こんにちは、なおじです。
昔の教員時代、遠足前の日は、教室ぜんぶが炊飯器みたいにフツフツ沸いていました。
人間、楽しみな予定がある日は、黒板を見ていても心だけバスの座席なんですよね。
今朝の『ばけばけ63話』のおトキも、まさに「遠足前の六年生」みたいな顔でした。
清光院に月照寺、銀次郎との思い出巡りは、アルバムを片手に歩くような時間。
ところが最後に待っていたのは、ヘブン・イライザ・錦織との五人鉢合わせ。
この展開、「高座のオチまで一気に持っていく噺家」のような緊張感でした。

この記事でわかること
- 銀次郎とおトキの「清光院ランデブー」が、過去の夫婦関係をどう映し出しているか
- 松風の井戸と突風の演出が、「別れの予感」とどうリンクしているか
- 月照寺の大亀伝説が、五人の関係の不気味さをどう増幅させているか
- ヘブン・イライザ・錦織、それぞれの「立ち位置」が63話でどう整理されてきたか
- 次回以降、「松江を去る/残る」の選択が、誰にとって一番重いテーマになるのかを考えるヒント
ばけばけ63話あらすじ|おトキと銀次郎の思い出巡り
おトキの「血を吸った女」メイク
おトキは、いつもより少し気合いの入った装いでしたね。
気合が入りすぎ、唇の赤が濃くて「血を吸った女」みたい。
恋の遠足に向かう途中で、ついアイラインを引きすぎた高校生のようです。
松野家のみんなは、銀次郎の真意をおトキに伝えていません。
びっくり箱を最後まで開けないでおきたい、そんな大人たちのいたずら心。
銀次郎が訪ねてくると、最敬礼のおじぎと、初々しいおトキの視線が交差しました。
ここ、見ていて胸がざわざわしませんでしたか。
おトキの表情には、「うれしさ」と「こわさ」が同居していましたよね。
まるで合格発表の掲示板を、目を細めて見る受験生のよう。
👉関連記事:銀次郎の復縁提案に衝撃|ばけばけ62話
縁側トークと勘右衛門じじ様の暴走
縁側に並んで座る二人ですが、会話はなかなか続きません。
この沈黙、職員室で校長と二人きりになった新任教員の空気に近いです。
そこへ司之介と勘右衛門じじ様が、見事なタイミングで乱入。
「この場所はまずいでしょう」とテレビの前でツッコんだ方、多かったのではないでしょうか。
フミ母さんは、さりげなく二人を外へ送り出します。
この「背中の押し方」、保護者会帰りの廊下で、生徒をそっと送り出す担任の技に似ています。
そこにおタツさん登場。
勘右衛門おじじ様、うれしさのあまり、おタツさんにまで銀次郎を紹介してしまいます。
爆弾をプレゼント包装して渡すような真似です。
これは後々、確実に響きそうです。
清光院と松風の井戸|「夫婦だった頃」を歩き直す
清光院でよみがえる記憶
おトキと銀次郎は、怪談の名所めぐりに出かけます。
まずは、例の清光院。
長い石段は、過去へ続くタイムトンネルのように見えましたよね。
「おトキちゃんも変わらん」と、銀次郎。
この時の銀次郎、ポケットに両手を入れて威厳を出したいんでしょう。
ちょっと、例の中国人みたいな立ち方。
清光院は、遊女松風の伝説で知られる寺です。
遊女を追い詰めた男の狂気と、逃げ場のない女性の悲劇が刻まれた場所。
松風は人気の遊女でしたが、一方的な恋心を向けられた侍に追われ、長い石段を駆け上がって逃げました。
しかし井戸の近くで追いつかれ、斬り殺されてしまったと伝わります。
階段に残った血は、洗ってもなかなか落ちなかったそう。
トキちゃんの唇の赤、すぐ落ちてよかった。
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松風の突風と二人の距離
階段を登る途中、銀次郎は手を差し出しました。
おトキは、その手をそっと握ります。
ここは、二人にとって「夫婦だった頃」を手触りで思い出す瞬間でしたね。
井戸の前に立ったとき、風が突然吹き抜けます。
まるで松風が、二人の再会の結末を示すような一陣の風。
「松風かな?」と銀次郎。
「多分」とおトキは笑います。
怪談の舞台に、不穏な空気が…。
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旅館のヘブン・イライザ・錦織|言葉がズレる三角形
ヘブンとイライザの「同僚」問題
一方、旅館ではヘブン先生とイライザさんが英語で会話中。
ここだけ急に、職員室が国際学会になったような雰囲気。
ヘブンは、イライザを「同僚」と紹介してしまいます。
これは、ラブレターを「連絡帳」と呼ぶようなもの。
女心を、なおじ以上にわかっていませんね。
そこへ錦織さんがやって来ます。
「ヘブン先生の大切な人だと聞いている」と、イライザに向けてひと言。
この一球、ど真ん中ストライクです。
逆にイライザから、ヘブンが自分の手紙に、錦織のことを書いていたと明かされる。
これには、錦織さんもまんざらではない表情。
ここ、見ていてちょっとニヤッとしませんでしたか。
旅館の喫茶室で、イライザは日本滞在記を書き終えたらヘブンは日本を去ると告げました。
この静かな宣言、まるで卒業式前の教室で聞く転校の知らせのようでした。
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月照寺の大亀と五人鉢合わせ|怪談と恋の交差点
月照寺に向かう二人の背中
おトキたちが次に向かったのは、松江藩主の菩提寺・月照寺です。
おトキは「ご一緒できてよかったです」と銀次郎に伝えます。
遠足の帰り道、「今日一日、楽しかったね」と小声で言う生徒のような一言。
月照寺の境内には、大きな石の亀の上に碑が立つ、あの有名な大亀があります。
夜になると動き出し、城下に出て人を襲うという伝説付き。
恋愛も怪談も、「知らないうちに飲み込まれている」という点では似ています。
月照寺は、松江藩主松平家の菩提寺として知られる古刹。
初代藩主・松平直政から九代までの墓所が現存しています。
寛文4年(1664年)に再興され、直政の生母・月照院の位牌安置所となったことから月照寺という名になりました。
【表:月照寺での五人の立ち位置】
【表:月照寺・大亀前での五人の関係整理】
| 人物 | 表情の第一印象 | 心の中のテーマ | ばけばけ63話での立ち位置 |
|---|---|---|---|
| おトキ | 驚きと戸惑い | 過去の夫婦と今の自分 | 銀次郎との記憶を抱えた元妻 |
| 銀次郎 | きまり悪さと覚悟 | 復縁への一歩 | 思い出巡りに賭ける元夫 |
| ヘブン | 事情が飲み込めない顔 | 帰国と日本の狭間 | 松江を去るか残るかの岐路 |
| イライザ | 納得と不安 | ヘブンへの想い | 「大切な人」と呼ばれた当人 |
| 錦織 | おだやかな笑み | 二人への気遣い | 緩衝材であり、観察者でもある |
大亀の前で「オチまで一気」
大亀の前に着いたとき、そこにはすでにヘブン・イライザ・錦織の三人がいました。
ここでまさかの五人鉢合わせ。
学級会なら、「この席順のまま話し合いましょうか」と言いたくなる配置です。
月照寺の大亀は、夜な夜な動き出し、城下に繰り出して人を襲うと言われてきました。
小泉八雲の『知られざる日本の面影』でも紹介されている有名な怪談です。
別の話では、池の亀が妖力を身につけ、町を徘徊して人を襲うため、住職が大きな石像を造って墓所に安置したところ、亀は悪さをやめたとも伝わります。
63話のラストは、その大亀の前で五人の関係が一気に動き出す「予告編」のようでした。
今日はここで時間切れ。
15分が、いつもより二割増しで短く感じる回でした。
早く続きが見たい…。
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Q&Aで振り返る第63話
Q1:おトキの唇の赤は何を象徴していた?
A:少し濃すぎる赤は、「恋への覚悟」と同時に「傷つくかもしれない怖さ」の両方をにじませていたように感じられます。
Q2:清光院での突風「松風」はどんな意味があった?
A:遊女松風の怪談をなぞりつつ、二人の関係にまだ「未練と未整理の感情」が残っていることを象徴する演出だったと受け止めています。
Q3:ヘブンがイライザを「同僚」と呼んだのはなぜ?
A:自分の気持ちを直視できず、安全な言葉に逃げた結果です。結果として鈍感さが際立ち、イライザとの距離だけが浮き彫りになりました。
Q4:錦織の「大切な人」発言はどこがポイント?
A:「ヘブン先生の大切な人」と、主語をヘブン側に置いたことで、イライザを傷つけずヘブンにも責任を返す、絶妙な言葉選びでした。
Q5:月照寺の鉢合わせは今後どう響きそう?
A:五人の「去る/残る」「結ぶ/離れる」の選択が、一つの場で交錯するきっかけになりそうです。大亀の怪談が、その不穏さを後押ししています。
筆者紹介|なおじ
元社会科教師として35年間教壇に立ち、現在は7つのブログでドラマ・芸能・政治・歴史・スポーツ・旅・学びについて発信しています。
ドラマ記事では、登場人物の心の揺れと、その背後にある時代背景を、ゆっくりと言葉にしていくスタイルを大切にしています。
朝ドラ『ばけばけ』では、明治の恋愛観と怪談文化を、視聴者のみなさんと一緒に味わい直していきたいと考えています。
石段で 手を引く癖が まだ残る
松風に 夫婦の糸が ほどかれる