三之丞のウソを真に受けたタエさん|武家のプライドの哀れさ

「三之丞が社長になった」という言葉
今回、もう一つ気になったことがあります。
タエさんは三之丞について「いろいろありましたが、今ではあの子も社長になって、ひとまずここを借りて暮らしているというわけです」と説明したんです。
タエさんは三之丞が「社長になった」というウソを信じ切っているよう。
これ、ちょっとショック。
武家のプライドが滑稽で哀れ
もし、本当にタエさんが三之丞のウソを真に受けていたとしたら、武家の誇りが滑稽すぎて哀れ。
元社会科教師として、武家のプライドを捨てられずに多くの士族が没落したことは、教材研究で何度も調べてきました。
でも、ばけばけのこの場面が史実として正しいのなら、本当に悲しいプライドだと思うんです。
明治維新後の士族の現実
明治維新後、武士階級は職を失い、多くの家族が困窮しました。
武家のプライドを捨てられなかった士族たち
商売をすることを「恥」と考え、貧困に陥っていった士族たち。
タエさんも、その一人だった…。
三之丞の「社長になった」というウソを真に受けたタエさん。
武家の誇りにしがみついて、現実が見えなくなっている…。
これって、元教師として見ていて、本当に切ないシーンでした。
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元教師が見た第39話|明治女性の自立と哀れさ
タエさんが物乞いから脱却できた理由
なぜタエさんは物乞いから脱却できたのか?
トキちゃんが三之丞にお金を渡すようになったことで、タエさんは物乞いから脱却し、長屋で暮らせるようになったわけ…。
トキちゃんの給金で生活はできているんですが、タエさんは三之丞が「社長になった」というウソを信じ切っていました。
トキちゃんが陰で支援していたことに、タエさんは気づいていないんですね。
綺麗な身なりの意味
綺麗な身なりになったタエさん
これは単なる外見の変化じゃない。
明治時代、身なりは社会的地位を示すものでした。
タエさんが綺麗な服を着ているということは、生活が安定した証拠なんですね。
視聴者が「安心した」って声を上げたのは、タエさんの人間としての尊厳が取り戻されたからだと思うんです。
母娘の関係性の変化
トキちゃんがタエさんを訪ねるシーン。
タエさんのプライドを傷つけずに、どうすれば助けられるかと困惑していたトキちゃん。
『自分に見られたら、実母(タエ)は傷つく』と考え、尋ねられずにいたトキちゃん…。
でも今回は、自分から訪ねたんですよね。
今後も定期的にタエさんを支援するための手段として、「生け花とお茶の稽古」という名目をタエに伝えるために…。
トキちゃんの優しさが、じんわり伝わってきました。
母親を支える娘
トキちゃんがタエさん(「実母」)を支えるための、やさしい嘘。
なおじの感想|トキちゃんの優しさと武家の哀れさ

トキちゃんの心遣いに感動
トキちゃんが「生け花とお茶の稽古」という名目で、タエさんに定期的にお金を届けようとする心遣い。
自分がお金を出したことをタエさんに気づかれないようにする配慮。
長い間、生徒たちと向き合ってきた経験から言わせてもらうと、本当の優しさって目に見えないところに隠れているもの…。
三之丞のウソを真に受けたタエさん
一方で、三之丞の「社長になった」というウソを真に受けたタエさん。
これは、ちょっとショックでした。
いまだに武家のプライドにしがみついて、現実が見えなくなっている。
元社会科教師として、武家のプライドを捨てられずに没落した士族たちの話は、何度も教材研究してきました。
でも、タエが本当に「三之丞が社長になった」と信じているとしたら、本当に悲しい…。
明治維新後の士族の現実
明治維新後、多くの士族が困窮しました。
武家のプライドを捨てられなかった士族たち
商売をすることを「恥」と考え、貧困に陥っていった士族たち。
タエさんも、その一人だったんですね。
でも、トキちゃんの優しさで、タエさんは救われる。
トキの優しい嘘が、厳しい時代を生き抜く力になるんだと思います。
北川景子さんの演技
北川景子さんの演技、素晴らしかったですね。
物乞いから脱却した安堵感、初めてのパイナップルへの驚き、娘を迎える嬉しさ。
すべてが表情に出ていました。
「んん~!」って声、自然で可愛らしかったです。
笑顔になれるシーンでした。
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キャスト情報
主要キャスト
- 松野トキ(ヒロイン):髙石あかり
- 雨清水タエ(トキの生母):北川景子
- 三之丞(雨清水家の三男):板垣李光人
- レフカダ・ヘブン(トキの雇い主):トミー・バストウ
- 錦織友一(ヘブンの友人):吉沢亮
- 松野司之介(トキの父):岡部たかし
- 松野フミ(トキの母):池脇千鶴
- 松野勘右衛門(トキの祖父・おじじ様):小日向文世
Q&A|視聴者の疑問に元教師が回答
Q1:トキちゃんが本当にタエさんを訪ねた理由は?
表向きは「生け花とお茶の稽古を再開したい」というものでしたが、本当の理由は今後もタエさんに定期的にお金を届けるための口実だったと思います。
自分がお金を出したことをタエさんに気づかれないようにする心遣い。これがトキちゃんの優しさなんですね。
ただし、これは私の推察ですけどね。
Q2:タエさんはなぜ三之丞のウソを真に受けたの?
武家のプライドにしがみついて、現実が見えなくなっていたのかもしれません。
明治維新後、多くの士族が武家のプライドを捨てられずに没落しました。タエさんも、その一人だったのかもしれないですね。
Q3:タエさんはどうやって物乞いから脱却したの?
トキちゃんが三之丞にお金を渡すようになったことで、タエさんは物乞いから脱却し、長屋で暮らせるようになったんです。
トキちゃんの給金で生活はできているんですね。
Q4:パイナップルのシーンはなぜ印象的だったの?
タエさんが「んん~!」って笑顔を見せたシーンは、人生に余裕が生まれた証拠。
物乞いをしていた頃は、食べるだけで精一杯だった。でも今は、娘とともに珍しいフルーツを味わう余裕がある。笑顔を見せるタエさんに、視聴者も心から安心したんですね。
Q5:「三枚おろし」って何?
タエさんがパイナップルを切る方法として「三枚おろしは?」って言ったんです。
三枚おろしは魚をさばく方法なんですが、タエさんはお姫様育ちで家事が一切できなかったから、料理の知識もなかった。そのタエ様が、三枚おろしという言葉を曲がりなりにもつかえるようになったんですね。
トキちゃんが優しくツッコんで、微笑ましいシーンでした。
パイナポー 三枚おろしと 母は問い (なおじ)
筆者プロフィール
なおじ
元社会科教師(教師歴約35年)、60代男性。授業の合間に生徒たちと雑学を語ることを好んでいました。ダジャレ、川柳を好みます。読書好き、ドラマ好き、旅好き、スポーツ好き。歴史に興味があり、ドラマは特に歴史関連のドラマ好き、社会背景を解説することを楽しんでいます。