こんにちは、なおじです。
先日、孫に「じいじのパパはどんな人だった?」と聞かれて、うまく説明できなかったんです。
ばけばけ 59話 子捨て怪談 ヘブン 涙を見ながら、あの問いを思い出しました。
今朝の「ばけばけ」第59話で語られた「子捨ての怪談」――何べん捨てられても同じ親に生まれてくる子の話を聞いて、「無性に、亡くなった父に会いたい」と感じました。
血のつながりって、やっぱり深いんだなと、しみじみ胸に染みます。

ばけばけ59話と子捨て怪談の核心
鳥取の布団から子捨て怪談へ
おトキは、怪談に前のめりなヘブン先生に「鳥取の布団」を、もう一度話そうとしていました。
ところが、その由来が「前の夫から聞いた話」と知った瞬間、ヘブン先生は英語で「そうですか、ちょっと驚いた」とつぶやき、場の空気がふっと揺れたんです。
おトキの結婚歴に触れてしまった…。
ヘブン先生の中に「前夫の話を無理にさせていいのか」というためらいが生まれたよう。
おトキはすぐに空気を察し、「今夜は布団の話はやめて、別の怪談を話します」と提案。
気が利く子なんですよ、おトキちゃん。
この一言が、二人の関係をぎこちなさから救い出します。
そして、次の「子捨ての怪談」への橋渡しになっていくんです。
👉関連記事:布団怪談でヘブンと心通じるばけばけ第58話感想
おトキが語る「子捨ての怪談」の構造

命がろうそくより軽かった時代
夜のヘブン亭で、おトキは「人の命が、ろうそくよりたやすく消えていく時代のお話でございます」と、静かに語り始めます。
舞台は出雲の国・持田の浦。
そこに、貧しさゆえに、生まれた子どもを次々と川に捨ててきた百姓夫婦がいました。
やがて生活に少しゆとりが生まれ、夫婦は「今度の子は育てよう」と心を決めます。
父親は赤ん坊を背負い、「ねんねこした子は かわいこよ」と子守歌を歌いながら、月のきれいな夜道を歩きます。
【表:子捨ての怪談の流れと感情の揺れ】
| 段階 | 出来事の内容 | 夫婦・子どもの感情 |
|---|---|---|
| 導入 | 貧しい百姓夫婦が、生まれた子を川に捨て続ける | 貧困と罪悪感が入り混じる苦しさ |
| 転換 | 生活に余裕が出て、初めて子を育てようと決意 | 安堵とささやかな喜び |
| クライマックス | 父が子を背負い子守歌を歌う月夜 | 父の愛情と過去への無自覚な罪 |
| 真相の告白 | 赤ん坊が「最後に捨てた夜も、こんな月でしたね」と語る | 子の記憶と恨み、父の激しい後悔と恐怖 |
| 余韻 | おトキがブォッとろうそくを吹き消す | 見る側にも冷たい恐怖と余韻が残る |
父親がやさしく歌いかけるその背中から、まだしゃべるはずのない赤子の声が響きます。
「おとっつあん、おとっつあんが最後に私を捨てたときも、こげに月のきれいな晩でしたね」。
その瞬間、おトキはブォッとろうそくを吹き消し、画面は闇に。
(画面は闇になってないけど、闇なんです。)
ゾゾゾッと、背筋をなでるような恐怖。
朝の15分ドラマとは思えない、本格怪談の一撃。
ヘブン先生の涙とおトキの優しさ
ヘブンが「子ども」の側に立った瞬間
怪談を聞き終えたヘブン先生は、しばし言葉を失います。
やがて、「父、私、捨てた。母のこと、捨てた。許せない。」と、たどたどしい日本語で自分の胸の内を吐き出します。
おトキは、その表情の変化を見て、しまったというように顔色を曇らせます。
「すみません。そげなこととも知らずに」と謝ります。
しかし、ヘブンはすぐに「ノーノー。怪談、すばらしい。ありがとう」と首を振ります。
怖さの奥に、自分の人生そのものを見てしまった。
そんな複雑な涙でした。
👉関連記事:ばけばけ57話ヘブン涙した理由と演出の妙を分析
おトキが見ている「子の側」の希望

ここでおトキは、自分なりの解釈を静かに語り出します。
「何べん捨てられても、この子は同じ親の元に生まれた。この子の親を思う気持ち、強い」。
「それを知ったこの親は、この子を大切に育てると思います」と続けます。
つまり、おトキはこの怪談を「呪いの話」ではなく、「相手の気持ちを知ることで、ええことに変わるかもしれない話」として受け取っている。
「(相手の気持ちを知ることで、)ええことになったらええなあって思います」。
そう言ったあとで、「私、おなじことする、ない。私、ええこと、ええこと、します」と。
ヘブンが決意を口にする流れが、本当に見事でした。
おトキの言葉は、「親を責める」だけで終わらない。
「それでもなお、相手を思い続ける子どもの視点」に光を当てています。
そこに、亡くなった父を思い出す視聴者も少なくなかったのではないでしょうか。
(なおじのように…。)
ヘブンとおトキの関係の変化

「師匠」と呼んだ意味
怪談が終わったあと、ヘブン先生は涙をぬぐいながら、「では、もう一度」とリクエスト。
そしておトキのことを、冗談ではなく本気の敬意を込めて「師匠」と呼びました。
気づきました?
怪談を教えてもらう相手。
日本語を教えてもらう相手。
そして、「人の心の機微」を教えてもらう相手。
その全部が、おトキという一人の女性に重なった瞬間だった気がします。
👉関連記事:清光院怪談でトキを元気づけた傳ばけばけ7話ネタバレ
錦織先生・正木たちの位置づけ

一方その頃、学校側でも小さな波紋が広がっています。
授業後、錦織先生は正木と小谷にさりげなくヘブンの様子を尋ねました。
正木は「怪談を聞いて、ヘブン先生が泣いていた」と伝えますが、理由まではつかめていません。
ここに、「怪談に心を揺さぶられる外国人教師」と、「その深層までは読み取れない日本人の若者たち」という対比が浮かび上がります。
【表:ヘブンと周囲の反応まとめ】
| 人物 | 怪談への立場 | 表情・行動 | 関係性の変化 |
|---|---|---|---|
| ヘブン | 子どもの側として深く共鳴する | 涙を流し、「ええことする」と決意 | おトキを「師匠」と呼び敬意を示す |
| おトキ | 語り手として物語に希望を見出す | 親子への思いやりをにじませる | ヘブンの心の奥にそっと寄り添う |
| 錦織先生 | 外から様子をうかがう観察者 | 能面のような表情で距離をとる | ヘブンへの関心を深めていく |
| 正木 | 面白がりつつも表層だけを受け止める | 泣いていた事実だけを報告する | ヘブンの本心はまだ理解していない |
松野家の「おそいのう」とラストの振り向き
「おそいのう」ににじむ家族の愛
一方、松野家では「おそいのう、おそいのう」と、家族のトキの帰りを待つ声が重なります。
ただ待つだけのシーンなのに、空気から、家族の愛情がじんわり伝わってくるようでした。
おトキが夜にヘブン亭へ出向けるのも、こうした家族の受け皿があってこそ。
その土台があるから、怪談が「救い」にもなりうるのだと感じさせる対比。
👉関連記事:トキ銀二郎怪談で結ばれるばけばけ10話ネタバレ
ヘブンが振り向いたのは誰?
第59話のラスト、ヘブン先生がふいに後ろを振り向くショットで終わります。
何これ?
後ろに誰がいるの?
母親の幽霊。
どこかの武士の霊。
それとも、おリヨ様やトキの気配なのか。
正体は明かされません。
「子どもの側の視線」を得たヘブンの背後に、彼の過去やトラウマがそっと立っているようにも見えました。
明日、第60話でこの振り向きがどう回収されるのか。
怪談が「ラストピース」になるというサブタイトル通りの展開に期待が高まりますね。
Q&Aで振り返る第59話
Q1:今回の「子捨ての怪談」は元ネタがありますか?
A1:小泉八雲の怪談や夏目漱石「夢十夜」第三夜に類似したモチーフがあり、そこから着想を得たドラマオリジナルの形とみられます。
Q2:ヘブン先生が一番心を動かされたポイントはどこですか?
A2:何度捨てられても同じ親に生まれてくる子の執着と、「それでも親を思っている」というおトキの解釈に、自分の親への思いが重なった点だと読み取れます。
Q3:おトキが「師匠」と呼ばれた意味は?
A3:怪談の技術だけでなく、人の心の見方や「恨みを希望に変換する視点」をヘブンに教えた存在になった、という敬意の表現と考えられます。
Q4:錦織先生の能面のような表情は、ヘブンに対する反発ですか?
A4:露骨な反発というより、「理解したいが距離も取りたい」という揺れる立ち位置を象徴しており、今後の関係性変化の伏線として機能しています。
Q5:松野家の描写は、この回全体でどんな役割を果たしましたか?
A5:命を粗末にする怪談と対照的に、「子を待ち続ける家族」の温かさを見せることで、命の重さと家族の絆をより強く浮かび上がらせています。
筆者紹介|なおじ
元社会科教師として35年間教壇に立ってきました。
現在は7つのブログで、ドラマ・芸能・政治・歴史・スポーツ・旅・学びについて日々つづっています。
ドラマ記事では、作品の時代背景や登場人物の「心の揺れ」をゆっくりと言葉にしていくスタイルを大事にしています。
「ばけばけ」を通して、一緒に明治という時代と、人の心の奥行きを味わっていけたらうれしいです。