今回は「海の始まり」第10話について、この物語の深いテーマを考察していきたいと思います。第10話でも、個々のキャラクターの感情や選択が描かれており、特に海ちゃんの名前にまつわる選択が印象的でした。
名前の重み
冒頭は、海ちゃんが自分の名前を水季に漢字で書いてもらう場面でした。
「名字は、家族でおそろいにできるもの」
という水季さんの言葉が強く響きます。
この会話から、名前や家族についての考察が始まります。
水季と海の南雲という名字は、単なる固有名詞や呼び名ではなく、家族のつながりを象徴していることを教えます。
さらに「海」という名前は、水季の「水」とおそろいであることに気づくシーンは、実に感慨深い場面でした。
名前にはその人自身のバックグラウンドや家族とのつながりが反映されています。このシーンが後半にシンクロしていきます。
後半、南雲から月岡に名字を変更するか、南雲のままにするかで夏くんは海に問います。
今まで通り水季と同じ南雲でもいいし、月岡でもいいよ。
海は、即答で月岡にすると答えました。
夏は
「水季と名前が一緒じゃなくて良いの?」
と尋ねます。
海は
「名前がママと一緒だから大丈夫」
と答えます。
そして海は、夏が書いた「月岡」という文字の後に「海」と書きます。
「さんずい、ママとちょっとおそろいなんだって」
と言って、水と書くのです。
「名字は、家族でおそろいができるんだから」
と続け、夏君と一緒の名前(夏君と家族)がいいと、月岡に変えるを承諾します。
このやり取りを通して、この家族が小さな幸せをかみしめる様子が描かれています。
夏君と海ちゃんは、名字を共有する家族となり、水季の意味を問いかけた海ちゃんに対し、夏は「水の季節だ」と教えます。
海ちゃんは
「夏!」
と答え、
夏君が
「俺も少しだけど、おそろい」
と言ったのでした。
このときの海ちゃんの、はじけるような笑顔は印象的です。この親子が幸せでありますようにと、日本中の視聴者が思ったことでしょう。
先輩との会話
海ちゃんとの二人暮らしを決意したものの、実現方法に悩む夏君。
先輩との飲み会のシーンでは、子育てに対する厳しい現実を語る先輩の言葉が心に響きます。
「親がストレスでボロボロになったら、子どもには二次災害だよ。」
という指摘は、子育ての難しさを示唆しています。
先輩のこの言葉は、夏君が「子どもにストレスをかけたくない」と言った後の返答でした。
理想だけでは子どもは育てられない。
あまりにも当たり前な、この現実の指摘が、視聴者に深い共感を呼び起こします。
海ちゃんの選択
物語が進む中で、海ちゃんが夏君に「転校は嫌だ」と強い意思を示す場面がありました。彼女の不安や心の葛藤が浮き彫りになります。
両親を失った海ちゃんとしては、既に多くの変化を経験しているため、さらに転校させられるのは大きなストレスです。
「ママが死んじゃって、海は色んなことが変わったのに、まだ海が変えなきゃならないの。」
と問いかけるシーンには、思わず胸が締め付けられます。
しかし、海ちゃんは、最終的に「夏君との同居」を選択します。
幼い我が子の選択に、夏君は胸を締め付けられたことでしょう。
弥生さんの決断
弥生さんが海ちゃんに、夏君と別れたことを伝えるシーンでは、今までの彼女とは違い、スッキリした雰囲気が感じられました。
「海ちゃんとお母さんにはならない。夏君とは別れる」
という言葉を、しっかりと伝えていました。
この決断は、弥生さんにとっては正しいものだったようです。
吹っ切れたような、彼女の笑顔に表れていました。
「弥生さんと夏君の別れ」の事実を聞かされた海ちゃんも、あまり驚いた様子は見られませんでした。
「いなくなっちゃうの」という気持ちは起きなかったようです。
代わりに「もう会えないの」と問う海ちゃん。
それに対し、弥生さんは「会えるよ」と答えます。
弥生さんは海ちゃんと友達という立場をとり、これからも会えると宣言しました。
「友達になる」という選択は、物語の中で興味深い展開でした。
死の床にある水季が津野君に「ミカンヨーグルト」が食べたいと言ったとき、「ミカン」と「ヨーグルト」を別々にもってきたというエピソードの伏線回収でしょうか。
この展開からすると、弥生さんと夏君の復縁は無い、というより、「無い方が良い」かもしれないです。
これで、復縁したら
だれかに、
「夏と海が困っているとき、お前家族でいなかったもんな。」
と言われてしまいそうです。
夏のお母さんの言うように、弥生さんは二人のことは他人事として、好きかってやればよいです。
(本当は、心のどこかで復縁も望んでいるのですが‥)
11話の予想
第11話では、夏君が「水季は、もういない」と海ちゃんに告げてしまう展開が予想されます。
この言葉は、海ちゃんに深い苦しみをもたらすことでしょう。「ママは、いない人なの」と掘り下げることで、海ちゃんの心の奥底にある思い出や過去との向き合い方が試されることになると思います。
夏君は前に進むことを海ちゃんに促そうとするが、海ちゃんにとってママとの思い出は無かったことにはなりません。
この思いのギャップが「海ちゃんがいなくなる」という事件を生むのかもしれません。
弥生ちゃんの
「ママのこと、忘れた方がいいなんて言ってないよね。」
という言葉や、
津野君の
「いるとか、いないっていう話をしているのは月岡さんだけです。わかんないですよ、南雲さんがいたときも、いなくなったときもお前、いなかったもんな。」
といった怒気を含んだ言葉が絡んできます。
このように、夏の優しさから出た言葉が海ちゃんの心を傷つけ、コミュニケーションの乖離が他の人物たちにも重要な選択を迫ることになると思われます。
そして、この問題を解決するのが、水季から夏に宛てられた手紙なのでは、と予想します。
まとめ
第10話では、名前を通して家族のつながりがしっかりと描かれ、登場人物たちの心の内が深く掘り下げられていました。
今後の展開では、特に夏君と海ちゃんの心のすれ違いがどのように物語に影響を及ぼすのかが気になります。
水季との思い出をどう処理するか、そして家族として新たな道を進むために彼らがどのような選択をするのか、次回を楽しみにしたいと思います。
この物語がどのように意外な展開を見せてくれるのか、今後が非常に待ち遠しいです。
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