MENU

挙手の回数で「関心・意欲」は評価できない。徹底解説

目次

今後重視される個人内評価のやり方とその工夫について


学校で行われる評価

 学校で行われている評価には,いわゆる相対評価絶対評価,そして個人内評価の三つの分類があります。
 いわゆる絶対評価は,目標に準拠した評価の観点を設けて行う観点別の評価です。(現在は当たり前になっていますが、私たちが現役の頃の学校現場は、相対評価中心でした。「5.4.3.2.1」の基準が明確化されていて、クラスの何%が5、何%が4、と決まっていました。)
 現在の学校現場では、絶対評価で行われています。また、補完的に個人内評価を行っているクラスも相当数あります。

補助的に行われている個人内評価

 個人内評価は,評価の観点を窓口にすることはもちろんですが、その子特有の資質や能力,目標に明確には示されてはいないけれど、その子の特異な資質や能力を,個性的に発揮している様子をとらえる評価です。

 多くの教室で、学習に取り組む姿を前回と今回で数値化させる実践がみられます。例えば、「関心・意欲・態度」などの観点を児童生徒に示し、「前回は5点満点で3点」と自己評価した子どもが、「今回は4と自己評価した。」だから、「関心・意欲」が高まったと評価するなどです。

 おそらく、これでも個人内評価となっているでしょう。しかし、先生方にお聞きしたいのですが、「このような個人内評価を、次の授業づくりに生かしていますか。」
 失礼ながら、「自己評価とし『個人内評価』をやらせてはいるが、教師が次時に生かす評価とはなっていない」とお答えになるのではないでしょうか。
 おそらく本校のご質問は、この点にあると推察します。『どうすれば、個人内評価を評価として授業に生かせるか』こういうことですよね。以下この点に沿ってお話しします。

「関心・意欲」とは何か、「思考・判断」とどう違うのか

 実は現在、有志の先生方とともに『新しいテスト問題の在り方』という主題を掲げ「テスト問題づくり」に取り組んでいます。
 学校現場の多くの先生方は、「些末な知識を問うテスト問題が変わらない限り、現場の授業は変わらない」と思っています。(平成15年現在)
 『現時点での関心・意欲」、「思考・判断」の観点のテスト問題は、多くが「知識・理解」の問題と変わらない。」という状況です。
では、「関心・意欲」を問う問題とはどのような問題なのでしょうか。

「関心・意欲」とは、過去の体験・経験から生まれた思いを問うことで評価できる

 私たちは、「関心・意欲」は、学習問題に対して、自分の過去の体験や経験から生まれる気付きや思いと関連付け、どう捉えるかを問うことで評価できると考えています。
 例えば、本時の中学年社会科の「飲料水の確保」の単元で、家の水道使用量の事実調べをして、それを発表するご授業をされていました。この発表で、水道の使用量がとても多い。お金がたくさんかかるだろう、などの発言がありましたね。
 それを受けて、二人の子がつぶやいていました。

しづくちゃん A

おじいちゃんの家は、お風呂が五右衛門風呂という風呂なの。昔はお水を井戸から汲んだんだって。だから水道代はゼロ円だったって言ってた。

翔君 ①

今も井戸から汲んでるの?

しづくちゃん B

ううん、今は水道なんだって。だから今は水道料を払っているよ。

翔君 ②

えー?、どうして?
 タダなのに井戸を止めたの?
お金がかからない方がいいと思うんだけど・・・。

 このような会話だったと思います。


 しかし、このつぶやきレベルの二人の会話は、授業とは全く関係ないところで行われていました。二人とも発表として、全体の前で意見を言うことは一度もありません。
 一度も挙手をせず、一度も発表をしなかったこの二人の「関心・意欲」はCでしょうか。
 そんなことはありませんよね。

  • 「しづくちゃんA」(仮名)は、各家庭ともたくさんの量の水を使っていることを知り、この子の生活体験・経験から出てきた気付きを言葉にしています。
  • それに対して、「翔君①」(仮名)は、しづくちゃんの発言(学習経験)を捉えて生まれた疑問です。
  • さらに、「しづくちゃんB」は、翔君の発言を受けて気付いたこと・思ったことです。言葉の裏に「あれ、どうして井戸から水道にしたのかな」という疑問が隠れていたかもしれません。
  • 「翔君B」は、「お金がかからない井戸水から、お金がかかる水道にしたのはなぜ」という疑問を持ったことを示しています。

 二人とも、自分の生活体験・経験、先行する学習経験を基に「気付き」を発しています。ただし、気付きは、たいていの場合、そのままにしておくと、すぐに忘れ去られます。言った本人も、そう長く記憶していないでしょう。
 このレベルの「気付き」を自分でも意識できるように、記憶に残るようにするためには、例えば文章化するなどの方法が必要になります。
「あなたの今日の授業の『関心・意欲』は何点ですか」と聞くだけでは足りません。


 ある教師は、授業の最後の5分間を「授業を通して気付いたこと・思ったこと」を書く時間に割り当てていました。この「気付き」が書かれたノートを、教師は毎時間全員分を読んで、次の授業の展開を考えることが出来れば理想的です。しかし、教師にそのような時間は無いでしょう。そこで、「毎時間10人分読む。今日は、1番から10番」「明日は5番から15番」などと、自分の出来る範囲内で、気付きを読む人数を絞ってもかまわないと思います。
慣れないうちは、5人分でも授業創りにとても有効に働くと思います。試してみて下さい。


 5人程度の評価では成績を付けられない、という考えもあるでしょうが、大丈夫です。単元の評価は別に出来ます。単元を通しての「関心・意欲」の評価は、単元を終えたときに「気付き・思い」を書かせることで出来るのです。単元途中の評価は、成績を付けるための評価として使う必要は必ずしもないのです。

社会科における「思考・判断」と「関心・意欲」はどう違うのか

 この質問もよく受けます。違いを一言で言うと、

「思考・判断」とは、資料を根拠とする「気付き・(主観的な)思い・(客観性を加味した)考え」のこと。
「関心・意欲」とは、体験・経験を根拠とする「気付き・思い・考え」のこと。

 そこで、「思考・判断」を問う試験問題は、必ず『どんな資料(資料と資料)』から『どのようなことを読み取り』、『どのように考えたり、判断したり』したのかを問います。
 「思考・判断」を問うときは、必ず根拠としての資料と関連させた問いとなる、ということです。
 「先行する生活体験〈経験)や学習体験〈経験)」を根拠として示すことを求める「関心・意欲」を問う問題と、ここが違ってきます。

挙手の回数で「関心・意欲」は評価できない。「気付き・思い・考え」を表現する場作り、システム作りが個人内評価成功の鍵

 関心・意欲の観点として,「意欲的に挙手している。」という評価規準を設け「挙手5回以上がA」とする学校があったとします。
 この観点から評価すると,授業で意欲的に発表する子であるA君やB君のよさは比較的簡単に見取れます。しかし,本時社会科で、発表をしなかった、しづくさんや翔君、また自分では発表しなかったが,隣の席のC子さんに「C子さん,(よい意見だから)言ってみな」と発言を促していたD男君の「友達の,学習への出番を促す力」というようなよさは,なかなか評価されずらいです。
 例えば、授業終わり5分間に振り返りの時間など、気付いたこと、思ったこと、分かったことなどを書く時間を設けるなど、発表しない子、またその子の特異なよさを見取り評価できるようにするシステムを構築することが,個人内評価を成功させる鍵となるでしょう。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次