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兄弟神社:大洗磯前神社と酒列磯前神社に祀られる出雲神が、なぜ常陸に?

目次

国づくりをした出雲族の神は、天孫族の神に破れた神

大洗の海岸

地上に戻った大己貴命は、その後積極的に国づくりを行った。
そのときに、相方となって手助けをしたのが少彦名命だった。

少彦名命は、あるとき海の彼方から船に乗って現れた一寸法師のような神だった。
少彦名命に、名を問うたが答えない。
とても無口で控えめな神でもあった。

控えめすぎて、国づくりの途中で、知らないうちに突然姿を消してしまう。
相棒が失踪してしまった大己貴命はあせったが、もう後の祭り。
しかたがないので後釜を探し、少彦名命の後釜になったのが、大神神社(おおみわじんじゃ)の祭神として有名な大物主(おおものぬし)の神だった。

こうして国づくりをすすめた大己貴命(大国主命)たち出雲族だった。
だが後の天孫ニニギの降臨の際、高天原の神たちとの戦い(実は、概ね話合いなのだが)に破れ、地上の統治権を天孫族に譲り渡すことになる。
出雲族は、敗者の神々なのだ。

大絵馬

少彦名命は、出雲族か天孫族か

大己貴命と少彦名命の神は、セットで祀られることが多い。
大己貴命が、最も信頼した相棒の神と言ってよい。

では、少彦名命という神は、どういう出自を持つ神なのだろうか。
一説には、神産巣日神の指の間から生まれたと言われ、また一説には高皇産霊尊の指の間から生まれた神だと言われる。

では、磯前神社の由緒には、どうあるのだろうか。
実は、大洗の方には、少彦名命の出自が無い。
だが、酒列磯前神社の由緒には、少彦名命は、『高御産巣日神(タカミムスヒ)の指の間からこぼれ落ちた小さな神』、とある。

『これは事件だ。』
少彦名命が、高皇産霊尊から生まれたのなら、少彦名命は天孫系の神ということになる。

大洗磯前神社見取り図

高皇産霊尊は、天孫系、神産巣日神は、出雲系

高皇産霊尊(タカミムスヒ)と神産巣日神(カミミムスヒ)は、対を成す神と考えられている。
高皇産霊尊は、「天孫が地上に降臨するとき、どの神を降臨させたら良いか」と、天照大神が相談した神。
だから一説には、天皇の祖はアマテラスと言うより高皇産霊尊だとする説もあるほどだ。
天照大神より上の、高天原に支配力を及ぼす神であり、男神と捉えられる。

対して、神産巣日神は大己貴命の命を救ったことからも分かるように、地上に影響力をもつ神であり、女性神と捉えられる。

だから、少彦名命が、高皇産霊尊から生まれたのか、神産巣日神から生まれたのかで位置づけが真逆になってしまう。
少彦名命は、国づくりの途中で失踪する。

神馬

出雲の神が、なぜ常陸に?

鹿島神宮や香取神宮は、天孫系の神が祀られている。
下の地図は、江戸時代の地図だが、天孫系の神社(鹿島・香取)と出雲系の神社(磯前神社)の配置を見ていただきたい。
常陸の国の鹿島周辺は、砂鉄がとれる地域。
つまり、鉄の産地だった。
古代において、鉄を手中に収めることは、国づくりには欠かせない重要侍講だっただろう。

当然、天孫族だけでなく出雲族も常陸には興味を示したはずだ。
そこで、出雲族は鹿島に近い大洗、もしくはひたちなかの海岸に上陸したのではあるまいか。



酒列磯前神社のサカツラの語源

左向きの逆列岩
右向きの逆列岩

ひたちなか市の海岸に、逆列岩(さかつらいわ)という地形が見られる。
在る所を堺に、岩が右向き・左向きにきれいに分かれている。
この逆さの向きの「逆列」が、「酒列」に変化して酒列磯前神社という社名が生まれたとする説がある。

酒列磯前神社

あくまで私見だが、逆列は、天孫族と出雲族の争いの暗示しているように感じる。
酒列磯前神社の主祀神は、少彦名命。
神産巣日神から生まれたという説と、高皇産霊尊から生まれたとする二説があるうち、酒列磯前神社の主祀神の少彦名命は、天孫系の高皇産霊尊から生まれたとされる。

このことについて大洗磯前神社の由緒は、全く触れていない。

まとめ:大洗磯前神社と酒列磯前神社に祀られる神様:出雲の神が、なぜ常陸に?

磯前神社のご祭神は、大己貴命(大国主命の別名)と少彦名命の神。
大己貴命の神は、出雲の神だ。
少彦名命が神産巣日神から生まれたのなら、少彦名命も出雲系の神。
だが、酒列磯前神社の由緒では、少彦名命は高皇産霊尊から生まれたとある。そうなると、天孫系の神だったことになる。

鹿島や香取には、天孫系の神を祀る、鹿島神宮と香取神宮がある。
磯前神社の由緒では、大国主命と少彦名命の二柱の神が、西暦856年に神磯に降臨したことになっている。

常陸の国に天孫系の神社と出雲系の神社が近いところに築かれた。
私見だが、出雲系の神と天孫系の神の勢力争いの爪痕のようにも感じる。

磯前神社を訪れるときに、観光だけでなく、どのような神が祀られているかに興味をもち、その裏にどのような出来事があったのかを考えながら参拝するのも、面白い。

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