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ばけばけ6話に学ぶ明治の牛乳文化|元社会科教師が語る文明開化の歴史背景

こんにちは、なおじです。

今朝「ばけばけ」第6話を見ていたら、牛乳売りが「これが西洋の力だ!」と叫ぶシーンでコーヒーカップを置く手が止まってしまいました。

妻が「あら、なおじさん、コーヒーが冷めてますよ」。

ドラマの牛乳文化に夢中で、自分の朝食を忘れていました。

40年間社会科を教えてきた身として、あのワンシーンに明治という時代の息吹が凝縮されていたからです。

今回は、第6週「白いしずく」で描かれた牛乳文化を軸に、文明開化と士族授産の歴史を紐解いていきます。

このブログでわかること

  • 明治時代の牛乳がどう普及したか
  • 天皇の牛乳飲用報道が生んだブーム
  • 刀を置いた武士が牛乳店を始めた理由
  • 「八雲立つ」和歌と小泉八雲の関係
  • タエとフミの複雑な人間模様
連続テレビ小説 ばけばけ Part1 (1)
目次

第6話で描かれた牛乳売りの歴史的背景

ドラマに登場した牛乳配達の意味

第6話で印象的だったのは、ブリキ缶を持った牛乳売りが松野家を訪れる場面でした。

あの光景は、1877年(明治10年)から始まった「1合(約180ml)のブリキ缶を使った牛乳配達」を忠実に再現しています。

それ以前の1871年頃は、牛乳はブリキ缶で運ばれ、「ひしゃく」を使って5勺(90ml)ずつ量り売りされていたそうです。

ドラマで牛乳売りが「これが西洋の力だ!」と語った言葉――これは単なる商売文句ではなく、当時の人々が牛乳に抱いた「文明開化の象徴」としての期待を表していました。

【表1:明治時代の牛乳普及タイムライン】

年代出来事歴史的意義
1871年(明治4年)天皇が毎日2回牛乳を飲むと報道庶民への牛乳飲用ブームのきっかけ
1873年(明治6年)東京府知事「牛乳搾乳ニ就テノ心得」発表衛生管理の推奨開始
1877年(明治10年)1合ブリキ缶による牛乳配達開始都市部での流通本格化
1878年(明治11年)警視庁「牛乳搾取人取扱規則」制定衛生基準の整備・加水禁止

天皇の牛乳飲用が生んだブーム

なぜ明治初期に牛乳がこれほど注目されたのでしょうか。

その答えは、1871年(明治4年)に新聞・雑誌に掲載された「天皇が毎日2回ずつ牛乳を飲む」という記事にあります。

この報道をきっかけに、国民の間に牛乳飲用が一気に広まりました。

今でいう「インフルエンサー効果」ですね――天皇陛下が飲まれると報じられれば、庶民もこぞって真似をする。

授業で生徒たちにこの話をすると、「昔も今も同じなんだ!」と驚いていたものです。

➡️ 関連記事:田尻祐一郎江戸の思想史|【書評中編】荻生徂徠・本居宣長

刀を置いた侍が牛乳瓶を持つまで

士族授産政策と牛乳店の誕生

ドラマで描かれた牛乳売り――実は彼らの多くが、元武士だったという事実をご存じでしょうか。

明治政府は殖産興業と士族授産政策の一環として、牛乳店の経営を奨励していました。

廃藩置県で禄を失った武士たちにとって、牛乳店は新たな生業となったのです。

武家屋敷跡に牧場を作り、自ら牛を飼育し搾乳し、牛乳を販売する――これが文明開化のサクセスストーリーでした。

刀を置いた侍が牛乳瓶を持つ――この劇的な転身こそ、明治という激動の時代を象徴する光景だったわけです。

【表2:士族と牛乳店の関係】

項目内容背景
政府の政策殖産興業・士族授産政策武士の生活保障と産業育成
元武士の選択牛乳店経営への転身禄を失い新たな生業を求めた
経営形態牧場経営・搾乳・販売武家屋敷跡を活用
社会的意義文明開化の象徴西洋文化の受容と普及

衛生管理と流通システムの確立

1873年(明治6年)には東京府知事が「牛乳搾乳ニ就テノ心得」を発表し、搾乳は清潔な環境で行うことを推奨しました。

さらに1878年(明治11年)には警視庁が「牛乳搾取人取扱規則」を制定し、搾乳器具の管理や加水の禁止など衛生基準を整備しています。

この時代、警察が衛生管理を担っていたというのも興味深いポイントです。

1877年のブリキ缶配達の開始により、都市部での牛乳流通が本格化し、庶民の食卓に牛乳が並ぶようになりました。

牛乳(ぎゅうにゅう)で急に憂鬱(ゆううつ)な士族も元気になる――そんな時代の空気が伝わってきますね。

オープニング主題歌に込められた思い

ハンバート ハンバートの夫婦デュオ

気になっていたオープニング曲「笑ったり転んだり」について調べてみました。

歌うのは、佐野遊穂さんと佐藤良成さんの夫婦デュオ・ハンバート ハンバートです。

作詞・作曲・編曲は全て佐藤良成さんの手によるもので、制作統括の橋爪國臣さんが「トキとヘブンの二人のありのままの空気感を飾らずに歌にしてくれる方に」と依頼したそうです。

夫婦だからこそ表現できる「重なるようで重ならない」関係性が、まさにトキとヘブンそのものですね。

実はなおじ、レフカダ・ヘブン役のトミー・バストウさんが歌っているのかと思っていました。

なんとなく、外国人ぽい歌い方に聞こえるんで…。

文明開化を歌う歌詞の世界

「白い朝 文化の音が 瓶を打つ」――牛乳配達の時代を思い起こさせる、このドラマの世界観です。

歌詞は「毎日難儀なことばかり 泣き疲れ眠るだけ」で始まりながら、「君とふたり歩くだけ」で着地します。

明治という激動の時代を生きる夫婦の支え合いを、これほど的確に表現した歌はありません。

佐藤さんは小泉セツさんの「思い出の記」を繰り返し読み、「自分がセツになったつもりで一気に作った」と語っています。

主題歌「笑ったり転んだり」
ハンバート入門

➡️ 関連記事:トキの蚊帳がヘブンの心を動かした理由|ばけばけ38話

北川景子さんと池脇千鶴さんの緊張感

家格の違いが生む微妙な空気

今回、タエとフミの間に漂うピリピリした空気がありました。

その背景には、家格の違いという明治特有の身分意識があったでしょうね。

雨清水家は松江藩に名を馳せる上級武士で、松野家よりもだいぶ格が上という設定です。

北川景子さんが演じるタエが、堤真一さん演じる傳に対して尊大な態度を取るのも、実は夫より妻の方が家格が上だからなんです。

妻が夫を見下す――現代では考えにくい構図ですが、明治の士族社会では珍しくありませんでした。

【表3:タエとフミの関係性】

項目雨清水タエ(北川景子)松野フミ(池脇千鶴)
家格松江藩上級武士雨清水家より下
態度夫・傳にも尊大タエに気を使う
婿探し「私が探します」と先手「先に言ってほしかった」と不満
関係性家格の優位性を保つ微妙な力関係を感じる

ちなみに、なおじ家は妻が上…。

「バチバチ」の関係性の今後

第6話で印象的だったのは、「それなら存じておりましたよ」「すでに、私の方でよきお相手を探し始めております」というタエの発言に対し、フミが「そうだと先にお伝えいただきたかった」と返す場面です。

おや、バチバチの関係?

家の格式は圧倒的に違うけど、そこには微妙な力関係が透けて見えますね。

この二人、今後何かありそうです。

授業で使った「八雲立つ」和歌の真実

日本最古の和歌が持つ意味

小日向文世さん演じる勘右衛門おじいさんが和歌を詠んだ場面――あれ覚えています。

八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣つくる その八重垣を

この歌は、『古事記』に収められた日本最古の和歌です。

素戔嗚命(すさのおのみこと)が、八岐大蛇を退治した後、妻となる櫛名田比売のために宮殿を建てる際に詠んだとされます。

「八重垣」は幾重にも重ねた垣根のこと――妻を守りたいという、真っ直ぐな思いが込められている歌なんです。

教育現場で伝えた「八雲」の由来

この和歌をトキの婿探しの場面に挟んでくるとは――脚本家のセンスに思わず膝を打ちました。

良き夫とは「八重垣」を作れる男性のこと――妻を守る覚悟がある人なんだと、静かに語りかけてきます。

実は勘右衛門のモデル・稲垣万右衛門こそ、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の日本名「八雲」を命名した張本人です。

この和歌から「八雲」の二文字を選んだわけです。

授業の合間にこの歌をネタとして「日本最古の和歌だよ」と紹介すると、決まって「ラブソングじゃん!」と言われました。

今だったら、「そう『ばけばけ』のオープニング曲ハンバートハンバートが歌う『笑ったり転んだり』の元歌は、この和歌なのかもね」と鼻の穴を膨らませて語ったと思います。

神話の時代から、日本人は愛する人を守りたいという思いを歌に託してきた――そんな和歌をこのドラマでこんな形で活かしてきました。

脚本家の教養と遊び心――いや、これぞ「うがち」というものでしょう。

古の言葉に新しい命を吹き込む――まさに朝ドラの醍醐味です。

なおじの中で、6話の評価が高いのはこういう理由なんです。

➡️ 関連記事:トキのスキップが可愛い!ばけばけ37話ビールこぼしてクビ危機

雨清水三之丞の登場と今後の展開

板垣李光人 20th Anniversary Photobook Interlude

今回初登場した板垣李光人さん演じる雨清水三之丞。

雨清水家の三男でトキの2歳下――家督を継ぐ兄がいるため特に役目がなく、家に居場所を見出せず、松野家の仕事場に入り浸っています。

実在のモデルは小泉セツさんの弟・小泉藤三郎さんで、鳥を飼うことが好きだったが、働いて家計を支える気はなかったという人物です。

「当たるから怖くてできなくて。いっつも人のを見てドキドキしているだけ」と占いについて語る三之丞の台詞に、せんちゃんたちが「えー乙女!」と笑う場面は微笑ましかったですね。

三男坊の切なさと、どこか浮世離れした雰囲気――板垣さんの繊細な演技が光ります。

三之丞がこれからの物語にどう絡んでいくのか――トキとの関係も含めて、目が離せません。

小泉セツ 八雲と「怪談」を作り上げたばけばけの物語

まとめ:明治の牛乳文化から見えるもの

Q&A形式で振り返り

Q1. なぜ明治時代に牛乳が普及したのですか?

A. 1871年に天皇が毎日牛乳を飲むと報道され、「インフルエンサー効果」で庶民に広まりました。1877年にブリキ缶配達が始まり、流通が本格化しました。

Q2. なぜ武士が牛乳店を経営したのですか?

A. 明治政府が殖産興業と士族授産政策で牛乳店を奨励したからです。廃藩置県で禄を失った武士たちにとって、牛乳店は新たな生業となりました。

Q3. 「八雲立つ」和歌と小泉八雲の関係は?

A. この和歌は日本最古の和歌で、小泉八雲の日本名「八雲」の由来です。稲垣万右衛門がこの和歌から「八雲」の二文字を選びました。

Q4. タエとフミの関係はなぜ緊張していますか?

A. 雨清水家と松野家の家格の違いが原因です。明治の士族社会では、家格が上の者が下の者に対して尊大な態度を取ることがありました。

次回への期待

トキの婿探しが本格化し、三之丞も物語に絡んでくる中で、雨清水家と松野家の関係はさらに複雑さを増しそうです。

特にタエの「私の方でよきお相手を探し始めております」という発言が、今後どう展開するのか気になるところですね。

第6話は、明治の牛乳文化という「文明開化の生きた教材」と、日本最古の和歌という「古の叡智」を見事に融合させた回でした。

40年間教壇に立ち、社会科を教えてきた身として、歴史の奥行きを感じさせるドラマ作りに感動しました。

妻からは「ドラマばかり見て」と呆れられていますが、これも「研究」なのだと言い訳しながら、次回の放送を心待ちにしています。

みなさんは第6話をどう見ましたか?

コメント欄でご意見をお聞かせください。

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