
こんにちは、なおじです。
月給20円——。
明治時代、その金額を提示された士族の娘は、なぜ震えるほど悩んだのでしょうか。
今朝の「ばけばけ」を見て、心が揺さぶられた方も多いはず。
トキが外国人ヘブンの女中話を断ったあのシーン、単なる仕事の選択ではなかったんです。
そこには明治という時代が女性に強いた、見えない鎖がありました。
「洋妾(ラシャメン)」——その言葉一つで、人生が終わる時代。
史実の小泉セツも、同じ苦しみを味わい続けたと告白しています。
元社会科教師として35年、生徒たちに歴史を教えてきた私も、この時代の女性の立場には胸が痛みます。
今日は、トキの決断の裏にある明治女性の苦悩を、史実とともに紐解いていきましょう。

トキが女中を断った本当の理由
破格の報酬に隠された「代償」
錦織が提示した条件は月給20円。
現代の価値で約50万~80万円です。
当時の一般的な女中は月90銭~1円程度でしたから、なんと20倍以上もの高給でした。
小学校教員の初任給が月5円という時代ですから、いかに破格か分かりますね。
借金に苦しむ松野家にとって、まさに救いの手。
ところが、トキはその場で飛びつきませんでした。
高すぎる報酬には、必ず裏がある——そう直感したんです。
「ラシャメン」という言葉の恐怖
トキが最も恐れたのは何か。
それは**「洋妾(ラシャメン)と呼ばれること」**でした。
「ラシャメン」とは、明治時代に外国人男性と親密な関係を持つ日本人女性への蔑称です。
「ラシャ」は西洋の布地を指す言葉で、洋装をした女性が遊女や妾のように見られていたんですね。
たとえ正当な仕事でも、外国人の家で働く若い日本人女性は、周囲から色眼鏡で見られました。
正当な仕事なのに、です。
理不尽ですよね。
でも、これが明治の現実だったんです。
明治時代の「ラシャメン差別」とは
なぜ外国人と関わる女性は蔑まれたのか
明治初期の日本には、外国人への複雑な感情が渦巻いていました。
幕末の「攘夷思想」の影響で、西洋人は「夷狄(いてき)」——つまり野蛮人として見られていたんです。
開国を余儀なくされた悔しさが、まだ社会に残っていました。
こうした風潮の中、外国人と関係を持つ女性は社会的に許容されない異質な存在とされたわけです。
ひどい場合、人間扱いされないこともあったそうです。
歴史を教えていて、この部分はいつも胸が痛みました。
ラシャメン差別が生まれた三つの背景
元教師として、当時の社会背景を整理してみましょう。
背景その1:外国人への嫌悪感
開国直後の日本では、西洋文化を異質なものとして拒絶する傾向が強かったんです。
背景その2:性的関係への偏見
外国人居留地で働く日本人女性の多くが遊女とみなされていました。
背景その3:身分制度の名残
士族出身の女性が「下層の仕事」に就くことへの抵抗感があったんです。
まるで三重の壁に囲まれているようですね。
トキが悩んだのも、無理はありません。
士族の娘が女中になる意味

明治維新で転落した士族の苦境
トキは元々、上級武士の家に生まれました。
ところが、明治維新で松野家は没落。
養女に出された先でも、身分から生活まで一変してしまったんです。
それでも、士族としてのプライドは残っています。
女中という仕事は、当時の感覚では**「身分的転落」**を意味しました。
現代の私たちには理解しづらいかもしれません。
でも当時、それは家族全体の恥とされたんです。
社会的リスクと結婚の可能性
もしトキが女中になれば、どうなるか。
周囲からは「ラシャメンになった」と陰口を叩かれます。
松野家の名誉も傷つく。
何より、結婚の可能性が絶たれる恐れがありました。
当時の女性にとって、評判は生命線です。
一度失った名誉は、二度と取り戻せなかったんです。
教師時代、歴史を教えながらいつも思いました。
「時代が違えば、常識も違う」——まさにそれを体現した時代でした。
史実の小泉セツとドラマのトキ
小泉セツが体験した差別
ドラマのトキには、モデルとなった実在の女性がいます。
小泉セツ——ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の妻です。
セツは1891年(明治24年)2月、ハーンの住み込み使用人として働き始めました。
当時セツは23歳。
若い女性が単身で外国人男性の家に住み込むことは、極めて異例でした。
セツの父は松江藩士で、家禄300石の名家出身。
でも1875年の家禄奉還で困窮し、セツは生きるために働かざるを得なかったんです。
「ラシャメンと呼ばれるのが一番辛かった」
晩年、セツはこう語っています。
「ラシャメンと呼ばれるのが、一番辛かった」
何十年も経った後でも、心の傷は癒えなかったんですね。
ハーンとの結婚後も、周囲の目は冷たかった。
セツの苦しみは、まさにトキが恐れた未来そのものだったわけです。
でも、セツは耐え抜きました。
そして、ハーンの文学活動を支え、「怪談」などの名作を世に送り出す原動力となったんです。
ドラマと史実の共通点
「ばけばけ」は、この史実を丁寧に描いています。
没落士族の娘という立場、外国人との出会い、社会的偏見との闘い——。
トキの物語は、セツの実体験を反映しているんですね。
だからこそ、ドラマを見る私たちは歴史の重みを感じるのでしょう。
単なるフィクションではなく、誰かが実際に生きた人生なんです。
よくある質問
Q1:なぜ女中の給料が高かったのですか?
外国人の家で働くことへの社会的リスク料が含まれていたためです。普通の女中の20倍以上もの報酬は、それだけ「引き受けたくない仕事」だったことを示しています。現代の感覚でいえば、危険手当のようなものですね。
Q2:明治時代の女性は職業選択の自由がなかったのですか?
制度上は職業の自由がありましたが、「家」制度により女性の地位は男性より極めて低く、実質的な選択肢は限られていました。結婚、女中、教師、産婆などが主な道でした。特に士族の娘は、身分に見合った職業しか選べなかったんです。
Q3:トキは最終的にヘブンの女中になるのですか?
史実の小泉セツは最終的にハーンの使用人となり、後に結婚しました。ドラマでもこの流れを踏襲する可能性が高いですが、トキがどう決断するかは今後の展開次第です。明日からの放送が楽しみですね。
まとめ:時代を超えて響くトキの葛藤
今回の「ばけばけ」第28話前後のエピソードは、明治時代の女性が直面した厳しい現実を浮き彫りにしました。
トキが女中を断った理由を整理すると、こうなります。
経済的必要性と社会的名誉の板挟み、「ラシャメン」という蔑称への恐怖、士族の娘としてのプライドと現実の貧困、家族への影響と将来への不安——。
借金に苦しむ家族を救いたい。
でも、自分の人生と名誉も守りたい。
このジレンマは、時代を超えて共感できる葛藤ですよね。
史実の小泉セツは、偏見と闘いながらもハーンと結婚し、彼の文学活動を支えました。
セツがいなければ、「怪談」などの名作は生まれなかったかもしれません。
トキもまた、この困難を乗り越えて新しい道を切り開くのでしょうか。
明日からの展開が、本当に楽しみです。
ドラマを見ながら、**「もし自分がトキの立場だったら」**と考えてみるのも面白いかもしれませんね。
歴史を知ることは、今を生きる私たちの選択を考えるヒントにもなります。
それでは、また「ばけばけ」でお会いしましょう!

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