
イスラエル切り捨ての舞台裏、148兆円の取引。
トランプ大統領が2期目就任後初の本格外遊として
中東3カ国(サウジアラビア、カタール、UAE)を歴訪中です。
驚くべきことに、かつての「親イスラエル」大統領は今回イスラエルを訪問先から完全に除外。
代わりに総額1兆ドル(約148兆円)を超える空前の経済取引を成立させようとしています。
「歴史的な外遊になる」と自ら語るこの訪問の裏側には、
アメリカの中東政策の大転換と「取引の達人」の新たな賭けが隠されています。
この記事のポイント:
- トランプ大統領はなぜ初の本格外遊先にイスラエルでなく中東3カ国を選んだのか
- 「1兆ドル超」と言われる経済取引の内容と米国経済への影響
- 「親イスラエル」から「実利優先」へ転換したトランプ氏の中東政策の真意
- サウジアラビアのムハンマド皇太子との「蜜月関係」の背景と今後
- ロシア・ウクライナ直接交渉への関与など「世界の調停者」を目指す動き
- エネルギー輸入大国・日本がこの中東新秩序からどう影響を受けるのか
1. 驚きの中東重視戦略
トランプ大統領の中東3カ国歴訪は米国の外交姿勢において注目すべき選択です。
通常の大統領初外遊ではカナダやメキシコが選ばれるのに、トランプ氏は違う選択をしました。
1-1. なぜ初外遊に中東か
実利こそがトランプ大統領の最優先事項であり、それが中東選択の理由です。
1期目の2017年も初外遊先はサウジアラビアでした。
当時、トランプ氏自身の発言によれば「サウジが4500億ドル相当の製品購入に同意し、
私は同国を訪問した」と述べています。
今回も同様の経済的成果を期待しているのでしょう。
先月下旬にはバチカンでローマカトリック教会の前教皇の葬儀に出席していましたが、
本格外遊は今回が初めてです。
1-2. 3カ国周遊の狙い
サウジアラビア、カタール、UAEという石油産出国のみを訪問する計画は、
明確な経済重視の狙いを示しています。
トランプ氏は「アメリカ国内で多くの雇用が創出される」と強調しており、
各国に対してアメリカへの投資拡大を促す意向です。
また、「アメリカ・ファースト」の姿勢を堅持しつつも、
ガザで戦闘や人道的危機が続いているため、
サウジアラビアとイスラエルの合意に向けた交渉を進展させる状況にない点も、
今回イスラエルを訪問先から外した背景にあるようです。
2. 1兆ドル超の経済効果
トランプ大統領の中東3カ国歴訪で最も注目すべきは、
「数兆ドル規模」と報じられている史上最大級の経済取引です。
この規模は日本のGDPの相当部分に匹敵する巨額なものです。
2-1. サウジの投資計画
サウジアラビアは今年1月、
今後4年間で6000億ドル(約88兆円)の対米投資と貿易拡大を約束しました。
しかしトランプ大統領はさらに1兆ドル(約148兆円)への上乗せを求めています。
巨額投資の実現のため、テスラCEOイーロン・マスク氏をはじめ、
ブラックロックのフィンクCEO、シティグループのフレイザーCEOなど米主要企業幹部も同行しています。
リヤドでは既に「サウジ・米国投資フォーラム」が開催されています。
2-2. UAE・カタールの計画
特にUAEは3月に今後10年間で総額1兆4,000億ドルの対米投資枠組みに合意しています。
人工知能(AI)インフラ、半導体、エネルギー、製造などの分野が対象とされています。
カタールについても相当規模の投資が期待されていますが、
具体的な金額は明らかになっていません。
2-3. 米国経済への影響
トランプ大統領は中東からの投資について
「アメリカ企業に投資することを約束してくれた」と強調しています。
大統領自身が「歴史的な外遊」と位置づけているように、
この経済取引が実現すれば次期大統領選に向けた大きな成果になるでしょう。
「取引の達人」としての手腕を国内向けにアピールする絶好の機会であり、
実績づくりの一環ともいえます。
また、中東地域では中国の存在感が増している点も背景にあります。
ハドソン研究所のジネブ・リボア氏は
「トランプ大統領が訪れることで、中東の安全保障をアメリカが重視していることを示す狙いがある」
と分析しており、経済面だけでなく地政学的意義も大きいのです。
この経済効果は日本にもエネルギー安定供給や投資環境の変化という形で影響してくる可能性があり、
私たち日本人も注視すべき展開といえるでしょう。
3. 皇太子との蜜月関係
トランプ大統領とサウジのムハンマド皇太子の個人的関係が、
今回の訪問の鍵を握っています。
両者の親密な関係が巨額取引の原動力になっているのです。
3-1. 深まる個人的絆
トランプ大統領が2期目就任直後の1月、
初の外国首脳との電話協議となる相手にムハンマド皇太子を選んだことは注目に値します。
これは両者の関係の深さを示す明確な証拠です。
第1期政権時代から築かれた信頼関係が、今回の訪問でさらに強化されるでしょう。
2017年の会談時には、両国関係の「歴史的転換点」となったとまで評されました。
3-2. 戦略的パートナー化
両者の関係は、カショジ記者殺害事件という大きな試練を乗り越えてきました。
当時、トランプ大統領はカショジ氏の死亡について皇太子に「最終的な責任」があるとしながらも、
関係維持を優先する姿勢を示しました。
トランプ氏は「人権について説教はしない」スタイルで、
実利を重視した関係構築を進めています。
特にオバマ前政権時代に「不協和音」があったサウジ・米国関係を修復し、
トランプ氏は「取引相手」としての関係を強化。
イラン問題でも両者は「脅威」認識で一致しています。
この実利重視の共通アプローチが、現在の巨額経済取引の基盤となっているのです。
この関係強化は、日本のエネルギー安全保障にも大きな影響を及ぼす可能性があり、
私たち日本人にとっても重要な変化です。
中東原油への依存度が高い日本としては、米サウジ関係の行方から目が離せません。
4. 中東政策の歴史的転換
トランプ大統領の中東政策は1期目と比べて重点の置き方が変わってきています。
親イスラエル一辺倒だった姿勢から、より経済的実利を優先するバランス外交へと舵を切っているようです。
4-1. イスラエル軽視の新方針
今回の中東訪問では、サウジアラビア、カタール、UAEという経済的利益が見込める3カ国だけを訪問先に選び、
イスラエルは外しました。
これは1期目にアブラハム合意を推進し、
UAEなどアラブ諸国とイスラエルの国交樹立を仲介した親イスラエル姿勢からの変化です。
米報道によれば、「ガザで戦闘や人道的危機が続いているため、
サウジとイスラエルの合意に向けた交渉を進展させる状況にない」ことが背景にあるようです。
4-2. イラン・ガザへの姿勢
日本国際問題研究所の戦略アウトルックによれば、
トランプ政権はイランへの「最大限の圧力」政策を復活させる方針です。
経済制裁に加え軍事的圧力も強める一方で、
ガザおよびレバノンでの停戦に向けてイスラエルに圧力をかける可能性があります。
NHKの報道では「ガザ地区では人道状況が極めて厳しくなっている」と指摘されており、
トランプ氏の訪問では議題になると見られています。
4-3. 安全保障の新枠組み
トランプ大統領は14日にリヤドでペルシャ湾岸6カ国によるGCC首脳会合に出席します。
特に注目すべきは、トルコで15日に行われる可能性のあるロシアとウクライナの直接交渉への関与です。
トランプ氏は「もし役に立つと思えば、そこに飛んでいく」と明言。
これに対しゼレンスキー大統領は「とても重要な発言だった」と評価しています。
こうした多面的な関与から、
トランプ氏は自らを「紛争解決者」として位置づけようとしている様子がうかがえます。
中東での経済的成果を基盤に、ウクライナ問題にも関与することで、
国際的な調停者としての役割を強化しようとしているのです。
こうした姿勢は、日本のような同盟国にとって、新たなアメリカの役割を示唆するものかもしれません。
5. 日本への影響と教訓
トランプ大統領の中東3カ国歴訪は、
エネルギー輸入国である日本にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
私たち日本人も無関係ではいられません。
5-1. エネルギー安全保障
日本のエネルギー自給率は約13%と極めて低く、
国内で利用するエネルギーのほとんどを輸入に依存しています。
特に石油については4割弱を中東からの輸入に頼っており、
もし中東からの石油輸入が途絶えれば、
日本のエネルギー供給の約3分の1が喪失する計算になります。
日本エネルギー経済研究所の分析によれば、
中東情勢の不安定化は日本のエネルギー安全保障に深刻な影響を与えうるとされています。
トランプ政権の中東政策は原油価格のボラティリティ(変動性)を高めるリスクがあり、
「急落と急騰を繰り返す」可能性があります。
特に中東諸国との巨額取引やイランへの制裁政策は、エネルギー市場を大きく左右するでしょう。
これは私たちの電気代やガソリン価格など、日常生活に直結する問題です。
5-2. 実利外交の教訓
トランプ大統領の「取引型外交」は物議を醸していますが、
実利を重視する姿勢から日本も学ぶべき点があります。
日本のシーレーン(海上交通路)防衛は「死活的に重要」と政府も認識しており、
エネルギー安全保障と外交戦略は密接に関連しています。
ネット上では「日本はエネルギーの輸入依存、中東依存を早急に見直すべき」という意見が広がっています。
再生可能エネルギーの推進や、調達先の多角化など、
私たちの生活基盤を守るための戦略的アプローチが求められているのです。
トランプ氏の外交スタイルへの評価は分かれますが、日本も国際情勢の変化を自分事として捉え、
エネルギー政策の見直しを急ぐ必要があります。
6. まとめ:新たな中東秩序
トランプ大統領の中東3カ国歴訪は、数兆ドル規模と見込まれる経済取引と、
中東政策の方向性転換という点で注目されています。
「アメリカ・ファースト」に基づく実利重視の姿勢は、
中東地域の力関係を変える可能性を秘めているのです。
一方で、イスラエルとサウジの国交正常化については、
検索結果によれば「今回行われないとみられている」状況です。
イスラエルのネタニヤフ首相がガザでの恒久停戦やパレスチナ国家の創設に反対しており、
サウジとの協議が進展する可能性は当面低いと見られています。
ガザ地区では深刻な人道危機が続いており、
現地住民からはトランプ氏の一方的な移住提案に対する強い反発の声が上がっています。
「誰にも私たちの居住地や未来について命令する権利はない」
という現地の声に耳を傾ける必要があるでしょう。
トランプ政権はイスラエルを訪問先から外す一方で、
かつて敵視していたイランとの協議も進めるなど、
従来の中東政策からの変化を示しています。
さらに、ロシア・ウクライナ間の直接交渉にも関与する可能性を示唆するなど、
「紛争解決者」としての役割を模索しています。
日本を含む世界各国は、この歴訪がもたらす地域秩序の変化を注視し、
エネルギー安全保障や外交戦略の見直しを検討する必要があるでしょう。
トランプ大統領の実利重視外交が、国際関係にどのような波紋を広げるのか、
今後の展開に注目です。
この記事のまとめ:
- トランプ大統領が中東3カ国を選んだ理由は純粋に経済的実利であり、サウジから6,000億ドル、UAEから1兆4,000億ドルの投資を引き出す狙い
- 巨額経済取引は米国内の雇用創出と選挙に向けた業績アピールが目的で、「取引の達人」としての自身のブランド強化にも寄与
- イスラエル除外は、ガザ情勢の悪化を背景に、サウジとイスラエルの国交正常化交渉が進展困難な状況を反映
- ムハンマド皇太子との関係は「人権より実利」という共通価値観に基づき、カショジ記者殺害事件を乗り越えて強化された戦略的パートナーシップ
- イラン・ガザ問題への関与やロシア・ウクライナ交渉への参加意欲は、トランプ氏が「紛争解決者」としての国際的地位を確立しようとする動きの一環
- 日本はエネルギー自給率13%、石油の4割を中東に依存しており、米国の中東政策転換によるエネルギー市場の変動に備えた戦略的対応が急務