから生えたとされる八本杉がある。
八岐大蛇伝説は、龍や大蛇を祀る龍神信仰の一形態。
龍・大蛇は洪水を象徴し、スサノオ伝説は洪水克服の願いを意味している。
つまり氷川神社のある地域は、例えば埼玉や東京、或いは茨城、千葉などは利根川や荒川の流域で、常に洪水の危険があった。それを治め、鎮めるために氷川神社が河川流域に建てられた、と考えられる。
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